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第3話 シリュウ小隊の3隊長


僕が皇妹派に入るメリットを提示したリタさん



「私の力のすべてを持って、あなたを王家十一人衆に加えるわ」



僕が王家十一人衆に…?


まだ海軍に入って間もないのに、いきなり皇国軍の最高幹部に入るなんて…























なんて面倒くさい
























「……いや…結構です……」


僕がやんわりと断る。


「なんでよ!?軍人にとっては最高の栄誉じゃないの!?」


驚きながら僕に詰め寄るリタさん


近い近い


「いやぁ…僕はまだ軍に入ったひよっ子ですよ?…まだ自分の部隊も指揮しきれていないのに王家十一人衆なんて無理無理です……」


「むぅ!良い案だと思ったのに!」


ほっぺを膨らませて不満を述べるリタさん


それを諫めるのはアウレリオ准将


「それはリタにとってだろう?シリュウ准将が王家十一人衆に入れば、円卓会議で1票が手に入るからな。打算も入っているだろう」


「それはそうだけど…でもベアトちゃんもシリュウちゃんが王家十一人衆に入って欲しいと思わない?旦那様が王家十一人衆なんてこれ以上ない名誉だと思うけど…」


「わ、妾ですか…?それはもう…シリュウが王家十一人衆に入るなんて、これほど嬉しいものはありんせん……」


お?


そうなの?


ビーチェがそんな風に思ってくれるなら王家十一人衆に入ってもいいかな


「ビーチェがそう言うなら…」


僕がそう答えようとすると、ビーチェが手で制した。


「いや、シリュウの本意ではないことを妾の意向で進めるわけにはいかぬ」


そしてリタさんに向き直るビーチェ



「シリュウが心から王家十一人衆に入ることを望むのであれば、リータ殿下にお力添えよろしくお願いいたします」


「もちろんよ。その時は全力を尽くすわ」


そう言って、この話は終わる。



少し伸びをしてリタさんは言った。


「じゃあ今はこんなところね。明後日の6月4日に王都を出立するからそれまでゆっくりしてちょうだい。パオ少将も明日は休暇にするから、海軍は今日と明日は休養してちょうだい。自由行動を許可するわ。ジョルジュ・キエリ大佐にも伝えてあるわ」


「王宮内の護衛は皇軍だけで十分務まるだろう。緊急の事態も皇軍に言うようにしてくれ。我らが預かる。海軍はむしろ航海の時に頑張ってもらっているから、こういう時に英気を養うといい」


そう言って休養を勧めるリタさんとアウレリオ准将


「ありがとうございます。せっかくなのでビーチェと王都でも見てこようかと思います」


「うんうん!デートしていらっしゃい。婚前旅行みたいなものね」


「ありがとうございます。では失礼します」


「失礼いたします」



リタさんとアウレリオ准将に頭を下げて、退室する僕ら





リタさん達は皇妹派の交渉でこの二日間は大忙しだろう。


せめて海上ではゆっくりしてもらえるように、今の内に海軍の僕らは英気を養わせてもらおうかな。


「じゃあビーチェ、ダニエル中尉に僕らの部隊の待機命令の解除を伝えて、王都に行こうか」


「うむ!シリュウとデートなど久しぶりじゃ!最近は忙しかったからのう!」


「ははは、確かに。パオっちとリアナさんのアレ以来だから3週間ぶりくらいかな?」


「せめて週に一度は、シリュウとのんびりしたいものじゃ」


「違いない」


僕らは他愛もないことを話しながら、ダニエル中尉が滞在している客室へ向かった。







客室にはダニエル中尉の他に、僕が率いる第二特務部隊(通称シリュウ隊)の小隊長が2人いた。


「シリュウ准将!どうされましたか?」


この真面目そうな青年はダニエル中尉


この第二特務部隊の第一小隊長兼隊長代理で、僕の左腕と言ってもいい人だ。

(右腕はビーチェ)



僕の部隊のあらゆる窓口になってくれるし、まだ20代ながらも軍の経験も豊富で、新進気鋭の将校だ。


そんな凄い人だが、僕が准将として入隊するにあたり、僕の海軍における教育係も兼ねて、ゾエさんが自ら抜擢したらしい。


結構凄い人なんだけど、本人はそうは思っていないのか、辞令交付の時は『なんで俺如きにわざわざゾエ・ブロッタ大将が声を掛けてくるんだ…クビ…?』とビビりまくっていたらしい。


