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第13話 ベッケンバウアー


時刻は深夜 


妾はリータ殿下と2人で特別会議室に残り、たった2人で使用するには広すぎる会議机を挟んで向かい合っていた。


リータ殿下は着席しているが、妾は落ち着かないので立っている。


「さて、どこから話そうかしら…ベアトちゃんなら吹聴したりしないし、何話しても良いんだけど…」


リータ殿下は涙で赤くした目を擦りながら言う。


「では妾の推測を話しても?」


「いいわ。その方が話が早そうだわ」


「ありがとうございます。では単刀直入に…」


妾はシリュウと過ごした日々、リータ殿下との会話の記憶を逡巡し、一つの仮説に行き着いた。


「まず、18年前に、リータ殿下が国際学園より帰国した際にお連れになったルナ殿下は…レギウス・シュバルツ・ベッケンバウアーとのお子ですね?」


「!?……さすがね…僅かな私との会話からそこに行き着いたのね…」


「妾も1人の男性に生涯を捧げる乙女ですので。同じ乙女の気持ちがよく分かるのですよ」


「…はぁ…そんなに顔に出てたかしら?」


「それはもう、レギウス皇子のことを語るリータ殿下は恋する乙女そのものでしたので…」


「恥ずかしいわ…続きを」


「はい。国際学園でレギウス皇子と出会ったあなたはルナ殿下とゾラ・ベッケンバウアーの2人の子を儲けた。時期的に2人は双子なのでしょう。そしてあなたはシリュウの父の顔も知っていた。あなたが他国の人間と関われたのはこの国際学園の留学期間のみ…つまりあなたはこの時期にレギウス皇子とシリュウの父と知り合っている…同じベッケンバウアーの姓…つまり…」


「ご名答よ、シリュウちゃんの父、タラン・ベッケンバウアーの本名はタラン・シュバルツ・ベッケンバウアー、レギウスの弟でかつて帝国にいた四人目の皇位継承者よ。レギウスとタランの父は現皇帝よ…」


「…!?つ、つまり…シリュウは…」


「シリュウちゃんは非公式だけど、私の夫レギウスの弟の息子…つまり甥なのよ。ルナの従兄弟になるわ」


なんという…妾がかつてシリュウを高貴な身分ではないかと怪しんだが、こういうことだとは…


てっきりドラゴスピアの家系だからシリュウはエクトエンドで匿われていたと思っていた。


しかし違った。


シリュウは帝国の皇帝の血を引いている。


皇国の英雄の孫なんて肩書きすら温かった。


「シリュウのお父上はなぜに帝国から皇国へ?」


妾は動揺しつつも、リータ殿下に気になることを聞く。


「タランはね、コウロンの娘、マリアに一目惚れしてね。マリアが皇国に帰るのと同時に皇国に亡命したの。普通の夫婦として人生を歩むために…そこからは帝国からの追手を振り切るために身を隠したわ。私にも場所を教えないでね。そしてシリュウちゃんを授かって、トレスリーでは本名で生活していたから帝国の追手も振り切ったのかしら?」


「しかしトレスリーは灰になって消えた…」


「ここからは推測だけどね。おそらく最初の追っ手は現皇帝の差金よ。そのうち諦めたのでしょう。しかしタランの存在をよく思わない奴がいて、街ごと消し去ろうとした」


「…それが…トレスリーの悲劇の真実…」


「…推測よ?…でも私がシリュウちゃんに入れ込む理由がわかるかしら?シリュウちゃんは奇貨なのよ」


「…奇貨置くべし…」


「知的なベアトちゃんは話が早くて助かるわ。私が行き着くところも見えたかしら?」


「………シリュウを帝国の皇位継承争いに参加させて…皇帝の座を取らせる…」


「そうよ。私が皇国を取り、レギウスかシリュウちゃんが帝国を取る。そしてルナと結婚してもらって、子を儲けてもらう。生まれた子を帝国と皇国を合併させた超大国の初代皇帝にするのよ。帝国と皇国が一つになれば、王国も帰順せざるをえない。これが今の私が描く大陸統一よ」


なんという気が遠くなる話


妾はシリュウと夫婦になれてそれで幸せだったが、シリュウを巻き込む運命は妾など簡単に飲み込んでしまう。


皇国の一領主の娘などなんと軽いことか


妾はシリュウと歩む人生は許されないのか


妾は目の前が真っ暗になったような感覚に陥り、その場で膝をついた。


ビーチェがシリュウの生まれを怪しんでいたのはEP15【閑話】ビーチェの気づき、謎の商家、淡い希望的観測 の話の中です。

良ければ見返してみてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 シリュウの出自ありきの話とはいえ、こりゃまた随分デカい風呂敷を広げましたなぁリータさん。 しかしシリュウは絶対イエスと言わないですね…ビーチェをないがしろにする未来を…
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