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第11話 皇軍からの使者


烈歴98年 5月2日 皇都セイト サザンガルド家セイト政務所


部屋の窓からは朝日が差し込む。


ここは見慣れない部屋で、見知らぬベッドの上


部屋を見渡しても、馴染みのあるものは僕の槍と刀しかない。


いやそんなことはなかった。



今も僕の隣で寝ている最愛の女性の体温が、見慣れない場所で目覚めた僕を安心させてくれる。


最愛の女性の頭を撫でると、少しではあるが、その女性の目が開いていく。


「ごめん、起こしちゃったかな」


僕はそう謝る。


「いんや、少し前から目覚めておったよ。シリュウに撫でられて起きるのは悪くないしのう」


女性ははにかみながら、そう言う。


「おはようビーチェ」


「おはようシリュウ」


今日も一番素敵な人に一番最初に会える素敵な日だ。


きっと今日は良い日になるんじゃないかな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


セイトに到着した昨晩、馬車に揺られて、サザンガルド家セイト政務所に到着した僕は、気絶するようにベッドで就寝した。


僕が就寝した時はまだ移動した時の服だったと思うが、今見ると寝間着になっている。


……いや真実は聞くまい……


体調が戻って正気になりつつある僕は、お世話され続けた2日間の羞恥心に襲われていた。



「………もうお嫁にいけない……」


「何をいっておるんじゃ。妾を嫁に取ってくれるのじゃろ?幸い、シリュウがお世話されてた場面を見てた人は妾を除いてほとんどおらぬよ。安心するが良い」


「そうなんだ……この2日間ほんとにありがとうね、ビーチェ」


「うむ。どうしたしましてじゃ旦那様」


朝からそんなやり取りとして、着替えを済まして、朝食を食べにこの屋敷の食堂へビーチェと共に向かう。



食堂にはシルベリオさんとシルビオさん、アドリアーナさんがいた。


じいちゃんはいないようだ。



「おお、シリュウ殿。体調はどうか?」


シルビオさんが声を掛けてくれる。


「シルビオさん…ご迷惑をおかけしました。また船では色々便宜を図ってくださり、ありがとうございます」


「そんな大したことではないよ。体調が戻って何よりだ」


「ありがとうございます…!」


「シリュウさん、無理しないでね?謁見まではあと8日もあるのだから、ゆっくりセイトを観光でもしてらっしゃい」


「アドリアーナさん、ありがとうございます。そうですね、せっかくセイトに来たので色々見て回りたいですね」


「シリュウ!妾も一緒かや?」


「もちろんだよ。ビーチェがいないと始まらないからね」


「ふふ~ん!そうかや、そうかや!」


ビーチェとセイト観光に胸を馳せていると、シルベリオさんが声を掛けてきた。


「シリュウ殿、観光も良いが、あまり予定は詰めすぎないようにな。コウロン殿が「シリュウ殿が皇国軍に仕官する話」を皇国軍高官にするらしい。もしかしたら皇国軍からの招待が来るやもしれん。ある程度予定に空白を生んでおくのだ」


「そうなんですね。わかりました。ありがとうございます、シルベリオさん」


「大したことではあるまい。おそらくここにシリュウ殿が滞在していることはここ数日で皇国軍に知れ渡るだろう。皇軍か陸軍か海軍か…どこが最初かわからんが、遅かれ早かれ勧誘に来るであろう」


シルベリオさんがそう言うが、全く無名の僕にそんな勧誘が来るのか?


「勧誘が来るのか不思議そうな顔をしているな」


シルベリオさんに心を読まれた。


「ええ、僕は全く無名の存在でありますし…」


「そうでもないぞ。エンペラーボアを狩った逸話の衝撃は絶大だ。それもコウロン殿の口からその逸話が出れば、シリュウ殿がただ者ではないことは伝聞だけでも理解できよう」


「う~ん、そうなんですね。でも選べるような身分でもないし、勧誘が来た軍があれば仕官しましょうかね」


「はっは。そんなことはない。少なくとも勧誘があっても謁見までは保留にしておくがいい。皇王様にも意向を聞いてもいいと思うぞ」


「ぇぇ……皇王様が僕の配属先なんて興味ありますかね…」


「シリュウ殿と言うより、「ドラゴスピアの継承者」だろうな」


「それは納得です。では勧誘が来ても返答は謁見後まで保留するのが良さそうですね」


「そうするがいい、まぁ昨晩到着したばかりだ。勧誘が来るには数日の猶予はあるだろう。その間はセイトを見て回るといい」


「わかりました。じゃあビーチェ、今日と明日はセイトを一緒に回ろうか」


「うむ!楽しみじゃ!」


皇都セイトでのある程度の行動方針が決まったので、朝食を食べながら、セイトのどこに行くか皆で話していた。


やれ皇宮は必須だとか


やれ大聖堂は見ておいた方が良いとか


シルベリオさんもシルビオさんもアドリアーナさんも次々に皇都の名所を教えてくれる。


僕とビーチェもどこに行こうか悩むくらい楽しそうな場所に溢れていた。



そんな風に観光の予定を立てて、楽しんでいると、この政務所の所長でありサザンガルド家執事のハリーさんが食堂に入ってきて、シルベリオさんに連絡事項を伝えた。



「旦那様、急でございますが、使者が来ております」



「ふむ?昨晩到着したばかりで、まだ政庁にも滞在届は出しておらぬが、どこからだ」



「皇軍大将、ルイジ・ブッフォン様の家の者だそうです」



ん?????



