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最終話 優しい覇王


エゴンを背負って、リタさん達のところへ戻っていると、どうやらそっちの戦闘も終わっているようだった。


アウレリオ准将がヒルデガルドを押さえていて、リタさんとシャルル王も無事だ。


そしてビーチェもところどころ、斬りつけられているが大きな怪我はなさそうだ…


良かったぁ……


「シ、シリュウ…!」


「ビーチェー!」


僕はエゴンをその辺に投げ捨てて、駆け寄ってくるビーチェを抱きしめた。


「良かった…無事で本当に良かった…」


「妾は無事じゃよ……それにシリュウも十傑を単騎で倒すなんてさすがじゃのう…」


「……いやこいつ強かったよ…死合った中では、今までで一番の強敵だった…ビーチェもあの女性相手に良く戦えたね」


「シリュウの稽古のおかげじゃよ。ほれ、みんなが待っておる。共に行こうぞ」


そう言うビーチェに手を引かれ、リタさん達のところへ向かう。


おっと、捨てたエゴンを拾わないと。


戦利品だからね。



そしてリタさん達のところへ戻る僕ら


「リタさん、こいつ倒してきましたよ。それもちゃんと生け捕りです」


僕は乱雑にエゴンを投げ捨てる。


「さっすが私のシリュウちゃん!……にしても何でこいつこんなに顔が腫れているの?」


「気絶させるために、僕が何度も顔を地面に打ちつけたからですね。中々頑丈だから時間かかりましたよ」


「………シリュウ准将って、少年の顔して、時にやばいことするよね?怖すぎるんだけど…」


「やだなぁ、ベタンクール都督、そんなに大したことはしていませんよ」


「……ベタンクール都督、これがシリュウなのです……ご承知おきください…」


「そ、そうする……」


何故かドン引きしているベタンクール都督


解せぬ。


そしてもう一人の捕虜、ヒルデガルドは戦意を喪失しているのかずっと俯いて、何も言わずにいた。


ビーチェを斬りつけたらしいから、僕の槍の錆にしてやろうとも思ったけど、あまりに脱力しているため、そういう気も起きなかった。


そうしていると、空から聞き覚えのある声が……


「シリュウっちー!」

「きゃあああ!!!」


パオっちとリアナさん!?


なんで空から降ってくるの?


僕らの疑問もどこ吹く風か、リアナさんをお姫様抱っこしながら華麗に着地を決めるパオっち


「ありゃりゃりゃ…もう戦闘は終わっちまったかい…?加勢に来たつもりだったろんねー」


「マルディーニ少将…なぜここがわかったのかい?」


ベタンクール都督がパオっちに聞く。


それもそうだ。


ここは王家秘密の場所のはず。


「ポアンカレ家に向かっている途中で、巨大な魔力の反応を感じたぬん。それも複数のね。だからどこかで大きな戦闘が行われていると思って、風の魔術を使って空から場所を探したろんよ。そしたら氷の塔みたいなのを見つけて、ここに来たってわけじゃもんね」


「急にパオが悪い予感がするって言ってここまで来ました…こんなことになっているなんて…」


リアナさんはパオっちの勘に連れられて来たのか。


それはそれで大変だったな。


「ポ、ポアンカレ家から魔力反応を探知!?王城近くとはいえ、ここからは相当な距離があるぞ!?」


パオっちの発言に驚いているのはシャルル王


「……どうやら十傑を倒すシリュウ准将とベラルディ准将の他にも傑物がいるのか…皇国の人材の質どうなっているのさ?はっはっは、笑うしかないね!」


ベタンクール都督はもう考えることを諦めたかのように笑う。


まぁ僕はともかくパオっちはすごいから仕方がないか。


それにしてもアウレリオ准将がヒルデガルドを抑え込むなんて想定外だ。


この人こんなに強かったのか…


そんな素振りも見せなかったから、僕は内心かなり驚いている。


後で戦闘の詳細を聞いておこう。


ベタンクール都督が一頻り笑ったところで、シャルル王とベタンクール都督が僕達に向き合う。


「……改めて皇国の方々に最大限の感謝を申し上げる…!命を助けていただき、本当にありがとう!」


そう言ってシャルル王とベタンクール都督が腰を90度に折り曲げるほど頭を下げる。


「リータ殿下、私ができることなら何でもお礼を差し上げたい」


シャルル王がリタさんに打診する。


「そう?まぁ今回は貸し九つくらいかしら?」


ふっかけすぎである。


さすがに貸し多すぎるだろ。


「ははは、でもそれくらいの価値はある戦闘でした。王の命は守られ、帝国の十傑2人を捕虜にするなんて大戦果です」


ベタンクール都督が渇いたように笑うが、違うな。


あれは強がりだ。


ほら、冷や汗を搔いている。


リタさんからどんなことを吹っ掛けられるか怯えているようだ。


「…まぁ今回のことは事故みたいなことだし、この事件の収め方を私に任せてもらおうかしら?」


「…というと?」


シャルル王がリタさんに聞く。


「まずこの事件はなかったことにするわ」


「「「「は!?」」」」


素っ頓狂な声を出すのはシャルル王と僕とビーチェとリアナさん


パオっちは興味がないのかぼけ~っとしている。


ベタンクール都督は爆笑しているし、アウレリオ准将は予想がついていたのか、またこいつは…みたいな顔をしている。


「はっはっは!なるほど!これは中々の策士だ!」


「どういうことだ?リクソン」


合点がいっているベタンクール都督に尋ねるシャルル王


「簡単なことですよ。リータ殿下はこの後帝国に参られる。こいつらはその時の()()()()()つもりですよ」


「あら?流石ね、ベタンクール都督、この2人の身柄は貰っていくわ」


「いやいやこれは思っていても中々できないことでしょう。豪胆な方だ。大方こいつらが第二皇子の子飼いの将ということも知っているんでしょう?」


「もちろんよ。じゃないと皇帝と交渉できないじゃない?」


「いやはや…ただの皇妹にしてはもったいない…あなたはこの大陸の覇王にでもなられるのか?」


「あら?『汝は覇王なりや?』ね。古い逸話を持ち出してくるじゃない」


ベタンクール都督とリタさんの会話に少しついて行けないが、聞きなれない言葉があった。


「ビーチェ、『汝は覇王なりや?』って何?」


「その昔第一次烈国大戦の皮切りになった言葉じゃよ。それまで恒久の不戦条約を結んでいた帝国、王国、皇国の3国じゃったが、帝国の皇帝が大陸に覇を唱えるため、軍事拡張を始めたのじゃ。その軍事拡張を危惧して、時のアルジェント王が国際会議の際に、帝国の皇帝へ放った一言じゃな」


「へぇ…その時の皇帝は何て返したの?」


「『是非もなし』じゃ。それが間接的な宣戦布告とされ、そこから100年に亘る大戦が始まったのじゃよ…」


それが烈国大戦の始まり


現代まで続く大戦のきっかけが、そんな問答だなんてなぁ


「ふ~ん、『覇王』か…でも『覇王』ってこの大陸を治める人なんでしょ?だったら民のことを考える優しい人になって欲しいね」




「ほう?それは例えば…?」


ビーチェは笑いながら僕に問う。


でもビーチェは僕の答えがわかっているようだ。





「そうだね…リタさんみたいな人とかね」








第3章「汝は覇王なりや?」ー完ー



第3章完結です!


かなり長くなってしましましたが、お付き合いいただきありがとうございました!


第4章は帝国編です!


すぐに続きを書きますので、数日ばかりご猶予ください笑

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