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第8話 皇妹派と海軍と



「率直に聞く。お前さん達4人は皇妹派さね?」




ゾエさんから直球の質問


フランシス中将も鋭い視線を向けている。


でも僕達には何も疚しいことはない。


直球の質問に直球で回答した。


「はい、そうです。僕達4人はリータ・ブラン・リアビティ殿下をこの国の王にするつもりです」


「「…!!」」


ある程度予想がついていたのか、小さく驚くだけのゾエさんとフランシス中将


そして溜息をつきながら言う。


「はぁ~。まぁ思想はお前さん達の自由さね。しっかり軍務を果たしてくれればアタシとしてもとやかくは言わないさね」


お?意外にも放任主義の答えが出た。


「……でもまたなんでリータ殿下なんだい?確かにあのお方は面白いお方だが、あの奔放さと軽薄さは王に向いているとは思えないさね。現王は確かに保守的でいかにも華族の代名詞のようなお方だが、今すぐ挿げ替える必要のある王までは思わないさね」


長年海軍に勤めてきたゾエさんからはそう見えるのか。


確かに軍の中にいれば華族社会の中は見えないから、あくまでそう見えてしまうのだろう。


「確かに軍から見たら現皇王もリータ殿下もそのように見えるかもしれません。でもリータ殿下と1月もの間共に過ごし、そしてその想いや行動に触れた今、この国の王はリータ殿下しかいないと断言できます」


「……ふむ……実に親密に過ごしたようさね…疑うようで悪いが取り込まれていないさね?」


「まぁ…そう思われるでしょうね……でも僕はこの運命から逃げられませんから」


「…運命?」


僕の運命と言う言葉にゾエさんは眉を顰める。


「リータ殿下は僕の伯母なんです。親族なんですよ、実は」


そして僕はゾエさんとフランシス中将に特大の爆弾を放り込む。


「へぇ…そうなのかい。それなら納得さね…ってええええええええええええ!!??」


「……ほんとかい…!?」


思わず立ち上がって驚く2人


フランシス中将の目がそんなに開くの初めて見たな……


「まぁ、本当ですよ。僕の父とリータ殿下の夫が兄弟なんです。あと僕の母とリータ殿下も親友らしいです」


「いやいやいや!?リータ殿下の夫って!?それこそ皇国中の誰もが知りたい秘密じゃないか!?ど、どういうことさね…」


流石のゾエさんとフランシス中将も冷や汗を掻いている。


どこまで話したもんかなぁ。


「妾が説明しましょうぞ」


そしてビーチェが説明を代わってくれる。


「お前さん達…全員知っているのさね…」


「当然だにー。オイラ達は一心同体の同志だからね」


「は、はい!…というかもっと凄い秘密を知ってもいます…」


リアナさんは遠い目をしながら言う。


僕がシュバルツ帝国の現皇帝の孫であることね。


まぁそれも明かすかはビーチェに任せよう。


「実はリータ殿下とシリュウが初めて顔を合わせた謁見の時に、リータ殿下はシリュウの顔から親友の面影を見たそうなのです。そして改めてシリュウとお茶会の席を設けて、シリュウと話し、自らシリュウとの繋がりを告白されました」


ビーチェの説明は概ね間違っていない。


「そ、そうだったさね……それと1月の遠征の際にリータ殿下の真の人柄をお前さん達は知ったのさね…」


「そうです。リータ殿下は兵士や文官一人一人を気遣う優しきお方でした。そして誰よりもこの国の未来を憂いておられます。リータ殿下こそこの国を率いるにふさわしいお方…シリュウの伯母という間柄を除いても忠を捧げるにふさわしいお方でした」


ビーチェの説明に僕達はうんうんと頷く。


その様子にゾエさんとフランシス中将も驚いている。


「……まぁ百歩譲ってシリュウ、ベアトリーチェはいいさね……でもパオとリアナまで…特にパオなんて政争なんて全く興味なかったさね」


「にー。切っ掛けはシリュウっちであることは間違いないろん。でも遠征中に接したリータ殿下は確かに良い人だったさね。オイラもこんな人がこの国の王であればと願うくらいには」


「そ、そうです…なんて言うか…言動はやっぱり少し尖っていらっしゃいますが、その奥にある心根は本当にお優しい方なんです!それに任務をこなす度にいつも『ありがとう』って言ってくれます…」


