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第1話 アウレリオの強さの秘密

烈歴98年 6月2日 アルジェント王国 ボナパルト王城


このボナパルト王城は王都ルクスルの最上層地域にあり、更に僕がいるこの客室は王城の中でも高層に位置しているため、窓からは王都と王都を囲む湖が一望できた。


時刻はもう昼過ぎであるが、昨日の騒動の後始末や怪我の治療をしていて、眠りについたのは深夜過ぎだったため、僕達は目が覚めたばかりだ。


昨日戦った帝国のエゴンは凄まじい強敵だった。


紙一重の回避を続け、相手の隙を突き、一撃を加えることができ、辛くも勝利した。


相手は帝国で最も優れている10人の武術師 


十傑の名を冠する『紅熊』エゴン・レヴァンドフスキ


その名に恥じない強者だった。


おそらくエクトエンドを旅立つ前の僕なら容赦なくあの戦斧の錆にされていただろう。


エクトエンドを旅立ち、サザンガルド、セイトでの経験を経て、沢山の強者と出会ったからこそ、僕はこの短期間で自覚できるほど強くなっている。


人との出会いにより、人は強くなれるのだと、じいちゃんやサトリの爺さんがよく言っていたことを実感していた。



「……うみゅ……いまは…何時かや……?」


エクトエンドからの旅立ちで最も僕を強くしてくれた肩にかかるまでの金髪をした男性の目も女性の目も釘付けにするスタイルを持つ寝巻き姿の僕の奥さんは寝惚けながら、僕に今の時間を聞いた。


そんな奥さんの姿があまりにも愛らしくて、僕は抱きしめながら答えた。


「おはよう、ビーチェ。もうすぐ太陽がてっぺんに来る頃かな」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


昨日の戦闘で疲弊していたビーチェとエゴンの重い一撃を喰らった僕は今日一日中は室内で安静するようにとリタさんから申しつけられていた。


しかし僕のダメージはもう回復しているし、ビーチェも切り傷ばかりだったため、普通に行動はできるようだ。


なので僕たちは客室に運ばれた朝食(兼昼食)を食べた後、リタさんが滞在している部屋へ赴いた。


「おはようございまーす」

「参上が遅れましたことをお詫び申し上げます」


昼過ぎの重役出勤にも関わらず悪びれもしない旦那


開口一番謝罪をしながら頭を下げる妻


うむ


バランスの取れた夫婦だな(震え声)


リタさんの部屋にはアウレリオ准将がいた。



「あら?シリュウちゃんに、ベアトちゃんじゃない?今日はオフでいいのよ?」


「まぁ、僕もビーチェも昼まで寝ていて回復して問題ないので、とりあえず顔を出しに来ました」


「妾も昨日の戦闘は傷よりも疲労の方が強く…ゆっくりさせていただいたおかげで大丈夫ですじゃ」


「十傑2人と戦って昼まで寝たら大丈夫とは…!つくづく規格外の夫婦だな…」


呆れながら言うはアウレリオ准将



「いやいや…というか同じく十傑と戦った、なおかつ勝ったアウレリオ准将は普通に護衛に戻ってるじゃないですか…」


僕が若干抗議めいたようにアウレリオ准将に言う。


「私はベアトリーチェとの共闘だったからな。それにベアトリーチェのおかげでヒルデガルトは手負の状態だった。単騎で、なおかつより序列上位のエゴンを抑えたシリュウ准将に比べれば、そこまででもないさ」


