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【閑話】コウロン・ドラゴスピアの追想(前編)~麗しき姫と護衛兵士


儂は東方大陸に覇者として君臨していた『法漢帝国』という巨大な国の地方の山村で『ロン』と名付けられて生まれた。


『法漢帝国』は領土・人口・文明ともに東方大陸最大の国で、全盛期は国中のどこかで祭りが催されているほど裕福な国じゃった。


しかし儂が幼少の頃には、中央政権には腐敗が蔓延り、官僚は欲に塗れ、民は重税に苦しみ、国としてはほぼ形を成しておらず、地方の豪族達による実効支配が公然とまかり通っていたのじゃ。


儂はとある山村に生まれたが、両親は6つの時に流行り病であっけなく亡くなり、孤児となった儂を引き取ってくれたのが、その地方を支配する豪族『コウ一族』であった。


コウ一族の方々は国の惨状を憂い、『法漢帝国』の中枢に蔓延る悪徳官僚達を一掃すべきと立ち上がる由緒正しき名門じゃ。


儂のような孤児を引き取っては、才ある者を取り立てていたのじゃ。


儂はそんな一族の下っ端の下っ端とはいえ運良く仕えることができ、幼少の頃よりコウ一族のお役に立てるよう必死に武を磨いた。


儂は文字も読めんし、機転も効かぬ。


儂がお役に立てるのは槍働きのみだけじゃった。


コウ一族の見習い兵士として仕えるようになってからは血が滲むような鍛錬をした。


この人達に見捨てられては、儂は生きていけぬ。


この世界に居場所はないと思い込み、一心不乱に武を磨いた。


コウ一族に仕えて、4年が経ち10歳になった頃には、大人の兵士達にも負けぬほどの武を身につけていた。


そんな時に転機が訪れる。


コウ一族の六番目の御息女の護衛として、傍仕えを命じられたのだ。


なぜ儂に?と当時は疑問に思ったが、六番目の御息女であるため、護衛を付けるほど優遇されておらず、かといって護衛を付けないのは外聞が悪いため、子供でありながら大人顔負けの武を身に着けていた儂に護衛兼傍仕えをすると当主様が考えたのじゃ。


儂はコウ一族のお役に立てるのであれば、何でもよいと快諾し、その六番目の御息女が住まわれる離れへと勤務地を変えた。


そして儂は出会った。


後に伴侶となる運命の女性 シンキ様に


シンキ様は儂の6つ上で、当時は儂は10歳で、シンキ様は16歳じゃった。


初めて見た時は天女が天から降りて来たと思うほど、美しい人だと思った。


艶やかな黒髪、透き通る程白い肌、煌めくような赤い唇、儚げな笑み


何も言葉を交わさずとも、この人のために死ぬことができると思うほど、初対面で儂は惹かれた。


「は、はじめまして!そ、某は、ロンと申します!」


儂は緊張を隠せず、口調もしどろもどろで初対面の挨拶をした。


「まぁ。可愛らしい護衛さんね。ワタクシはシンキ、コウ・シンキです。ワタクシのような不遇の姫に仕えてさせてごめんなさい」


シンキ様は、儂のような下賤の者にも丁寧に挨拶を返してくださり、そしてあまつさえ謝罪までされた。


心の優しい人じゃと、儂は心底思った。



それからの日々は充実していた。


美しいシンキ様の身の回りの世話をしながら、シンキ様の散歩や買い物などの外出に随行し、シンキ様が入浴している時やお休みになられる時以外は常に傍に仕えていた。


シンキ様は6番目の御息女とあって、当主様から気に掛けられることもなく、コウ一族の屋敷の端っこの離れでシンキ様と2人暮らしのような日々が4年ほど続いた。


4年の日々の中で、儂の武がますます磨きがかかり、コウ一族の兵士の中でも随一の実力と謳われるほどにもなっていた。


コウ一族の兵士の中での、武術大会が定期的に開催されていて、儂はシンキ様のお立場が良くなるようにと、必死で武術大会で結果を残そうと努力した成果だ。


シンキ様の傍仕えの儂の評価が上がれば、その主人であるシンキ様の評価も上がる。


そして屋敷での待遇が少しでも良くなればと儂は子どもながらに努力したのだ。


しかしそれでもシンキ様のコウ一族内での待遇は変わらなかった。


「ロン…ごめんね。あなたは凄いのに、ワタクシのせいであなたまで酷い扱いを受けている」


シンキ様は意を決して儂にその理由を話した。


それはシンキ様が六番目の御息女であることが理由だった、


『法漢帝国』では、長女ほど子が授かりやすく、下の妹ほど子が授かりにくいという迷信が信じられていた。


つまりシンキ様は六番目の女子であるため、周囲からは子を授かることができない女子と見なされていたのだ。


子を授かることが期待できない豪族の娘など、嫁の貰い手があるはずなく、シンキ様はコウ一族の屋敷の中で、檻に囚われた鳥のように暮らすことを強いられていたのだ。


「子が期待できない女なんて、誰も貰ってくれないのよ。政略結婚に使えないワタクシはお父様にとっては塵芥のようなものなの…」


シンキ様はそう寂しく笑った。


こんな天女のように美しく、誰よりも心優しいシンキ様に嫁の貰い手がない?


この世界は狂っていると本気でそう思った。


ただ儂にとっては、この狂った世界は都合が良かった。


「な、なら…!ぼ、僕が…!…シンキ様をお嫁に…!」


当時の儂は14歳で、実力があるとはいえ一介の兵士


シンキ様は20歳でしかも貰い手がないとはいえ豪族の娘


あまりにも無謀な求婚であった。


しかしシンキ様は優しく微笑んでくれた。


「嬉しいわ。ロンとなら素敵な人生を歩んでいけそう」


肯定とも否定とも取れないその答えであったが、儂はそれでもこの人を命を懸けて守ると誓った。


そして儂の拙い求婚からまもなく、事件が起きた。




『法漢帝国』の崩壊を導いてしまった、大事件が。




シリュウ「年上…身分違い……拙い求婚…ど、どこかで聞いた話だね…?」


ビーチェ「血は争えんのう…かっかっか!」

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