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第11話 サザンガルド晩餐会④~『白銀の剣 バルトロ・インカンデラ』


「貴様がシリュウ・ドラゴスピアとやらか。ふん、まだ子供ではないか」


軍都庁長官ウベルトさんや周辺都市の領主達と和やかに挨拶をした後に、慶事の場にふさわしくない居丈高な声が僕に掛けられた。


これが、シルベリオさんが言っていた僕の活躍に懐疑的な人かな?


パッとみた感じ紺色の短髪に、中々の長身だ。


格好はワイシャツにベストを着ている瀟洒な恰好をしている。


「どうも初めまして、シリュウ・ドラゴスピアと申します。おっしゃる通り16歳のまだまだ未熟者でございます」


「………インカンデラ氏よ…挨拶はもう結構じゃ。お帰り口はあそこの扉じゃぞ」


僕は普通に挨拶をしたが、ビーチェはすでに臨戦態勢に入っている。


……あぁ…ビーチェの目の光がなくなっていますやん……闇堕ち状態になっちゃった。


「ベアトリーチェ嬢…久しく見ないうちにまた美しくなられたようだ。今回の政略結婚も意に沿わぬものではないか」


おっと?


サザンガルドでは僕とビーチェの結婚は自由恋愛結婚だと噂になっているはずだけど、噂を信じていない人なのか。


「何を寝言を言っておる。今回は政略結婚ではありんせん。()()()()()()()()()()()()()()()のじゃ」


おぉ……そうだっけ…?


僕的には僕がビーチェを望んだような気もするけど、ビーチェははっきりとそのインカンデラさんとやらに言い切った。


「いやはや…私の前では無理をしなくても良い。このバルトロ・インカンデラ、いつでもそなたを迎え入れる覚悟はある」


おいおいおい…新郎の目の前で新婦を口説くのかい!?


なんて非常識な……


ビーチェも目を見開いて、驚き呆れている。


流石に僕もカチンと来たので、文句を言ってやる。


「おいおい、気障な真似は酒場だけにしときなよ。アンタのせいで冒険者全体の品位が疑われるだろうがよ!」


しかし文句を言おうとした時に、赤色のラフなドレスを着た赤い長髪の女性が割り込んで来た。


「………カタリナ…貴様ごときに品位についてとやかく言われる筋合いはないがな」


「新郎の前で新婦を口説く馬鹿の品位なんて、ガキ以下だろうがよ」


「……何だと?貴様にはベアトリーチェが望まぬ政略結婚で苦しんでる様が見えないのか?」


「アタイにはただただ幸せそうな夫婦にしか見えないね。アタイに見えてるのは、このめでたい場を汚す愚か者の冒険者だよ!」


おお…この女性はまともな人だ…


カタリナって言ってたから、『黄金の槍』のクランリーダーのカタリナ・ジュンティさんだ。


「ありがとうございます。まさにカタリナさんの言う通りですよ。僕達はちゃんと愛し合って生涯を共にすると誓い合ったのです。そこに政略も何もありません」


「まさにカタリナ殿の言う通りじゃ。これ以上続けるなら叩き出すぞ?」


僕ら3人に睨まれたインカンデラは、そんな目線を気にせず続ける。


「何を言う。サザンガルド最強の冒険者クラン『白銀の剣』をまとめるバルトロ・インカンデラを会場から叩き出すなど誰にもできやしまい」


えぇ……無敵の人じゃん……


流石にシルベリオさんにオルランドさんも黙ってはいないと思うけど


そう思ってシルベリオさんとオルランドさんの方を向くと、シルベリオさんは明後日の方向を向いてこちらから顔を背けているし、オルランドさんは手を合わせて苦笑いしている。


