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最終話 英雄は王を断じる

烈歴98年6月25日(アルトナ平原の戦いから8日後、ラインハルツ大橋の戦いから7日後)


リアビティ皇国 皇都セイト 北郊外 皇学道


豪奢な馬車に揺られながら、僕達外交使節団一行はタキシラとセイトを結ぶ大街道の一つ『皇学道』を進み、ついに1月前に出立した皇都セイトをついに肉眼で捉えることができた。


5月25日に皇都を出発してからちょうど1月が経っており、僕は出発した時のことがもう何年も遠い昔のように思っていた。


ラインハルツ大橋の戦いでサンディ・ネスターロ中将率いる軍に救われてから、僕達外交使節団一行はノースガルドとタキシラを経由しながら、陸路で丸1週間かけて皇都セイトに帰還していた。


この1週間、僕はロロ・ホウセンとの一騎討ちで負った傷もあり、馬車に据え付けられたベッドでほとんど横になりながら、ビーチェの看護を受けていた。


定期的にビーチェのお世話になっている気がするが、ビーチェは嫌な顔一つせず、それどころかいつも満面の笑みで僕を甲斐甲斐しくお世話してくれるので、僕は遠慮なしに甘えていた。


まぁ夫婦だからね。役得ってことで。


他の外交使節団の一行も帝国から脱出したところで体力的に力尽きたようで、体調不良者が何人も出たそうだが、僕と同じように馬車で移動していた。


この外交使節団約400名もの人数分の馬車を融通してくれたのは、意外にもノースガルドの領主である

ガスパロ・フォン・ノースガルドだった。


僕はノースガルド滞在中は、ずっと宿で治療に専念していたため、ノースガルド公には会えず、なぜそんなに良くしてくれるのか知らなかったが、後にサンディ中将に聞かされた。



「俺達の中にシリュウ准将がいたから、ガスパロ爺さんが皇都までの馬車を見繕ってくれたのさ~。どうやら25年前の第3次烈国大戦の時にシリュウ准将の爺さんに助けられた恩返しらしいぜ」


「えっ!?でもじいちゃんは援軍に来ても『兵糧さえ持ってきてくれれば貴殿らはお役御免だ』って吐き捨てられたと…それに援軍も拒否したって…」


「巻き込みたくなかったのだろうさ。あの時の戦況は少数の皇軍が来ても焼け石に水の状況だ。援軍を拒否したのはガスパロ爺さんのせめてもの親切なんだよ。あの爺さん口は悪いが、義理堅く優しい人なんだぜ」


そうノースガルド公を語るサンディ中将の目は優しく、真実を語っているようだった。


いつかノースガルド公と爺ちゃんを会わせて、爺ちゃんの誤解を解きたいと思った。


そんなこんなで、1月振りに帰って来たセイトだが、様子がいつもと違う。


なんと街道には人垣ができており、街に近づくにつれ、人の数が増えている。


窓を開けて顔を出すと……



「良く帰ってきたー!皇国の誇りだ!」

「お疲れ様!英雄達の凱旋よー!」

「あっ!シリュウ准将だ!おーい!」


なんとなんと人々が僕らを英雄のように讃えて、笑顔で手を振ってくれているのではないか!


「ビ、ビーチェ…これって?」


「どうやら妾達は英雄になっておるようじゃなあ。まぁ王国と親密な関係を築き、窮地の帝国から1人の脱落者も出さずに帰って来たのじゃ。それはもう皇都は大変なお祭りのようじゃよ?」


