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第10話 2週間後にサザンガルドで!



「コウロン・ドラゴスピアですよ」



僕の一言に王家十一人衆の面々はみんな同じように目を見開く。



全く予想外だったのか


思い浮かんではいたけど、言えなかったのか


そもそもまた爺ちゃんが軍に戻ることなんて思いつきもしなかったのか


そしてその名が僕の口から出てきたことが衝撃だったのか


その理由はわからないが、少なくとも今この場で、コウロン・ドラゴスピアが大総督に就任することを反対する声は出なかった。


「コウロン殿か…確かにこれ以上ない人物だ」


ブッフォン将軍は目に光を宿す。


「あの親父か…確かに俺より強えし、あの親父の言うことにはルイジもゾエも逆らわねぇな…」


デルピエロ将軍は、爺ちゃんのことを畏怖しているのか、珍しく萎縮して言う。


「一番頭が上がらないのはあんたさね。どれだけ戦場で好き勝手して殴り飛ばされたのか忘れたかい?」


「テメェ!?部下達の前でそんなこと言うな!」


そんな関係性なのか…デルピエロ将軍と爺ちゃんは…


まぁ稽古では厳しい顔は見せるが、軍人としての爺ちゃんはあまり知らないからそんな話が聞けて嬉しい。


「あ〜大将らはコウロン殿のことをよく知ってるとは思うが、俺達はあまり知らないんだぜ。むしろ神話の中の生き物にも等しい存在なんだよ。教えてくれよ〜」


サンディ中将が大将達の会話に割り込むようにして聞く。


確かに今の中将と少将達は爺ちゃんの現役時代とほとんどかぶってないのか?


「確かに…現役の頃のコウロン殿を知るのは大将の御三方と…僕とレアくらいだろう…ファビオにサンディ…マリオとパオは知らないのも当然だ…」


「私も若手の頃は、在籍は被ってませんね。その頃はまだ海軍にいましたので。というか雲の上の存在ですよ」


「違いない…僕も共同作戦の軍議で遠くからお見かけしたくらいさ…遠くからでもはっきりと伝わる存在感…傑物とはああいう人のことを言うんだろうね…」


レアさんとフランシス中将が爺ちゃんについての印象を語る。


この2人でもそんな凄い評価になるのだから、やっぱ爺ちゃんは凄い軍人だったんだな。


「むしろ人となりはシリュウっちが一番詳しいんじゃないかにー?」


パオっちはそう言うので、僕が爺ちゃんの人となりを話そうとすると大将の三人が止める。


「それは違う…」

「パオ…やめるさね…」

「パオ君…少し違うのだ」


なんでさ…


僕がそう思っているとデルピエロ将軍が説明してくれた。


「あの親父は自分の家族を溺愛していたんだ。何度か娘を抱いているところを見たが、それはもう見たこともないデレデレした面だった……シリュウはその娘の息子だろう?おそらく目に入れても痛くないほど可愛がられたはず…そんな甘やかされたシリュウから聞くあの親父の人となりなんて俺達には参考にもなりゃしねぇよ……」


ぇぇ…


確かに爺ちゃんは優しいけど…甘やかしてなんて…


でも否定はできないかもしれない。


少なくとも僕はエクトエンドでの暮らしで何一つ不自由はしなかった。


うーむ、僕は爺ちゃんに甘やかされて育ったのかなぁ



「……少なくともお優しい方なのは間違いないさね。だが不義や怠惰には非常に厳しいお方だった。前線の村で村娘に不埒を働こうとした兵士のアレをその場で握りつぶした話なんてアタシらの世代の奴なら一度は聞いたことがある逸話さね」



