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第32話 ボナパルト王城の戦い⑤~アウレリオ・ブラン・ベラルディの覚醒


大きな氷塊が私達の頭上を越えて、リタとシャルル王がいる場所へ着弾しようとしている。


いかん!


このままではリタが死んでしまう!


そうなっては、何もかもがお終いだ!


「…少し頼む!」


私はベアトリーチェにそう言い残して、あの氷塊を防ぐためリタの元へ駆けた。


ベアトリーチェ一人にヒルデガルドの相手は荷が重いとは思ったが、致し方ない!


氷塊を防いで、全力でまた戦線に復帰する。


それまでどうか耐えてくれ。


私は全速力でリタの元へ駆けた。


「リ、リオ…!だ、ダメよ!危ないわ!」


リタが何かを言うが、私には聞こえない。


「させぬ!私が守る!」


そう叫びながら、落下してくる氷塊を方盾で受け止めた。



ドゴオオーン!!


お、重い!!


何とか盾で防ぐことはできたが、氷塊はまだ私たちの上にあり、私の方盾の中に、シャルル王とリタがしゃがんでいる。


正直、腕が折れそうなくらい氷塊の圧がかかっている。


腕が折れそうで、骨が軋む感覚さえする。


しかし、ここで私が折れれば、リタとシャルル王が死ぬ!


私は力いっぱい氷塊に対して押し返そうとした。


「うおおおおお!!!!」


そうしていると、すぐに援軍が来た。


「ナイスだ!ベラルディ准将!僕に任せてくれ!」


ベタンクール都督!


駆けつけてきたベタンクール都督は火の魔術で氷塊を溶かしてくれた。


見る見るうちに氷塊から感じる圧が減っていき、やがて完全に押し返せるほどにまでなった。


「た、助かった……ベタンクール都督、感謝する」


「…いやいやいや、感謝するのはこっちのほうさ。王の命をまた助けてもらった」


「…ベラルディ准将、まことに感謝する。貴殿には何度も命の危機を救われている…」


「いえ、軍人として当然のこと」


私がベタンクール都督とシャルル王に感謝されていると、リタが訝し気に私を見る。


「リオ…あんたこんなに強かったの?」


「そうさ。でも今はそんなことを言っている場合じゃない。ベアトリーチェに加勢する!」


そう言い残して、ベアトリーチェとヒルデガルドがやり合っている場所へ駆ける。


ヒルデガルドはなぜか左手に剣を持ち替えているが、ヒルデガルドの連撃にベアトリーチェは防戦一方のようだ。


間に合え…!


ガギイイン!


そして、ヒルデガルドの渾身の一撃を私は盾で止めた。


「…ふぅ…遅くなって済まない。ベアトリーチェ、選手交代だ」


「ア、アウレリオ准将…」


ベアトリーチェが安堵の表情でこちらを見る。


それにしてもよく耐えたものだ。


流石はシリュウ准将の妻というところか。


「……氷塊はどうなったの…!?」


悔し気に言うヒルデガルド


想像はついているだろうに。


「あれはベタンクール都督が燃やし尽くしてくれたよ。幸い燃やせる大きさだったらしい」


「……ベタンクール!?…あの氷女は…!?」


「あれを見なよ。とっくに逃げ出しているよ」


「……氷の塔…!?…あの女ァ……!?」


プスキニアが逃げたことに、怒髪冠を衝くヒルデガルド


「さて、お怒りのところ悪いが、選手交代だ」


「……何ですって…?」


「ベアトリーチェ、見事な戦いだった。君のおかげでシャルル王とリータ殿下は守ることができた。ベタンクール都督とともに護衛に戻ってくれ」



「ア、アウレリオ准将は?」


「決まっている。あの子猫ちゃんを手懐けてくるさ」


「子猫ちゃんなんて言ってくれるわね?」


「そうか?こんなに可愛らしい子猫ちゃんじゃないか」


「……また……ふざけたことを…!」


ヒルデガルドは怒りに任せて、剣を振るう。


その動きは私の目が慣れたのか、ヒルデガルドが怒りのあまり考えなしになったのかわからないが、私にとっては非常に読みやすい剣筋になっていた。


これなら…大丈夫そうだな…


ヒルデガルドが剣を振るう最中に、私は方盾と剣の両方をヒルデガルドに投げつけた。


「なっ…!…どういうこと…!」


私の行動が理解できないヒルデガルド


その隙に私は、渾身の掌底をヒルデガルドの腹に打ち込む。


ドッ!


「く、くふう……!」


少しよろめいたヒルデガルド


その隙を見て、私は一気に、ヒルデガルドの腕をつかみ、地面に投げつけた!


「そおい!」


「きゃあああ!」


地面に打ち付けられて、悲鳴を上げるヒルデガルド


そして、関節を決め、その行動を抑制する。


「う、うごけない……!」


「人体の急所を押えているからね、降参してもらおうか」


「わ、私が……十傑第9位の…この私が…負けた……?」


「残念ながら戦いは称号でするものではない。実力でするものさ」


「……………もういいわ……殺しなさい……」


「殺さないさ……」


「………人質にするわけね……」


「…いやそう言う意味でもないんだが……噂に聞いたことがあってね…ラーム家という帝国の武の名門に天才少女がいると。その子は妾の子供だけど、その才を買われて軍に取りたてられたとね」


「………どこにでもある話でしょ……」


「そうかな?母を人質に取られ、当主の言いなりのように任務をこなす。そして母亡き後も家に縛られている悲劇の女性の話なんてどこにでもある話ではないと思うがな…」


「……!?……あなた…どこまで知って…」


「いや……君が思うようなことではない……帝国の諜報をしていて偶然耳にして、更に興味本位で調べさせただけなんだ……」


「なんでそんなことに興味があるのよ……悪趣味ね…」


「…僕も君と同じだからだ…」


「……!?」


「幸い僕の母はまだ生きている……でも囚われているんだ」


「……あなたもおなじ……」


「だから……何となく君には生きて欲しいんだよ…だって猫は自由な生き物だろう?」


「………なによ……それ……」


そう言いながらヒルデガルドは俯いて何も話さなくなった。


ヒルデガルドは一切抵抗をしなくなり、大人しく投降した。


そして、シリュウ准将がエゴンを肩で背負ってこちらに向かっているのを見て、この戦いは終着したのだと、私は安堵した。






リアナ「なに…ここ…王城の中にこんな吹き抜けの空間があったなんて…」


パオー「にー。周りは断崖絶壁、そして王城側には窓がない。これは上から覗いても気づかないにー。あの氷の塔があって助かったろんね」


リアナ「あっ!あそこ!ベアトにシリュウ准将よ!」


パオ「……戦いは終わっているみたいだぬん」

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