どうやら助けてはくれないようだ……


「伯父様も父様も……情けぬ……仕事のシガラミで、こやつに強く出れんのじゃろう…」


あーそういえば『白銀の剣』って軍都庁や領邦軍の依頼をよく受注しているんだっけ


確かにここで関係性がこじれたら、領地経営に影響が出ちゃうからね。


仕方ないかなと諦めていたら、救援が来た。


「シリュウ殿への無礼な発言は見過ごせませぬぞ、インカンデラ氏よ」


そう言いながら、颯爽と現れたのは我らがシルビオさん


今日はバッチリとタキシードを決めていて、凛々しい顔つきと相まってかなりの貫禄を醸し出している。


「…シルビオ殿まで、何か私に文句でも?」


「文句ではないが、この場はシリュウ殿とベアトリーチェの祝いの場だ。貴殿にも祝福をして欲しい想いで招待状を出したのだ。その祝福の気持ちがないのは個人の感情として仕方はないが、それならば欠席なされば良かったのだ。出席した以上は祝福の言葉を述べるのはこの場の参加者の義務だ。その義務を果たさぬものはこの場から退出するは道理ではないか」


「………ぐっ……」


シルビオさんの正論パンチにたじろぐインカンデラ


しかし開き直って、シルビオさんを脅すように言う。


「いいのかな?私にそんな態度を取っても?軍都庁の依頼を受けぬこともできるのだぞ。総務局長…いや次期領主のあなたには困ったことになるのではないか」


そんなインカンデラの脅しに、シルビオさんは真っ向から反論する。


「そう思うならそうされたらよろしい。少なくとも私はシリュウ殿を信用せぬものに仕事を任せたくはない。それに軍都庁と領邦軍の依頼が『白銀の剣』に集中している状況も改善せねばと考えている。そなたがサザンガルドに大きな貢献をしている『白銀の剣』のリーダーだということは理解しているが、だからといって我が家族であるシリュウ殿を貶す権利などあろうはずもない!」


おおお!


シルビオさん…かっけぇ…!


僕はシルビオさんの雄姿に心の中で大拍手をしている。


「シルビオ…!お主…成長したのう!かっかっか!」


ビーチェもご機嫌そうに笑うが、言い方が完全に年長者のそれである。


ビーチェの方が4つ年下だよね?


しかしシルビオさんにそれだけ言われてもまだ引かないインカンデラ


「しかし軍都を治める一族に連なるもの武に長けてなくてはならないのではないか。その者の実力は未知であろう?ならばこの実績が確かなバルトロ・インカンデラこそがベアトリーチェ嬢の婿に相応しい」


なんかもう逆に尊敬するわ。


ここまで食い下がれるなんて


そのインカンデラの発言は、周りの皆の琴線に触れたようだ。


「シリュウ殿の実力が未知とは、『白銀の剣』のリーダーともあろう方が情報収集能力がなさすぎるのではないか?この場どころかサザンガルド中の猛者を集めてもシリュウ殿には敵わない。来月の武闘大会も私は『シリュウ殿が強すぎて勝負にならない』からシリュウ殿の参加に反対しているくらいだ」


「アンタ…マジで言ってる?…この佇まいと足運びだけで相当な武の者だってアタイにもわかる。最近は現場に出てなくて、クランの運営の方に回ってるから錆びついてるんじゃないの?引退した方がいいよ」


「現役の王家十一人衆相手に好き放題言うのう?シリュウの実力は王家十一人衆全員が認めているのじゃよ?それだけでなく、王国のシャルル王、リクソン・ベタンクール都督や帝国のカール皇帝、カチヤ・シュバインシュタイガー将軍まで認めているのじゃ。貴様の評価など塵芥じゃて」


シルビオさんにカタリナさん、ビーチェも庇ってくれている。


皆優しいね、ありがとう。


でもインカンデラさんはまだ食い下がろうとしている。


「………ぐぐ…しかし…!」


ドガッ!!


「ぐはっ!」


そしてその続きを言う前に、インカンデラを蹴り飛ばす者が現れた。


その者は真っ黒のスーツに白いネクタイをし、髪は長髪で後ろで束ねており、前髪も目が隠れている程長く、俯きがちな表情をしている。


インカンデラは蹴とばされた拍子に、床へ転がった。


え~と…この人誰だっけ……


僕がそう思っているとカタリナさんがとても驚いた顔をしている。


「……マストロヤンニ…アンタ…どうしたんだ?」


マストロヤンニ…?


それって……


シルビオさんがマストロヤンニさんに詰め寄る。


「『漆黒の盾』のリーダーともあろう方がいかがされた?流石に会場内での暴行は看過できないぞ?」


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