僕達の言葉を少し噛みしめるようにして考えるゾエさんとフランシス中将


「そうか……すっかりうちのホープ達が骨抜きにされているさね。はっはっは!」


「……でも君達がその目で見たことを否定するつもりはない…」



「あ、ありがとうございます…すみません、勝手に…」


僕は少し申し訳ない気がして2人に謝る。


「何を謝るさね。アタシらはあくまで職場の上司に過ぎないさね。真に誰に仕えるかはお前さん達の自由さね」


おお……なんという懐の大きさ


流石は海軍の大将だけある。


「でも……アタシらも…無関係ではいられないさね」


「……そうだな…パオ君の言う通りだ…」



ん?どういうことだろう…?


僕はゾエさんとフランシス中将の呟きの意味が分からなかった。


でもパオっちは険しい顔をしている。


ビーチェとリアナさんも神妙な顔になっている。


ぼ、僕だけが取り残されている…?


僕がきょろきょろと周りを見渡していると、ゾエさんが説明してくれた。


「はっはっは!パオから聞いてないようさね…」


「な、何を?」


「先日の『円卓会議』のことさね。パオはその会議の中でアタシら王家十一人衆に政争に踏み込むことを求めたさね」


「…え!?」


パ、パオっちがそんなことを!?


「……先日の『円卓会議』の採決内容は……帝国への侵攻作戦の中止…アウレリオ准将を王家十一人衆から解職し、シリュウ君を後任にすること……そして現大総督の解職かつ後任は王家十一人衆に一任することだ…この3つはパオの発議で議論され……全員一致で可決された……この全ての内容について…皇王様はご承認されたのさ…」


「パオっち…いつのまにそんなことを……」


「まぁこれはオイラの仕事さ。シリュウっちは気にしないで欲しいろん」


大任を果たしたにもかかわらず、涼しい顔で流そうとするパオっち


やべぇ…かっけぇ……


しかし議題の内容に聞きなれない言葉があった。


「大総督って何です?王家十一人衆にそんな人いました?」


僕があっけらかんと聞くと、他の皆がクスクスと笑っていた。


え!?


何?そんなに恥ずかしいことを聞いた?


「はっはっは!…いやいやシリュウのことを笑っているんじゃないさね。大総督とやらがそこまで認知されていない滑稽さが、みんなおかしいのさね」


「……えぇ~…だって知りませんもん…」


僕はいじけるように言い、フランシス中将が解説してくれる。


「大総督は…皇軍…陸軍…海軍…の上に立ち…皇国軍全体を統率する役職だ…しかし実権はほとんどなく…代々華族から任命されることもあって…華族の名誉職となり果てている…これを今回の議案では華族の大総督を解職して……軍に縁のある人を王家十一人衆が選定することとなったのさ…」


「なるほど…まるで『軍は華族の言うことなんて聞かないぞ』って公言しているものですね」


「そのとおりさね。今までは政争なんて勝手にやってろと思っていたが、皇王派と皇妹派の政争は政庁と華族社会だけには収まらないようさね」


「そうなんですか?」


「リアビティ皇国の皇王になるためには政庁の大臣達で構成される『閣議』と王家十一人衆から構成される『円卓会議』の両方の承認が必要さね。つまり軍と華族の両方を抑えなければならない。今までは軍は皇王の選定に関わらないのが慣習でね。『閣議』で承認された内容を右から左へ承認していただけだったさね」


「……それが今回の議案の可決で…慣習を廃止することを…僕達王家十一人衆は暗に示した…これからは軍も政争に参加するとね…」



なるほど


このタイミングでゾエさんとフランシス中将がこの話をしてきたのがようやく見えてきた。



「つまり……お二人は皇王派か皇妹派のどちらに与するかの判断材料のため、僕達の話を聞いているということでしょうか?」



「そのとおりさね。シリュウ・ドラゴスピア准将」


僕の推測をそのまま皇帝するゾエさん


だったら僕が言うことは一つだ。




「なるほど…では…この話し合いはあまり意味がないかもしれません」



僕の断定にゾエさんとフランシス中将は眉をひそめる。




「どういうことさね…?」




そして僕は率直に答えた。











「リータ殿下と会って話してみてください。それが全てですよ」


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