第165話 学園祭その2
『男女逆転コンテスト』は大盛況だった。大盛況だったのだが、いまいち盛り上がりに欠けた。
それは僕がぶっちぎり過ぎて、誰が優勝するかのワクワク感に欠けたからだ。
これは結衣さんメイクをベースに、徹底的にブラッシュアップを重ねた、五十嵐さんの功績でもある。五十嵐さんは僕の優勝が嬉しかったのか、優勝の瞬間僕に抱きついてきたほどだ。
とにかく僕は『男女逆転コンテスト』で見事クイーン? キング? の座を勝ち取った。
小さい頃からたくさんのコンテストやコンクールで優勝してきた僕だが……。
こんなに嬉しくない優勝ははじめてだ。
それでも五十嵐さんは屈託のない笑顔で喜んでいた。結衣さんメイクを超えるために、日々努力を重ねていた成果が報われたのだから、喜ぶ気持ちは僕にも充分わかる。
でも、あんなに頑張っていてくれたのに、素直に喜べなくて……ごめん。
——結果が出たからと言って、油を売ってはいられなかった。
これからが僕の本番なのだから。
そしてこれも予定通り……メイクを落としている時間はなかった。
凛が抜けた新生『織りなす音』はギャルバンとしてスタートすることになる。
とりあえず僕はライブ会場である体育館へ急いだ。
——「遅くなりました!」
「うお! 音無か?」
「はい」
「結局そのままで出るのか?」
「……はい」
「あははは、いい思い出になるなあ!」
古谷先輩は結構本気で喜んでいた。古谷先輩はこのバージョンの僕がお気に入りのようだ。
出番は
『織りなす音』
『すっぴん』
『Air Ash』の順。
軽く音出しだけで、リハなしのぶつけ本番だ。
そうこうしている間に演劇部の公演が終わり、いよいよ僕たち軽音部『織りなす音』の出番だ。
「鳴、バンマスとして一言お願い」
バ……バンマス……。
バンマスとはバンドのリーダーのことだ。僕たちは今まで特にバンマスなど決めずにやってきたのだが。
「師匠、よろしく」
「音無くんファイト」
なんか、僕の方がすでに励まされてる感がある。
「とりあえず、いつも通りで! いつもの僕たちが最高だから!」
『『おーっ!』』
あんまりこういうの得意ではないから、あれでいいのか不安になる。
「ていうか、師匠がいつも通りじゃないよね」
「それがいつも通りなら、流石に私も考えるわ」
「ある意味いつも通りの音無くん」
「あはは……」
ある意味いつも通りのクオリティに落ち着いた。
朝子さん、木村さんも大阪からわざわざ見にきてくれている。
格好悪いステージはできない。
気合いが気負いに変わりそうなシチュエーションだが、僕は落ち着いていた。
これが積み重ねの力だと気付くのは、僕がもう少し大人になってからだった。
優勝おめでとう! そして本番だ!
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