アウレリオ准将は謙虚に言う。


「…………普段のアウレリオ准将とは人格が違いすぎて妾には違和感が凄い…」


ビーチェは、鳥肌が立ったのか自分の肩を抱きながら引き攣った顔で言う。


そう言えばこの人、ベラルディ公爵に従順なフリをするため、普段は居丈高に振る舞っているんだっけ


僕はこのナイスガイなアウレリオ准将しか知らないからなぁ


「いや私も気になってるのよ。リオはやる奴とは思っていたけど手負とはいえあのヒルデガルドを受け一方的に抑えたじゃない?なんでそんなに強いの?」


この中では1番付き合いが深いであろうリタさんでさえ不思議がっている。


「いやはや、見事な徒手格闘術でした。どこかで見たような不思議な武術じゃったが…」


ビーチェもアウレリオ准将の実力を褒め称えるもその詳細まではわかっていないようだ。


でも僕はビーチェから聞いたその時の状況からアウレリオ准将が見せた武術に心当たりがあった。


「ビーチェからその時の様子を聞きましたが、掌底は東方大陸で盛んな『拳法』ですね?それとあの抑え込みは東方大陸のさらに東、極東の国の『柔術』じゃないかな」


「……!」


僕の推測はどうやら正解のようで、アウレリオ准将は小さく驚いていた。


「流石はシリュウ准将、詳しいな。この大陸で拳法や柔術を扱う者などほとんどいないのに」


「じいちゃんにある程度仕込まれてますから。僕も無手の時の格闘術はある程度使えますよ」


「シリュウちゃん…無手でも強いの?…ますます敵なしね」


リタさんがジト目で僕を見る。


やだなぁ、そんな化け物を見る目で見ないでください。


「いやいや、まだまだですって。にしてもそんな珍しい武術をアウレリオ准将はどこで?」


リタさんの視線を躱しつつ、アウレリオ准将に質問する。



「あ〜いや、隠す訳ではないんだが…謎の老人に師事してな…」


謎の老人?


なんだそれ


「リオ、真面目に答えなさい」


「大真面目さ…私が公爵家の人間として育てられてから間もない時だった。公爵家の庭で武術の自主鍛錬をしていると、庭から東方大陸で着られるような武術着を着た老人が現れて、『お主に力を授けよう!』と言ってきてな…最初は不審者だから逃げたり、無視していたんだが、その老人の身のこなしは確かに凄かったのだ。自然とその老人の指導を受けるようになって、この力を身に付けたのだ。その老人は不定期に現れては指導してまたしばらく経って現れるのを繰り返していたな。最後に会ったのは2年程前だが……」


ん?


謎の老人…?


アウレリオ准将の奇怪な説明にリタさんはお怒りでビーチェは疑惑の目を向けている。


「…うそでしょ?あんた私に嘘ついたから減給ね」


「…アウレリオ准将…妾もそんな子どもの絵本のような話は…」


「まぁ、普通は信じられないと思うから私は気にしないが、減給だけはやめてくれ。母への仕送りに関わる」


相変わらず母親第一主義のアウレリオ准将


しかし拳法と柔術の徒手格闘術を教えられる老人か…


僕は心当たりがあったので、アウレリオ准将に問うた。


「アウレリオ准将、その老人で僕より小柄で頭頂部だけ禿げていて、帽子で頭部を隠しているような老人ではないですか?」


「な!?し、知っているのか!?そ、その通りだが…」


僕の質問に驚くアウレリオ准将


やはりか…


「シリュウはその老人に心当たりがあるのかや?」


ビーチェが首を傾げながら僕に聞く。かわいい



「うん、おそらくじいちゃんの古い友人のヤン・タイガン老師じゃないかな。じいちゃんを何度か訪ねてきたことがあるよ」


「ヤン・タイガン…その老人とは10年以上の付き合いだが、初めて名を知ったぞ…」


相変わらず驚きを隠せないアウレリオ准将


それもそうか


長年謎だったの人物の名前を知ったから


「僕も最後に会ったのは2年程前ですね。一緒にご飯を食べて色々話をしましたが…一つ引っかかることが…」


僕は考えるそぶりを見せながら言う。


「何だろうか?遠慮なく聞かせて欲しい」


アウレリオ准将が促す。





「うーん、人違いかもしれませんが『孫の成長を見るのが生き甲斐じゃ!』と言ってたので…」



ビーチェ「アウレリオ准将の父はベラルディ公爵じゃろ?」


シリュウ「母方の祖父母は誰なんだろうね」

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