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第19話 皇都事変⑨〜交渉そして決着

列歴98年 7月7日  1区(皇区) 皇宮通り



「皇軍大将、ルイジ・ブッフォンだ。皇都を騒がす不埒な輩を取り締まりに来た」


「陸軍大将、アレス・デルピエロだ。テメェら……腐ってやがんな…!」


「海軍大将、ゾエ・ブロッタさね。……か弱い女子に男がこんな大勢で襲うなんて情けないねぇ!」


リータ達が華族の私兵に囲まれているところに、アウレリオに続いてまさか皇国軍の三大将が増援に来た。


三大将の登場に、当のリータはポカンとした顔で状況を飲み込めずにいた。


「えっ?えっ?……シリュウちゃんとパオ少将じゃないの?えっ?」


そんなリータの驚いた様子がおかしいのか苦笑いしながら答えるブッフォン


「はっは。私達では不足ですかな?確かにシリュウ准将やパオ君ほどの腕はありませんが」


そんなブッフォンの謙遜にケチをつけるように言うデルピエロ


「はん!俺ァはまだまだ前線の奴らには負けねぇぞ?」


それに負けじとゾエも威勢を張る。


「アタシだってそうさね!海軍はパオにシリュウだけじゃないよ!」


「いやいやいや!あなた達の実力なんて疑ったことないてないわよ!なんでこの状況で駆けつけてくれたの?味方?」


未だに状況が飲み込めないリータにブッフォン、デルピエロ、ゾエが説明する。


「ここ数日、皇妹派と皇王派の政争について、私達軍も調査させていただきました。そして本日この皇区で面白い事が起きるとサンディから聞かされましてな」


「サンディの言うことに外れはねぇ。これは何か大きな事が起こるってもんだとピンと来た」


「そうしたらリータ殿下が多数の輩に襲われてるって聞いたもんでこの目で確かめに来たってもんさね」


「ぇぇ…これもサンディ中将の取り計らいなのね…とんでもない人ね」


リータはこの状況を作り出したサンディの策士ぶりに舌を巻く。


そして三大将は華族の私兵と刺客達に向き合う。


「どこの誰か知らねぇが、皇族相手にこんな多数で襲撃するなんざ生きて帰れると思うなよ!!」


「ひぃい!」


デルピエロの怒号に震え上がる私兵達


数々の戦場を潜り抜けたデルピエロの怒号は、皇都で騎士ごっこに終始している私兵達にはあまりにも恐ろしいものだった。


「あんたら……裏でコソコソしてる分には見逃してやったが、おいたが過ぎたさね…これを機に一掃してやってもいいんだよ!」


「ま、まずい……海軍に目をつけられたら…!?」

「み、密輸関連は全滅する…!」


ゾエの脅しに焦燥を隠せない刺客達


海軍に目をつけられると裏の稼業が終わってしまう危険性があり、刺客達はそれを何より恐れた。



「何にせよ、これは君達だけの始末では終わらない。ダレッシオ侯爵とロカテッリ侯爵に翻意ありとして、法廷に突き出すしかあるまい」


「なっ!?そ、それは!?」


「わ、我々は華族とは無関係だ!」



ブッフォンの言葉に何より焦る部隊長達


ここで自分達が失敗したことで、自分達の主人の失脚まで繋がってしまうことは破滅の道である。


「私を見くびらないでいただきたい。君達がダレッシオ侯爵家とロカテッリ侯爵家の私兵であることは一目瞭然だ。何十年皇都で華族の相手をしていると思っているのだ」


ブッフォンは力強く部隊長達に無慈悲な現実を突きつける。


「ぐ、ぐぅ…!」


「ま、まずい…!?やるか…!?」



一転して窮地に立たされた刺客と私兵達


ここで刺客達はいち早く行動した。



「わ、我々は手を引かせてもらう!さらば!」



そう言って屋根にいた数十人の刺客達は皇都の闇に消えた。


「なっ!貴様らぁ!?」


「これだから裏のものは信用ならんのだ!」


部隊長達は闇夜に消えた刺客達に向けて怒号を飛ばすも後の祭りだ。



「だそうよ?信用ならないって?」


部隊長達の言葉を冗談めかしてバストーネに投げるリータ


「だから衰退するんだよなぁ、あいつら。仁義ってもんがねぇから」


「あなたにはあるの?」


「当たり前だ。でなけりゃこんな危ねぇ世界を生きていけねぇからな」


バストーネは妙な説得力を持つ言葉を放った。


「それもそうなのかしら?ところでまだやる?あなた達」


リータは残された私兵達に声を掛ける。


「あ、相手は三大将に、アウレリオ…裏のボスのバストーネに妙なメイドまで……どうする…!?」


「それでもたった6人だろ…!こちらは70人近くいる…!更なる増援も来るはず…」


「しかし!相手はあのアレス・デルピエロにゾエ・ブロッタだぞ!?100人いても勝てるか!?」


「しかしここでやらねば我らは破滅だ!」


「軍の大将をやったとしても破滅だろ!?」


