第2話 王国での成果
少し多忙にして更新できませんでした。今日から頑張ります!
アウレリオ准将が師事していたという謎の老人は、じいちゃんに偶に会いに来ていたヤン・タイガン老師だと思った僕は、ヤン・タイガン老師の発言を思い返していた。
「うーん、人違いかもしれませんが『孫の成長を見るのが生き甲斐じゃ!』と言ってたので…」
「孫…!?……まさかあの老人は……私の…祖父なのか?」
僕の発言に驚きつつもどこか納得したような顔をするアウレリオ准将
「あんたの父はベラルディ公爵なんでしょ?なら祖父ならレジーナの父でしかないわね」
リタさんがアウレリオ准将に確認するように言う。
「だろうな……しかし急ぐ話でもないので、皇国に帰ってから母に聞くとする。今はこの外交使節団の護衛任務に専念するとしよう」
そう言って、この話を切るアウレリオ准将
「それもそうね。シリュウちゃん達に今回の王国での交渉の進捗を共有しておきたいし」
「進捗ですか?何か進展でもありましたかや?」
ビーチェがリタさんに聞く。
こういう頭を使う案件はビーチェの領分なので、僕は任せている。
僕はリタさんとアウレリオ准将に対して、ビーチェに向けて両の掌を向けて、「任せています」と身振りをした。
「昨日の襲撃から今日の午前中まで結構動きがあったわ。まずボナパルト王家は私達皇妹派に全面協力ね。同盟の類の中で最も強固な軍事同盟の締結までできたわ。それに付随してボナパルト王家に臣従しているプラティニ家とも同様の内容での軍事同盟の締結をするわ。今はサルトリオ侯爵の腹心達がボナパルト王家とプラティニ家との同盟内容の調整を行っているわ」
「おお!王家と四大公爵家の1つと軍事同盟とは大戦果ではございませぬか!」
ビーチェが驚きながらも、感動したように言う。
「そうなのよ。これもシリュウちゃん、リオ、マルディーニ少将のおかげね。この3人の力を目の当たりにした王家とプラティニ家は私達の勢力をかなり評価してくれているわ」
リタさんはニコニコ笑いながら、交渉の戦果を噛みしめている。
「我ら皇妹派は、財力はあったが、権力と武力は今一つだった。そこにシリュウ准将とマルディーニ少将が一時的にでも皇妹派のように見えたので、一定の勢力だと判断されたのだろう」
アウレリオ准将が補足するように言う。
なるほど
「交渉って頭を使うものかと思ったのですけど、武力も結構重要なんですね」
僕が思ったことを率直に言うと、リタさんが温かい顔で笑っていた。
「うふふふ!そうなのよ!私達もあまりの交渉のやり易さに驚いているの。威力外交って楽しいわね!」
そう言って、怪しい笑みを浮かべるリタさん
おう……この人…力を持ってはいけないタイプの人では……?
「やめろ、リタ。純朴なシリュウ准将に変な価値観を植え付けるな」
アウレリオ准将がリタさんを注意する。
ほんとこの人まともだな。
「ちぇっ、話を戻すけど、その他の公爵家との交渉も継続中よ。ポアンカレ家は昨日マルディーニ少将とフォッサ少尉で訪問予定だったけど、あの事があったからすっぽかしちゃったから今日の朝から行ってもらっているわ」
そうだった。
パオっちはプスキニアとベタンクール都督の魔力を感知して、襲撃現場に救援に来てくれたのだ。
「じゃあポアンカレ家は相当怒っているのでは?約束をしておいて、訪問しなかったとは、華族社会ではご法度では…」
ビーチェが心配そうに言う。
まぁ親しい間柄でもやってはいけないことだ。
ましてや初対面の公爵家相手にそんなことをしでかしておいて、再度訪問とはパオっちは気にしなさそうだけども、心労でリアナさんの胃に穴が空くのでは?
