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第2話 結婚式って1日じゃないんすか?

烈歴 98年 7月10日 8時39分 皇都セイト 10区(軍港区)


半袖で過ごすことが当たり前になった季節だと感じるほど照りつける太陽の光が眩しく輝き、どこまでも澄み渡った空の青さに夏の到来を感じながら、僕は軍船が立ち並ぶ軍港の先の水平線を眺めていた。


そして後ろを振り返ると、もう2月以上は過ごしては、ここを離れることに寂しさすら感じるほど馴染んだ皇都の街並みがあり、市場の掛け声や通勤する人々などの朝の活気が溢れていた。


今日僕は、ビーチェと共に海軍の軍船で、サザンガルドに向けて出航する。


元々は私費で商船か定期便に乗って行く予定だったが、ゾエさんが気を利かせてくれて、サザンポートに任務に向かう船へと同船させてくれることになったのだ。


まぁサザンポートまでは任務扱いだから、船の上では海軍准将として働くけどね


サザンポートに到着後は僕とビーチェは結婚休暇で1月のお休みをもらう。


入って早々長期休暇なんて申し訳ないと思うけど、『サザンガルドでの結婚式と武闘大会だろ?そんなの半分仕事さね!実質自由にできるのは1週間もないだろうさね。はっはっは!』とゾエさんに言われたので、気にしないこととする。


今は出航の準備をしている海軍兵士達の作業をビーチェと共に見守っている。


今日の僕とビーチェは海軍軍服だ。


ただ僕は王家十一人衆に就任してから、王家十一人衆しか着用が許されない紫のマントを羽織っている。


このマント中々良い生地を使ってるせいか、羽織っていると中々暑い。


でも外すとゾエさんとフランシス中将に怒られるから嫌々着ている。


パオっちも普段着てないから、着なくても許されると思ってたけど、僕は王家十一人衆の新参者で、名は知られていても顔は知られていないから、宣伝も兼ねているらしい。


なら仕方ないか。


「ここにきた時はこんなに船に慣れるとは思わなかったね。明日の夕方にはサザンガルドとは早く着くね」


僕は隣にいるビーチェに話しかけた。



「大きな海流が皇都からサザンガルド方面に流れてるのじゃよ。あとこの季節は西から東に季節風が吹くのもあいまって魔術師がいなくともそこそこの航行速度が出るみたいじゃのう」


ビーチェが相変わらずの知識の多さで僕に教えてくれる。


出会った時は勉強は苦手とは言ってたけど、苦手なだけでしないわけじゃないんだよね。


それにビーチェの武術は卓越したものだから、確かに武術に比べれば勉強は苦手と感じているのかもしれない。


それでも僕の数十倍も賢いと思うけど…


「本当に色々知ってるなぁ、ビーチェは」


僕が感心したように言うとビーチェはジト目で僕を見る。


「これくらいは准将殿にも説明したはずじゃがの…」


その…すいません…なんか海軍の研修でそんなこと言ってた気がする…


そんなビーチェのジト目から逃げるように僕は話題を変えようとする。


「そ、そう言えば、明日に着くのに明後日結婚式ってなかなかに早急だよね。それにパオっちとかは後から行くって言ってたけど間に合うのかな?」


僕がそう言うとビーチェのジト目が、呆れたような驚きの顔に悪化した。


ぇぇ…なにかまずったかな


「はぁ…武勇以外はてんで疎いのう…それもこの前説明したじゃろうに。結婚式の本番は来週で、明後日はサザンガルド周辺の華族や有力者達を招いた晩餐会じゃて」


「そ、そうだっけ…ごめんごめん」


「明後日の晩餐会には妾達の他には皇都からは誰も参加せぬ予定じゃよ。19日の結婚式前夜祭と20日の本番のみ王家十一人衆の方やリータ殿下とルナが参加するのじゃ」


「だから後発なのか。来週ならまだ間に合うよね…ん?…と、ということは…」


僕は改めてビーチェの説明を咀嚼してある結論に辿り着く。


「もしかして12日の晩餐会から毎日のように、社交の場がある…?」


「その通りじゃよ」


ぎょええええ!


僕が一番苦手なやつ!


「結婚式って1日で終わらないの!?」


「庶民ならそうじゃが、ほれ、妾、華族令嬢、それもそこそこの」


そ、それはそうだけども…


「まぁ明後日のはサザンガルド周辺の身内だけじゃからそこまで堅苦しくはなかろうて」


「そうなの?」


「妾達と幼少の頃より交流のある華族や有力者家族…学園の同窓生あたりかのう」


「なるほどなるほど」


「前夜祭は流石に格式張っているのじゃな。リータ殿下始め、王家十一人衆の方々、それにタキシラやノースガルドの領主一族からも参加があるのじゃ」


「ほへぇ〜、タキシラやノースガルドまで?領主が来るのかな?」


「流石に領主は来ないとはおもうがのう…せいぜい代理の者が一族の代表として参加するとは思うが、そこまでは妾も聞いておらぬのう。母様達にお願いしてるのじゃ」


リタさんに王家十一人衆にノースガルドやタキシラの豪族まで…


そんな大物たちが一堂に会する晩餐会の主役なんて今から緊張でしかない


そんな僕の緊張が伝わったのか、ビーチェは柔らかく微笑みながら緊張をほぐしてくれる。


「ふふっ、大丈夫じゃよ。誰も取って食いやせん。それに最も高位な方がシリュウの味方じゃろう。何も心配ありんせん」



確かに


リタさんが参加者の中で最も位が高いだろうし、なんかあったらリタさんに泣きつこう。



そんな情けない決意を胸に、出航準備が終わった船にビーチェと共に乗り込んだ。



いざ、久々のサザンガルドへ!





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