ところどころで言い合いになる私兵達


彼らの盤面はもう詰んでいるに等しい。


しかし窮鼠猫を噛むように、決死部隊で突撃されてはルナやリータの身が危ない。


そう判断したブッフォンは華族の私兵達に提案をする。


「落ち着くんだ。君たちに提案をする」


「て、提案?」


「み、見逃してくれるのか?」


「ちょっと!ブッフォン将軍!」


ブッフォンが交渉を始めようとするのをリータが遮ろうとするが、それをゾエが制止する。


「リータ殿下、ここはブッフォン将軍に任せるさね。こういうことはあの人の専売特許さね」


「うーん、ゾエちゃんが言うなら…」


そしてブッフォンは華族の部隊長達に提案する。


「1つ目は今ここで我らと武で雌雄を決するかだ。見ての通り我らは戦えるのが6人だが、増援にパオ・マルディーニ少将とシリュウ・ドラゴスピア准将がすぐ駆け付けられる距離にいることも付け加えておく」


「こ、この面子にさらに『海の迅雷』に『銀龍』だと…生きて帰れる気がせん…」


「か、勝てるわけねぇ…」


ブッフォンの言葉に絶望感を深める私兵達


「2つ目は、今ここで降伏し、リータ殿下の道を開けることだ。しかしただ見逃すには事態はあまりにも大きい。なので各家の部隊長の身柄は拘束させてもらう。そしてこの騒動の首謀者の名を吐いてもらう」


「!?」


投降してさらに自ら主人を売るように迫るブッフォン


「そ、そんなことしたら…家族が…」


「皇都に住んでいられない…」


ブッフォンの2つ目の提案に絶望する部隊長達


その他の私兵も部隊長達が囚われて残された自分達に主人の叱責が来ると思えば喜んでいられなかった。


しかしブッフォンはそんな私兵達の心の中を見透かすように言う。



「主人からの報復は責任を持って皇軍が対処する。無論、君達の家族の安全もだ」


そんなブッフォンの言葉に少し安堵する部隊長達


「そ、それなら…このまま戻ってもどうせ首を切られるだけ…」


「それどころか、冤罪を被せられるかも…俺達の独断専行とされるとか…」



ブッフォンの交渉に部隊長達の警戒心が解かれるのを見て、リータは感心していた。


「へぇ〜。人心掌握ってこんな風にもできるのね。さすが皇軍大将ね」


「人の心を掴ませることに関しちゃ、あいつの右に出るもんはいやせんぜ」


デルピエロはブッフォンのことを手放しに褒めた。


「あいつらももう一押しってところさね」


ゾエは私兵達の様子を見てそう判断する。


「なら最後は私に任せてもらおうかしら?」


「「えっ?」」


リータはそう言ってブッフォンよりも前に出て私兵達に言う。


「今ここで降伏するものは、私の私兵として雇ってあげる!住まいは『リータウン』に用意するわ!あそこなら皇王ですら出だしはできないわ!」



「「「!!!???」」」


リータの衝撃の提案に場はざわつく。


「リ、リータ殿下の傘下に!?」

「それも『リータウン』に住める…!?」

「あそこなら襲撃もされまい…」

「それにリータ殿下の庇護下ならメディチ公爵家が味方だろ……!」

「今ここで大将達と戦うか…撤退して罰を受けるか…ここでリータ殿下に鞍替えするか…」


リータの提案は窮地に立たされた私兵達にとってあまりにも魅力的な提案だった。


しかしリータは条件をつけた。


「でも無条件じゃないわ。私の思想に賛同する者、人の道に外れた事はしない者が条件よ。これに誓える者は降伏し、私の私兵として『リータウン』に家族ごと住まわしてあげる」



リータの提案に三大将は、リータの評価を改めていた。


「リータ殿下…今襲っていた者も即座に受け入れるとは…懐の大きいお方だ」


「この状況で登用かよ。豪胆だな!がっはっは!」


「あれだけの人材を一括して雇うと断言できるほどの財力……メディチ家が後ろにいるとはいえ半端じゃないねぇ」



そしてリータは私兵達に最終判断を迫る。


「さぁどうするの!?沈黙は拒否と受け取るわ!」



リータの掛け声に、部隊長達は武器を捨て兜を脱ぎ、リータの前に出て跪いた。




「リータ殿下に降伏いたします。何卒家族と部下にはご容赦を」


「同じくリータ殿下に降伏いたします。私の家族と部下には寛大な処置を」



「任せて。些細を話してくれれば、あなた達の安全と生活は保障します」


「「はっ!」」


華族の私兵達はリータに降伏をした。


これにて皇都の夜を騒がせた騒動は終結を見た。


この後リータ達は無事に『リータウン』に到着することとなる。



そしてこの夜の出来事を切っ掛けに、皇都の勢力図が大きく変わることとなった。






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