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第32話 ノースガルドに至る道⑦~『錦馬公』

烈歴98年6月17日(行軍3日目)  7時1分 シュバルツ帝国 田園都市 カルフ


カルフで1泊した僕達凱旋軍は、早々にカルフを出立し、ラインハルツハーゲンを目指した。


挿絵(By みてみん)


今日の行程の予定は、ラインハルツハーゲンに昼過ぎに到着し、そこで補給とラインハルト公と情報交換をした後にラインハルツ大橋を目指すのだ。


今日行軍するラインハルト領はほとんどが平野で、街道もきちんと整備されているため行軍の脚は早くなりそうだ。


今日中にラインハルツ大橋まで辿り着き、追手の影が見えなければ、逃走はほぼほぼ成功したものだろう。


それゆえに今日の行軍の出来は僕たちの運命を大きく左右すると言えた。


今日の陣形は1日目と同様の形に戻している。


前軍は、先導のヒルデガルド、第一特務部隊50名と第一艦隊の160名の計210名で指揮官はジーノ大尉


中央軍は 文官達約100名と皇軍50名で指揮官はアウレリオ准将 リタさんもここにいる。


後軍は、僕の第二特務部隊30名と第一艦隊の160名の計180名で指揮官は僕、ビーチェも隣にいる。


もし追手が着たら僕が指揮する後軍で対応する予定だ。


そんなことにならないといいけど。


「今日で3日目か……早ければ追手が来る計算だよね?」


「そうじゃな…ヴィルヘルムが妾達がこちらの方面へ進軍したことがバレるのは昨日じゃから、馬を最速で飛ばせば今日の夕方頃に追いつかれるが…あくまで最悪の事態じゃろう。そもそも貴重な騎馬隊を妾達の追撃に使うとも考えにくい。楽観はせぬが、可能性は低いと思うのじゃ」


「う~ん、流石にそうなったらやばいなぁ…なんとかラインハルツハーゲンでラインハルト公の協力を得られるといいのだけど…」


「ラインハルト公は義のお方とカルフで聞いたのじゃ。此度のヴィルヘルムの悪行は絶対に許しはしないそうじゃぞ?」


「おお。なら期待しようかな」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

烈歴98年6月17日(行軍3日目)  13時17分 シュバルツ帝国 ラインハルツハーゲン近郊


何回かの小休止を経て、凱旋軍はラインハルツハーゲンを目視で捉えるところまで軍を進めた。


ラインハルツハーゲンは、印象は白亜の都市といったところで、白い石壁でできた建物が規則正しく配置されていた。


特に印象的なのは、街の中心にある丘と言うには大きすぎ、山と言うには小さすぎる高台の上に築城された山城だ。


山城に至る道が正面の坂道しかなく、周りは断崖絶壁になっている。


「……凄いな…あの城…めちゃくちゃ攻めにくそうだぞ…」


「あれが鉄壁の『ラインハルツの城』…要塞としての機能もそうじゃが美しい城じゃのう……後世にまで残る文化遺産にもなろうて…」


「確かに……騎士と姫の物語に出てきそうなお城だね」


僕達がラインハルツハーゲンの美しさに見惚れていると、街から騎馬隊が出陣し、こちらに向かっていた。


あれはラインハルト公の軍かな?


見知らぬ一行が来たので確認のため出陣したのだろう。


「どうやらご対面のようだね。行こうか」


「うむ。噂のラインハルト公…どんな御仁じゃろうのう…」




ラインハルツハーゲンからざっと500程度の騎馬隊が僕たちの軍に近づいてきたので、凱旋軍は騎馬隊と向き合う形で停止した。


凱旋軍の先頭にはリタさん、アウレリオ准将、ヒルデガルドと僕とビーチェが並んで立っていて、ラインハルツハーゲン軍の責任者と相対していた。


軍の責任者は、アウレリオ准将と同い年ぐらいの青髪の青年で、大きな馬上槍を携えていた。


そうかあの人が『錦馬公』


「リアビティ皇国皇位継承権第1位のリータ・ブラン・リアビティよ。緊急事態につき、事前の通達なく領に進軍してごめんなさいね。交戦の意志はないわ。ただ通行の許可が欲しいだけ」