「それがね~そうでもないみたい。訪問できなかった理由を『御家の目の前まで訪問しましたが、マルディーニ少将が王城にて巨大な魔力を感知して、皇妹殿下の身に危険が迫っていると思い、すぐに馳せ参じた。結果ベタンクール都督が王城内の秘密演習場で魔術の鍛錬をしていた』ということにして、すぐに使者を送って、謝罪に行かせたのよ」
タレイラン公爵家のプスキニアと帝国十傑の襲撃は非公表にしているからそういう説明になるのか。
「そうしたら、ポアンカレ家の反応が『わ、我が家から王城までの距離で、魔力反応を感知だと!?それも巨大とわかるほどの感知力ぅ!?すっぽかしたことなどどうでもいい!いつ!?いつマルディーニ少将は来てくれるのだぁ!?』だって」
なんという魔術バカ…ポアンカレ家……それでいいのか…
ポアンカレ家の反応にビーチェもアウレリオ准将も苦笑いだ。
「まぁそんなことでマルディーニ少将とフォッサ少尉は朝からポアンカレ家に行ってもらっているわ」
「パオっち大丈夫ですかね?解剖なんてされないといいですけど」
「………なまじ否定できないのが怖いところね…」
おいおいおいおい
大丈夫か…人体実験とかしないよな……
僕が心配そうな顔をしていると、ビーチェが笑いながら安心させるように言う。
「大丈夫じゃよ。ポアンカレ家の魔術研究に暗い話は聞きやせん。むしろ人体実験の禁止や近親者の結婚制度の廃止を訴えており、魔術師の人権擁護に一番熱心じゃよ」
「へぇ…魔術の研究をしている家って物語とかでは残酷非道に描かれていることが多いから、意外だね」
「ポアンカレ家は良くも悪くも魔術と魔術師に対して純粋な想いで研究しているようじゃの。反対に暗い話が絶えないのが、タレイランとピケティじゃな。どちらも至高派じゃよ」
この王国を2分している思想
『魔術師こそが至高で魔術の才を持たないものとは一線を画する存在だ』との考えである『至高派』
『魔術師もそうでない人も共に生きていることで国は発展する』という考えの『共生派』
ボナパルト王家とプラティニ家が『共生派』
タレイランとピケティが『至高派』
そしてポアンカレ家はそのどちらでもない『中立派』
王国の勢力は思想によって分かれている。
「とりあえずポアンカレ家はもうマルディーニ少将とフォッサ少尉に一任しているわ。魔術師には魔術師ね。私達の出る幕はなさそう。そしてピケティにはサルトリオ侯爵自ら出向いてもらっているわ」
外交大臣のでリタさんの腹心(表向きは皇王派)のサルトリオ侯爵自らか
ピケティは王国の経済を牛耳る存在であり、パオっちとリアナさん曰く『守銭奴』のような勢力
「ピケティの領地は王国の南から東に掛けての位置にある。皇国とは接していないから、さほど影響力はない」
そう断言するアウレリオ准将
「そうなんです?王国の地理がわかっていなくて…」
僕がそう言うと、アウレリオ准将が簡略的な王国の地図を持ってきてくれた。
「これが王国の概略図だ。皇国と戦線を挟んで、接しているのはボナパルト王家とプラティニ家とタレイラン家だ。特にタレイランは皇国の最終防衛ラインである『スクード砦』に非常に近い位置にあり、皇国との前線でも最も活発に攻勢をしかけてくる厄介な勢力だ。しかし今回はボナパルト王家とプラティニ家とも友誼を結べたから今後の軍事戦略は立てやすくなるだろう」
僕は見慣れない王国の地図をまじまじと見た。
というか海軍准将なのに他国の地理に疎いって致命的じゃない?
自分の不勉強を恥じるばかりだ。
そして恥の上塗りをする。
「……この王国戦線というのは…?」
恐る恐る聞くとビーチェが教えてくれた。
「要は国境の境で揉めているところじゃよ。お互いにこの地域は自国だと言い張って、軍を送っては治安維持の名目にこの地域の街や村、砦を取り合っているのじゃ。休戦条約はあくまで大規模な侵攻を禁じているに過ぎず、日々この戦線地域にて皇国と王国、そして帝国との武力衝突が起きているのじゃよ。戦線はほとんどが陸じゃが、海域にもそのような前線があり、そこでは海軍が日々戦っているんじゃな。まぁ陸に比べれば可愛いもんじゃが」
べ、勉強になります……
知らなかったが、僕は地図をじっと見てみる。
ふーむ、なるほど
「こう見ると、タレイランさえ押さえれば、王国との戦線はほぼ安心じゃない?」
僕が素人なりに意見を出してみる。
「その通りよ、シリュウちゃん。だから今回の交渉はほぼ満点、ポアンカレとピケティとの交渉はボーナスみたいなものよ。後は大々的にボナパルト王家及びプラティニ家との友好振りを喧伝して帰るだけなの。あと皇国にもボナパルト王家とプラティニ家と私が懇意にしていることをアピールすることで、皇王派との勢力争いはだいぶ盛り返せるわ」
「そして王国との戦線を安寧に導いたことで、サザンガルド領邦軍と陸軍からは好意的に受け止められるだろう。これを材料にサザンガルドと陸軍にも皇妹派になってもらえるよう交渉するつもりなのだ」
ほう…
僕達だけでなくサザンガルドも取り込むのか。
「もちろんシリュウちゃんとベアトちゃんが私達についてくれたら話は早いんだけどね?」
皇妹派への加入
リタさんからはこの遠征の終わりまでに答えが欲しいと言われていた。
「……急な話であるが、私としてもやはりシリュウ准将、ベアトリーチェと仲間になれれば心強い。ぜひ前向きに考えて欲しい」
「あ、ありがとうございます」
「ア、アウレリオ准将からそのようなお言葉…感謝いたします…」
アウレリオ准将からの誉め言葉に恐縮する僕とビーチェ
「それにシリュウちゃんが皇妹派になってくれるなら、1つご褒美を上げるわ」
ん?
何だろう
僕が欲しいものなんてそんなにないんだけどなぁ
僕が心当たりのないご褒美を考えていると、リタさんが満面の笑みで提案をする。
「私の力のすべてを持って、あなたを王家十一人衆に加えるわ」
リアナ「あわあわあわ……他国の大貴族の予定すっぽかしちゃったぁ……お腹痛い…」
パオ「にー?どこが痛いろん…?…さすってあげるにー」
リアナ「……ここよ……ここ…そう…もう少し下ね……」