ん?????


皇軍? 大将?


それってすっごい軍の偉いさんじゃないの?



「ちなみに用件は何なの?」


アドリアーナさんが聞く。



まさかね?


そんなね?早くないよね?




「シリュウ殿を皇軍に勧誘したいので、ルイジ・ブッフォン様が一度お会いしたいとのことです」






おい皇国軍よ





早すぎるだろ!!!!!!




ビーチェとのキャッハウフフなセイトツアーはどうしてくれるんだ!!!!!



「……伯父様…あまりにも早すぎのではないかや…?」


ビーチェがジト目でシルベリオさんを睨みつけている。


ここ数日は大丈夫だと言った矢先に、勧誘が来たので、持ち上げて、下げられた恨みだ。


「……いや実はコウロン殿が……」


じいちゃん?


食堂にはまだ来ていないが、それと関係があるのだろうか。


「コウロン殿は、昨晩、皇都に到着して早々に、野暮用があるとのことで別行動となったのだ。そしてその日はここへは来ぬとも言っていた。おそらく皇都の旧友にでも会いに行ったのかと邪推したのだが、この様子だと皇軍大将のルイジ・ブッフォン殿の屋敷に赴いたようだな」


「ルイジ・ブッフォン…。『金剛将軍』とも言われる皇国軍の大重鎮ではありませんか…」


シルビオさんが言う。


じいちゃんは皇軍で活躍したのだから、皇軍の知り合いがたくさんいるのだろう。


「にしても、ブッフォン将軍も気が急いておるな。ハリー、使者の方をここにお通ししろ。シリュウ殿の件なら、ここにいるもの全員で聞いてもよかろう」


「僕は問題ありません」


「かしこまりました。お呼びいたします」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「急な来訪及び早朝からの訪問誠に失礼いたしました。私ブッフォン家の家令を務めております、ブルーノと申します。失礼とは思いましたが、我が主ルイジ・ブッフォンより至急の件とのことでお伺いさせていただきました」


いかにもできる執事のような人が来た。


片眼鏡モノクルを付けているのもますます執事っぽい


「よい。私はサザンガルド本家当主、シルベリオ・フォン・サザンガルドだ。こちらがシリュウ・ドラゴスピア殿だ」


「シリュウ・ドラゴスピアです。初めまして」


「ご丁寧にありがとうございます」


「本日の用向きを聞こう」


シルベリオさんがブルーノさんに問う。


「はい。我が主は、シリュウ殿を皇軍に迎え入れたいと申しております。一度皇軍とは何かのご説明を、そしてシリュウ殿にお会いして、噂の武勇を拝見したいと仰せです」


「なるほど。ではお会いする予定はいつになるだろうか」


「我が主よりはできるだけ早く…と、本日でしたら昼過ぎからであれば時間を空けると仰せでございます」


「…なんと…皇軍大将ほどのお方が、当日の時間を空けるだと…?」


シルビオさんが驚いている。


「それだけシリュウさんを皇軍に欲しいってことよね?見る目あるじゃない?その皇軍大将さん」


アドリアーナさんが若干上から目線で言う。


「シリュウ殿、如何する?」


シルベリオさんが僕に聞く。


「そうですね、せっかくそのような高貴な方が僕に会いたいと言ってくださっているので、お受けしようと思います。あとブルーノさん、そのお会いする時にこちらの僕の婚約者であるベアトリーチェも同席してよろしいですか?」


「シリュウ…!…連れてってくれるのかや?」


「向こうが了承したらね。一緒に会いに行って欲しいと思う」


「そちらが婚約者のベアトリーチェ嬢ですね。此度の婚約おめでとうございます。もちろんシリュウ殿の婚約は聞き及んでおり、シリュウ殿が望めば婚約者の方の同席も問題ない旨我が主より承っております」


婚約話まで知っているのか。


じいちゃんは結構ルイジ・ブッフォン将軍に僕のことを話しているな。


「わかりました。では僕とベアトリーチェの二人で赴きます」


「ありがとうございます。そうですね、正午になりましたら、こちらの方へ迎えの馬車を寄こしますので、そちらにお乗りいただき、ブッフォン家の屋敷へと案内します。もちろん帰りも我が家の馬車でこちらの屋敷へとお送りさせていただきます」


「わかりました。では準備しておきます」


「よろしくお願いいたします。ではこれにて失礼させていただきます」


ブルーノさんは丁寧にお辞儀をして、退室していった。


「ビーチェ、ごめんね。でも必ずセイトを回る時間は作るから、一緒に観光しようね」


「何を言う、皇軍大将からの勧誘など、普通の兵士なら一生巡り合わぬ機会じゃ。流石はシリュウじゃのう、妾はもう鼻が高いぞ」


えっへんと言い、大きな胸を張るビーチェ 


可愛い



「そうだな…シリュウ殿の武の腕は知っていたが、皇軍大将がわざわざ時間を空けて勧誘するなど、まず考えられないだろうな…」


シルビオさんがそう驚いている。


「まだ何も成してないのですけどね…くすぐったいです」


「……エンペラーボア単騎討伐をしておいて…何も成してないと……つくづく大物だな、シリュウ殿は」


シルベリオさんが呆れてように言う。


僕は照れくさくて、苦笑いするので、精いっぱいだった。










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