「へぇ~…え?1()()()()()()()()()()()?つまり…パオっち達は…?」


僕がそうビーチェに問うと悪戯が成功したような笑みを浮かべるビーチェ


「ふふふ、妾は元気であったからのう。情報のやり取りはしておったのじゃ…ほれ…あそこ…見てみんす」


ビーチェが指を刺すその方向から、風の魔術を使って、1人の女性を抱きかかえてこちらへ向かってくる魔術師がいた。


「にー!シリュウっち!無事だったか!」

「ベアト!無事!?良かったわ…!」


「パオっち!リアナさん!」


パオっちとリアナさんの姿を見つけると、僕は思わず馬車から降りてパオっち達に駆け寄った。


パオっちは馬車の近くで着地して、リアナさんを優しく下ろした後、僕と抱き合った。


僕らは再会の喜びを全身で分かち合った。


「…シリュウっち…!おかえり!よくやったじゃもんね!」


「…パオっちこそ…無事で良かった…!早かったね…」


「オイラ達は海路だったからね。船も無事さ!全員無事に帰国したろん!」


「流石パオっち…あの状況から良く無事で…!」


「まぁ色々あったろん。皇都に帰ってゆっくり話そうんね!」


「ああ!」


そうして僕とパオっちは、乗っていた馬車を置き去りに、肩を組みながら皇都へ歩いた。


その横でビーチェとリアナさんも再会の喜びを分かち合っていた。



「ふふふ、妾の旦那様は大怪我人じゃろうに困ったもんじゃ」


「ベアト…!」


「リアナ…良く無事で…嬉しく思う…」


「私こそ…そっちも大変だったみたいね」


「本当にのう…危ないと思ったことも数度ではきくまい…」


「ふふ!まぁ無事で何よりだわ。私もベアトに話したい事いっぱいあるの!」


「では妾達も参ろう…ちょうど馬車に空きができた。リアナも乗るんじゃ」


「じゃあお言葉に甘えて…!」


そうして僕達は皇都へ向かう。


皇都の人達が紡ぐ花道を、歓声を浴びて、笑顔で手を振りながら歩く。



僕達は帰って来た!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


皇都に入り、更に大きな人に囲まれる僕達の馬車の列は、そのまま皇宮の広場まで凱旋パレードのように進んだ。


僕もパオっちも人々から大きな歓声を浴び、歩いていると握手をせがまれたり、贈り物をもらったりしたので、今は2人で馬車の上に座り、街の人々に手を振っている。


そして皇宮の広場に到着すると、そこには皇軍・陸軍・海軍の兵士達が規則正しくならんでおり、さらにはスーツ姿の文官達も同じように並んでいた。


そしてその列より更に前に居並ぶ人達の集団がある。


一つは豪奢な軍服に身を包む王家十一人衆の人達だ。


ブッフォン大将に、デルピエロ大将、ゾエさんの3大将とフランシス中将とファビオ中将、先行して帰還したレアさんとサンディ中将、マリオ少将も並んでいる。


あそこに並んでいないのは僕の隣にいるパオっちと、リタさんの護衛をしているアウレリオ准将だけだ。


そしてもう一つの集団は、スーツに身を包む貫禄のある大人達だ。


その中に商業大臣のアンブロジーニ侯爵の姿が見えたので、おそらく大臣たちなのだろう。


この国を支える要人達が一同に会していた。


そしてその集団よりも更に前に立っている人達


その身なりからはおそらく皇族なのだろうと推測できた。


その中心には()()フェルディナンド・フォン・リアビティの姿も見えた。


他にも僕が見たこともない女性や僕と同年代と思われる男子もいるが、その端っこにルナ姉ちゃんの姿が見えた。


そう言えばルナ姉ちゃんは僕の従姉妹にあたるんだっけ。


ほんとにお姉ちゃんになったから、これからもお姉ちゃんと呼ばないとね。


そして僕達の列の先頭が広場に入り、先頭の馬車に乗っていたリタさんが下車し、アウレリオ准将のエスコートで()()と相対する。


「ほっほ、リータよ。良くぞ無事に戻った!帝国で戦の知らせを聞いた時は飛び上がる程驚いたぞ!」


「ふふふ、お兄様、ありがとうございます。でも私にはシリュウ・ドラゴスピアという最強の武術師と、パオ・マルディーニという最高の魔術師と、アウレリオ・ブラン・ベラルディという最良の護衛が居ました。この者達なしでは、今私がここに立っている事実はありません」


「…!…ほっほ…それはそれは…()の人選に狂いはなかったのう!」


この凱旋の成功をあたかも自身の功績のように語る()()


「ええ、それにレア・ピンロ少将とサンディ・ネスターロ中将の援軍も見事でございました」


まるで皮肉るように言うリタさん


その援軍を潰した本人に意趣返しするように言う。


「なんの。皇国民の危機を救うも余の責務!大したことはしておるまい」


まるで援軍を自らが進んで送ったように言う。


しかし事実はサンディ中将が直訴したが、それを杞憂と一蹴したのだ。



サンディ中将の進言を退け、救援を送らなかった無慈悲


そして今その事実をなかったどころか、救援を送ったことを自身の功績のように語る厚顔無恥



その事実を踏まえて、僕は断じる。






こ い つ が 邪 魔 な の か





僕が次にやるべきことがはっきりした。






大陸の平和の前に、皇国の平和を成さねばならない。





リタさんをこの国の王にしなければならない。





そう決意し、今も意気揚々に笑うこの国の王を睨みつけた。







第4章 帝都繚乱、龍の退き口~ 完 






第5章 皇都は姦し、龍はおやすみ に続く




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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 今話はアレですね、ガンダ○で言うならばアム○がギレ○を「こいつが倒すべき敵」と認知したシーン・シャアの台詞的には「倒すべき真の敵」って存在を確定付けた回ですね。 首を飛ばすかくっ…
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