あー


それはそうかも


爺ちゃんは人の道から外れる行為を非常に嫌う。


僕も幼少の頃からそれは叩き込まれた。


「……ならちょうどいい人材じゃないか。その調子で皇都にいる人の道を外れた奴らを正してもらおうぜ」


サンディ中将が冗談か本気なのかよくわからない感じで言う。


その道を外れた奴らとは、軍ではなく華族のことを言っているのはこの場の全員がわかっていた。


そしてファビオ中将が現在の爺ちゃんについて聞いてきた。


「……そもそも…まだご壮健なのか?…武は衰えていないのか?」


それに対してブッフォン将軍が答える。


「先月、皇都でお会いした時は、溌剌としておられたよ。武の方は手合わせはしていないがわからないな」


ブッフォン将軍は困ったように言うが、僕が代わりに答える。


「爺ちゃんの昔の武がどれほどかは知りませんが、僕が本気で挑んでも、未だに勝率は2割くらいですよ」


「……ほう…!…シリュウが本気で挑んで2割だと…!血が滾るな…」


おっと….火をつけてしまった。


爺ちゃん…相手をしてやって…


「であれば、コウロン殿に大総督の就任を依頼する方向でよろしいですか?」


レアさんが全員に問いかけるが、反対者はもちろんいない。


全員が頷いた。


「じゃあどうやって就任していただくか…シリュウ准将、コウロン殿は今どこに?」


ブッフォン将軍が僕に聞く。


「今はサザンガルドにいます。サザンガルド領邦軍の軍事顧問をしていまして…僕の結婚式が2週間後のサザンガルドで開かれるので、その時に会えますね」


「そうだったな。私も招待状をいただいている。当日はよろしく頼むよ」


その一言を聞いた他の面々が驚く。


「ルイジ、テメェ抜け駆けしやがって!俺も呼べよ!シリュウ!」

「そうさね!ブッフォン将軍が出るならアタシも行きたいさね!」

「わ、私も…行きたいなぁ…」


僕に招待を迫るデルピエロ将軍にゾエさんとレアさん


「え〜と…招待は僕が遠征に行く前に整理しちゃいまして…この中なら来てもらうのがブッフォン将軍とパオっちですね」


「ず、ずるいですよ!パオ!姉の私を差し置いて!」


パオっちはレアさんに胸倉を掴まれて揺らされている。


「ににににににー!」


というかそんなに僕の結婚式に出たいの?


僕がそう思っていると、サンディ中将が笑いながら言う。


「いや〜他人の結婚式はいいもんでなぁ。結婚式の披露宴で飲む酒が一番美味いんだよ。それにシリュウ准将とサザンガルドの剣闘姫の結婚式…行きたくないって奴の方が珍しいもんさ…」


「そう言うものなんですかねぇ」


うーむ、出席者に関してはサザンガルドの当主のシルベリオさん、ビーチェのお父さんのオルランドさん、お母さんのアドリアーナさんに一任したけど、これは僕の方で決めなきゃいけないな。


とりあえず爺ちゃんの友人枠のブッフォン将軍と僕の友人枠のパオっちは確定…


上司のゾエさんとフランシス中将も招待すべきか…


あと親密なのはレアさんとサンディ中将だけど…


そんな線引きも面倒くさいな。


じゃあいっそのこと…



「じゃあ皆さん来ますか?」


僕は全てを諦めたように言う。


その一言に皆んな目をぎらつかせた。



(陸軍)

「……サンディ…7月の予定は?」


「ノースガルド方面の視察とサザンガルドの視察…後は本部での前年度決算審査かねぇ。後は帝国の動きに備えて臨時の募兵をするつもりだった」


「ならサザンガルド以外の予定を初旬に全部こなすぞ。募兵は並行してやれるな!シリュウの結婚式の時期にサザンガルドでの視察を組み込む」


「了解だ。任せておくれ」


「美味い飯が食えそうだぞぅ」



(海軍)

「フランシス、7月の予定は?」


「ポアンカレとの同盟内容の詳細な調整…その他は特にないね…王国戦線の再配備は大方指示し終えている…僕達がサザンガルドに行っても問題ないだろう…ついでにサザンガルドの領邦軍との協力関係についても確認しにいこう…利用させてくれる約束となっているサザンポートもこの目で見ておきたい」


「はっはっは!サザンポートの視察もできるなんて一石二鳥さね!これは楽しい出張になりそうだ!」


(皇軍)

「ブッフォン将軍がサザンガルドに行くことは知っていましたが、私とファビオまで皇都を空けていいものなのか…」


「問題ない…どうせ皇王様の護衛には皇家騎士団が出しゃばってくるのだろう?なら好きにさせておけ…」


「むむ…しかしシリュウ君の結婚式に出る以外に口実が欲しいところですね」


「なら武術大会に出る者達を皇軍に勧誘するためにサザンガルドに視察に来たとすればいい…」


「いや武術大会は8月ですよ…行くには早すぎます…」


「はっは。もうそんな口実などいらないのではないか?」


「どういうことです?」


「そもそもこの話はコウロン殿に大総督に就任してもらうことから出た話だろう?なら王家十一人衆全員で出向いたという誠意を見せたということにすれば良い」


「な、なるほど!」


「サザンガルド…軍都の名に恥じぬ強者が集まる街…」


「たまには皇都を離れて、我らのありがたさを皇都華族の方にわかってもらおうではないか」





それぞれの軍が内々に話し合いをして、結論が出たようだ。



そして僕とパオっち以外の全員が声を揃えて言う。



「「「出席!」」」



ここに王家十一人衆がサザンガルドに集結することが確定した。



おそらく大変なことになるだろうと思ったが、僕はもうシルベリオさんに丸投げしたらいいかと思い何も考えないことにした。











2週間後にサザンガルドで!



ビーチェ「そんな文を書くのは妾なのじゃが?」


シリュウ「も、申し訳ございません」


ビーチェ「まあ伯父様も狂喜乱舞するじゃろうなぁ」


シリュウ「え?」


ビーチェ「忘れたかや?伯父様は軍記物が大好物じゃと…現役の王家十一人衆勢揃いでサザンガルドに招待するなど夢物語じゃろうなぁ」

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