第4話 海辺のデート(説教編)
高級店が立ち並ぶ往来で一悶着あった僕たちは、近くの公園に移動してベンチに腰掛けていた。
ただ腰掛けているのはビーチェと僕だけで、ほぼ罪人のような扱いになっているパオっちは小刻みに震えながら舗装された硬い地面の上で正座させられていた。
ビーチェはどこからか取り出したサングラスを掛け、足を組んでマフィアの女頭領のような雰囲気を醸し出していた。
「いやぁ〜実に真っ直ぐな素晴らしい女性でしたのぅ…リアナ少尉は。その素晴らしき女性にお世話になりながらもそのご厚意を無下にするどころか、涙まで流させてしまうとは…パオ・マルディーニ少将は大変罪作りな男性ですのう〜」
あらあらまぁまぁ〜
うちの奥さんとても怒っていらっしゃいますねぇ〜
これは僕は余計な口は出さないでおきましょう。
パオっち、そんな縋るような目を向けないで
僕には何もできない
「申開きは?」
ベアトリーチェ裁判長から弁明の機会を得たパオ被告人
すかさず挙手をして弁明を行う。
「き、傷つける意図はありませんでしたろん!」
「ろん?」
パオっちの語尾にベアトリーチェ裁判長が凄む。
「ありませんでした!」
即座に言い直すパオっち
「ふむ、詳細を聞こう」
「リアナは非番の日までオイラの面倒を見てくれていて、それがリアナの重荷になっていると感じていましたにー!オイラはリアナに世話をしてもらって大変助かっているけども、リアナにも好きなことをして欲しいと気遣っただけでありまする!」
ふーむ、なるほど
パオっちなりのリアナさんへの気遣いだったか
でもリアナさんにはその想いは伝わってないだろうし、何よりそんなことは望んでいないんじゃないか
「ふむ、ではリアナ少尉は好きでパオ少将の世話を焼いているとは思わないのかや?」
「四六時中さっきのような感じでオイラを叱るのさね、リアナにとっても好きでやってるのじゃなくてフラフラ中将から言われて仕方なくやってるに決まってるんね」
こ、こやつ…!
あれだけ近くにいてリアナさんの好意に気づいていない…だと…!
あまりの鈍感具合にベアトリーチェ裁判長も空を仰ぐ。
「それにリアナももう26歳だにん、そろそろ結婚話の1つや2つあってもおかしくないにー。でもオイラの補佐官をやってるとなかなかそうはいかないろんね?」
それはそうだろう。
パオっちの補佐官をしてる限り、パオっち以外の男性とリアナさんが結婚することは難しそうだ。
パオっちはパオっちなりに考えていたのだろうが、リアナさんには絶望的に伝わってない。
でもそもそもパオっちはリアナさんのことをどう思ってるのだろう。
それを聞こうとしたらビーチェに唇に指を当てられ制止された。
「シリュウよ、それは当人同士のことじゃ。妾たちで答え合わせをするわけにはいかぬ」
ぐっ…リアナさんのことを問い質したいがビーチェの言うとおり、当人同士のことにそこまで僕らが口を挟むのは野暮か。
「少なくともパオ少将よ、とりあえずはリアナ少尉の言う通り前夜祭用の礼服を買いに行かぬかや?リアナ少尉の忠言を聞く姿勢を見せればリアナ少尉の態度も軟化するじゃろうて」
「わ、わかりました!」
「妾たちも着いていってあげようではないか、パオ少将1人に任せるのは無理じゃろうからな」
まぁブティックの礼服買いなんて戦力になるのはこの3人ではビーチェだけだけども
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その後3人でブティックに入り、パオっち用の礼服を見繕った。
ブティックの店員はパオっちがあの海軍少将パオ・マルディーニだと分かると店員総出で対応していた。
しかも終始対応していたのはあの店のオーナーっぽいな。
高そうな服にいくつもの宝石がついた指輪や煌びやかな腕時計までしてびっしりと決めていたダンディだった。
そんな人でさえパオっちに平身低頭で対応していた。
ここでもパオっちの格の高さを感じるなぁ
さっきはあんなやらかしをしていたのに
パオっちは、ビーチェ監修のもと、幾多の試着を経て、礼服を何着か購入していた。
そして購入後はなぜかパオっちは女性物のドレスコーナーの方を眺めていた。
「パオっち、どうしたの?そっちはドレスしかないよ」
「ふみゅぅ…いやあの橙色のドレスが、リアナが着たら似合うと思ったぬん」
お?
これはこれは
パオっちも満更じゃないじゃないか
「リアナ少尉も前夜祭に出られるのかや?」
ビーチェがパオっちに聞く。
「オイラの補佐官として出席するはずぬん。ただあくまで補佐官として出るからいつもの軍服だろんね」
それを聞いたビーチェの目がキラーン!と光った。
「ほうほう…ちなみにこの店はリアナ少尉もご利用なされるのかや?」
「私の行きつけの店に連れていく!って言ってたからそうだと思うにー」
それを聞いたビーチェが店員に聞く。
「店員よ、リアナ・フォッサ少尉の服のサイズはわかるかや?」
「はい、フォッサ少尉は我が店をご贔屓にしてくださっておりますゆえ」
それを聞いて不敵な笑みを浮かべるビーチェ
「パオ少将…?あとは…わかるじゃろう…?」
ビーチェ「好きでもない男性の世話を10年も焼くわけなかろうて」
シリュウ「あまりにも一緒だったから感覚狂うんじゃない?」