リタさんが青髪の青年に堂々と言う。


「なんの。事情は理解しております。私はこのラインハルツハーゲンの領主、オイゲン・ラインハルトの嫡男であるレオンハルト・ラインハルトです。以後お見知りおきを」


凛々しく自己紹介したレオンハルト・ラインハルト氏


その佇まいは堂々としたもので、彼の立ち姿から相当な武術師であることも見て取れた。


非常に大きな馬上槍を片手で、小さなナイフを扱うような軽快さで持っていることから相当な膂力の持ち主でもあるのだろう。


確かにこの人は十傑にも見劣りしない実力を持ってそうだ…本当に広いな…帝国は…


「ありがとう。このまま街で補給させてもらっても?」


「補給と言わず宿泊していただいても構いません」


「助かるわ。でももしかしたらヴィルヘルム軍の追手が来るかもしれないの。そこまで迷惑かけられないから必要最低限の補給だけしたらラインハルツ大橋を目指すわ」


「なんの。ヴィルヘルムの弱卒など我が槍の錆にしてくれましょうぞ。それに……父はもう行ってしまわれたので…今更でございます…」


苦笑いしながら言うレオンハルトさん


行ってしまわれた…?


「…まさか…ラインハルト公はすでに帝都に出陣なされたのか…?」


アウレリオ准将がレオンハルトさんに質問する。


「お見込みの通りです。ヴィルヘルム軍が帝都に来襲すると私達の間諜から聞き及んですぐ軍備を整え、総勢6万の兵を携えて帝都へ出陣されました。それが昨日のことでございます」


えぇ……行動力半端ねぇな…ラインハルト公…


「でも6万の兵の軍とは私達すれ違っていないわ」


リタさんが言う。


確かに、それほどの規模の軍とは会っていない。


「貴殿らはラインハルトの森から来たのでしょう?父は湿原を抜け、サタイディガン経由で帝都に向かいましたゆえ、すれ違わなかったのでしょう」


なるほどね 


大軍だからラインハルトの森を抜ける経路は選択できなかったのかな。


「なるほど、理解したわ。あなたも大変ね」


リタさんがレオンハルトさんを労う。


数言しか会話していないが、レオンハルトさんから苦労人の空気が漂っていた。


「…いや本当に……私も帝都に駆け付けたかったのですが……カチヤは無事でしたか…?」


レオンハルトさんが心配そうに聞く。


そう言えばこの人カチヤ将軍に片想いしているんだっけ


「カチヤ将軍なら無事でしたよ。というか僕達が出陣する直前に勝手に兵を出して、いち早く布陣していたような…」


僕がそう答えるとレオンハルトさんは大きな口を開けて笑う。


「あっはっはっは!彼女らしいな…!彼女なら死ぬことはないだろうが、彼女の珠のような肌に傷がつくのが心配でね…」


心配するところそこぉ?


というか負けることは心配していないんだな。


カチヤ将軍の強さを信じ切っているようで、レオンハルトさんとカチヤ将軍の深い絆を感じた。


「6万の兵が出ましたがこの街にはまだ5000近くの兵が残っております。ヴィルヘルム軍の追手が来ようものなら我が軍で迎撃いたします。安心して南下なされよ」


おお!これは助かる!


サンディ中将の読み通りだ!


「恩に着るわ。ではさっそく補給させてもらうわ。リオ」


「うむ。全軍進軍再開!」


アウレリオ准将の合図で凱旋軍は再び進軍した。


そしてラインハルツハーゲンで束の間の休息を取ったのであった。




ラインハルツハーゲンにて休息を取った後、早々にラインハルツ大橋を目指し進軍を再開した凱旋軍は、ラインハルツ大橋を日の入り直前で肉眼で捉えた。


ラインハルツ大橋は石造りの橋で、馬車10台は同時に通れそうなほど幅が広い橋だ。


橋が架かるライン川は、非常に水量も多い大きな川で、泳いで渡るには苦労しそうな川だ。


軍が通るならこの橋を通るしかないと思わせる程だ。


ラインハルツ大橋より少し離れた平野で、凱旋軍は野営をした。


いよいよ明日からは険しい山道に入り、行軍の山場に入る。


そしてそろそろ追手が来てもおかしくない日にもなっていた。


そのことを誰もが感じていたのか、この日は皆の口数が少なく、一部の夜番の者を残して、早々に眠った。




そして行軍4日目の6月18日



その日は奇しくも僕達の運命を決め、後に歴史に語られる凄まじい戦いの日となった。



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