第30話 ボナパルト王城の戦い③〜プスキニア・メルセンヌの奔走
あたいは今どうなっているの!?
タレイラン公爵の放った間者から王家と皇国の皇妹とやらの極秘会談の日時と場所、護衛の構成まで聞いていたのに、なんで今私はあのリクソンに追いかけ回されているの!?
いえ…理由ははっきりしているわ…
あのシリュウ・ドラゴスピアとかいうわけのわからないガキのせいよ!
なんなの!?
私の氷塊はこの大陸に存在する全ての氷魔術師の作る氷より硬いわ!
だってあたいは王国最強の氷魔術師『絢爛氷河』のプスキニア・メルセンヌよ!
そのあたいの氷塊を粉々に砕くなんて、あいつは人間なの?
戦神の生まれ変わりかなんかよ!絶対!
あたいは心の中で不平不満を言いまくるが、それをしていても目の前の王国最強の火の魔術師はあたいを逃がしてくれない。
あの十傑とかそこでチビっている帝国兵士の命はどうでもいいわ。
この場で最悪のケースはあたいが王家に捕まること。
あたいさえ逃げ切れれば、この暗殺騒動は帝国が勝手にやったとタレイラン公爵はシラを切ることができる。
王家がタレイラン公爵に抗議しようなら、嫌疑をかけられたことを理由に表立って王家に兵を挙げることもできる。
今の脆弱な王家なら、タレイランとピケティの2公爵家の権力で、この暗殺騒動を有耶無耶にできるわ。
でもそれはあたいが現行犯で捕まらなければという前提が必要ね。
あたいがここで捕まってしまえば、言い訳は不可能
だからあたいは力の限り逃げている。
だってあのリクソン相手に一対一で勝てるわけないじゃない!
こいつに勝つなら奇襲しかなかったわ!
あの十傑とやらも役に立たなさそうだし?
王と皇妹の首は一旦置いておくわ。
今はこいつから逃げないと!
あたいはリクソンが放つ火の魔術を水や氷の魔術を駆使してなんとか防ぐ。
「やれやれ、相変わらず見事な魔術操作だなぁ。それに君の魔力保有量は僕より多いからこのままではジリ貧だ」
「なら諦めてよ!あたいは家に帰りたいだけ!」
「王の首を狙われて、ただで帰すとでも?」
「帰してもらうわ。あなたとの決着はまた別の機会にね?」
逃げ回ってもこちらもジリ貧だから、あたいもリクソン目掛けて氷の槍を数個使って放つ。
リクソンはあたいの氷の槍を得物の双剣で捌く。
相変わらず、魔術も武術もできるなんて癇に障る奴ね!
でもあたいは魔術で作った氷の道で高速で移動できるけど、リクソンは自分の足でしかあたいに近づけない。
火の魔術は攻撃においては最強だけど、機動においては全属性の中で下位の方だからね。
でもあたいの逃げる先を的確に読んで、炎の壁であたいの逃走を阻んでくる。
あと一歩何かあれば…
「……なぁ、鬼ごっこはもうお終いにしないか?」
リクソンは相変わらずニヤニヤした顔を貼り付けながらあたいに降伏を迫る。
でもあたいはリクソンの降伏勧告を疑問に思う。
………なんかおかしいわね……
この自信家がわざわざ降伏を勧告するなんて…
何を隠しているのかしら……
リクソンの不自然な振る舞いに、あたいはここから逆転する希望の光がないか考える。
そしてリクソンの遙か後方に、あのヒルデガルドとかいう気に食わない女がシャルル王と皇国の皇妹に襲い掛かり、盾を持った男が応戦している様子を捉えた。
なんで気づかなかったのよ!
あたいのバカ!
こいつはあの王たちを庇わないといけないから、リクソンの気を引くことはとっても簡単だわ!
あたいは、ある程度の大きさの氷塊を作り、シャルル王達がいる場所目掛けて飛び込ませた。
「ちっ…気づいたか…!……まずい!」
そしてリクソンは慌ててシャルル王達の方へあたいの作った氷解を防ぐために駆けて行く。
今のうちにー!
そしてあたいは、氷の台を作ってその上に乗り、全力で魔力を放出して、台を伸ばして氷の塔を作った。
そして、この吹き抜けになっている中庭の空から脱出に成功した!
ばいばーい!リクソン!
あたいは逃げ切れた!
あたいは九死に一生を得て、浮かれていた。
だからこの時氷の塔を見つけて、あたいに近づいてくる影に気が付かなかったの。
パオ「にー。あの辺じゃもん?」
リアナ「パ、パオぉ…高すぎるわよ……」
パオ「もう少しだけ我慢だおろろん。むむ!あれは!?」
リアナ「こ、氷の塔!?な、なにあれ!?」