「どうも!大将!」


この快活に声を掛けてくれているのが、シモン・オッド少尉


僕の就任に伴い、僕が率いる第二特務部隊が創設されることが海軍内で周知された際には、公募前にもかかわらず、僕の部隊に入ることを一番最初に志願してくれた将校だ。


どうやらインペリオバレーナとキングバレーナの討伐の際に随行していたらしく、僕の武を直接見ていたらしい。


その戦闘を見て、僕の部隊で働きたいと志願してくれたのだ。


僕自身、僕の武術で憧れられるという経験はあまりなかったので、シモン少尉の憧れの眼差しはいまだにくすぐったい。


でも悪い気はしないので、暇さえあればシモン少尉と打ち合いをしていた。


シモン少尉は中々の武術師で、僕とビーチェを除けば、この部隊で一番の使い手だった。


ビーチェとシモン少尉の打ち合いは見たことがないが、ビーチェは帝国十傑のヒルデガルドに一撃を入れたから、ビーチェの方がまだまだ強いだろう。


しかしシモン少尉はかなりの努力家だから、これから先はわからない。


とても将来が楽しみな将校である。


「……お、おはようございます…!」


そしてこの眼鏡を掛けた大人しい女性はアンジェラ・トーニ少尉


パオっちとリアナさんとの軍学校の同期らしく、若手の中でもかなりの出世株の将校だ。


アンジェラ少尉は魔術師で、ゾエ大将に憧れて海軍に入隊したらしい。


そういえばリアナさんも似たようなことを言っていたからこれくらいの年代の女性は皆ゾエ大将に憧れているんだろうか。


ただアンジェラ少尉は、どうやらビーチェに惹かれてこの部隊への入隊を志願したらしい。


曰く『5年前に旅行でサザンガルドに行ったときに、武術大会を見たのです。14歳の少女が次々に年上の少年を負かして、優勝したので、当時まだまだ男社会の軍で苦労していた私には衝撃でした……そんなサザンガルドの剣闘姫と一緒の部隊に入れるなんて…!是が非でも入れてもらえるようフランシス中将に直談判しました…!』とのこと


普段は大人しいが、好きなものに対するスイッチが入るととても情熱的になる人だった。


そしてアンジェラ少尉は何より頭脳明晰な人でだったから、良くビーチェとともに事務仕事を捌いてくれている貴重な知識人でもあるのだ。


「シモン少尉もアンジェラ少尉もいたんだね。ちょうどよかった。リータ殿下から本日と明日の休養をいただいたから、部隊の待機命令を解除するね。今日と明日は自由行動を許可するよ。僕らも王都とかに観光しに行くから」


「ほ、ほんとですか!?」

「やりぃ!リータ殿下は太っ腹だなぁ!」

「お、王都を歩ける…!?」


三者三様の反応だが、驚きは共通しているなぁ。


「このような自由行動を認められるのは珍しいのかや?」


ビーチェが3人に聞く。


「それはもう!他国に来ることは珍しくありませんが、ほとんどが宿か船で待機です。出歩くことの許可が下りるのは任務に付随した時くらいですね」


最初に答えたのはダニエル中尉だ。


「そうですぜ!ましてや国の首都に来るなんて機会ありゃしませんし!嫁に土産でも買って帰ろー!」


シモン少尉が奥さんへのお土産に何を買うか思案している。


同郷の幼馴染の奥さんだっけ


とても仲がいいらしい。


「……軍人が街を歩くと問題を起こすなんて文官からはよく言われますからね…それでも自由行動を許可してくれるなんてリータ殿下は寛容なお方です…」


アンジェラ少尉が愚痴りながらも、リタさんに好意的なことを言う。


今回のような自由行動を許可するのは珍しいのか


そう不思議に思っていると、ビーチェが耳打ちしてくる。


「どうやら軍の取り込みの一環じゃな。将校や兵士にも好意的に思われるようにして、皇妹派の勢力拡大に資するようにしてるんじゃろ。それに王家とも友好関係じゃからな。問題なかろうとの判断じゃ」


なるほどね


こういうところでも勢力拡大はしっかりとやっているのか


リタさんは、抜け目がないなぁ


「まぁ、そう言うことだから緊急の事態があれば、皇軍に言うように」


「こ、皇軍ですか!?」


驚くダニエル中尉


「ん?そうだよ。アウレリオ准将にも許可をもらっているよ。この2日間の緊急事態は皇軍で預かるってさ」


「あ、あのアウレリオ准将が…?そんな海軍を気遣うようなことを?」


アンジェラ少尉も信じられないように言う。


アウレリオ准将 普段からどんだけ嫌われるような行動をしているんだ。


演技とはいえども凄いな。



あまりに可哀そうだったので、フォローしておく。


「まぁアウレリオ准将と僕は仲がいいからね。あと噂ほど悪い人じゃないよ。今回の件もアウレリオ准将から言ってくれたしね。ここはお言葉に甘えよう」


「あのアウレリオ准将と仲がいいなんてさすがシリュウ准将!」


シモン少尉がそう言うが、凄いのはアウレリオ准将なんだけどね。


まぁこの遠征が終わったら、アウレリオ准将はあの仮面は外すだろう。


本当のアウレリオ准将を見たら皆驚くだろうな。


特にレアさんとか


「ということで、各自自由行動!何個かだけ命令しておくと、人様の迷惑になるようなことはしてはだめ!門限順守!外泊禁止!それだけ守ってね」


「「「はっ!」」」



ということで、僕もビーチェとのデートとしゃれこもう。




リアナ「それにしても王都って本当に不思議よね。湖の上に立っているなんて」


パオ「にー。ここは魔力濃度が半端じゃないろん。流石魔術大国の首都って感じだおろろん」


リアナ「…魔力…濃度…?」


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