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【チロ視点】
「……あー、すいませんチロさん。私ちょっと使い物にならなくなるので、その間護衛お願いします。」
「は!? ちょっとッ!?」
「111000111000000110001010111000111000000110110010111000111000001010001011111000111000000110101101」
「は!?!?!?」
人の身体を持ちながらも、明らかに人ではない存在に囲まれた私達。
今いる場所が一体どんな場所かすら理解できない所に、急に無茶振りをし壊れたように数字を羅列し始めたカーチェ。え、は!? おかしくなったッ!? ちょ、どうするのよカーチェ! 年とった辺境伯の姿してるアイツら、明らかに私よりも強い奴じゃないッ!
確かにアンタには護衛として雇われてるけど、無理なもんは無理よ! しかも逃げようと思っても、開けた出入り口からビーム出てるせいで逃げられないし! し、死ねって言ってんのアンタ!?!?
「111001011010010010101001111001011011100010011101111000111000000110101110111000111000001010100010111000111000001110110100111000111000001010100001111000111000001110110011111000111000001010101110111000111000001110100011111000111000……」
「あぁもうッ! カーチェが壊れたぁ!!!」
泣き叫びながら彼女の肩を思いっきり振ろうとするが……、いまだ数字を羅列しながら、全力でカーチェが首を振り始める。え、違うの? 何となく目でこっちに語り掛けてるけど……、必要なこと? ほ、ほんとに頭がおかしくなっちゃったわけじゃないのよね? なんか意味わからん緑の板とか、赤とか青の変な線とか、数字がいっぱい浮かんでて。そこに化け物みたいな辺境伯がいっぱいいて狂ったわけじゃないのよね!? 気味が悪いほど“この世界から何も感じない”けど、信じていいのよね!!!
「(コクコクコクコクっ!)」
「あぁもうッ! だったら死ぬ気でやってやるぅぅぅ!!!!!」
そう叫びながら、私の身体の中にあるカギを、解き放つ。
獄炎を使い続け、より習熟するためにずっと体内で起動し続けたがゆえに到達できた。おそらくこの力の極意。味方すら焼き尽くす地獄の炎を体の中でより熱し、自分の身体すら溶かし切る様なより高温の炎。使い過ぎるとほんとに自滅しちゃうけど、明らかに私一人じゃ倒せそうにない『辺境伯』相手に生き残るには、それしかない。
「カーチェッ! 自分の防御は自分で! あと移動の足、私でも動かせるの出して!!!」
「010001000100110001000011111000111000001110010101111000111000001010101001111000111000001110101011111000111000001110000000……」
未だ謎の数字の羅列を言い続けるカーチェだったが、此方の声は聞こえているのだろう。
即座に行動へと移し、以前私に着せやがったすべてのダメージを『すでにエイチピーが0だから』という意味不明な理由で防ぐボブのスーツを着用し。ボブバイクを取り出す彼女。何故か赤くコーティングされているが、なんとなくボブのスーツと同様の加工が施され、私でも動かせるようになっているのは理解できた。
即座にカーチェを抱えながら飛び乗り、私の炎を見て行動し始めた辺境伯たちから距離を離す。
「あぶッ!? ……チィッ! 一撃でも貰ったら即死ってわけねッ!」
「111000111000000110111000111000111000001010010011111000111000000110001011111000111000001010010011111000111000000110010111111000111000001010000100111000111000000110011111111000111000000110100100」
「でもアレぐらいなら……、焼き尽くせるッ! 『獄炎』、起動ッ!!!」
「111000111000000110111100111000111000000110110110111000111000000110101011111000111000000110011001111000111000001010001011」
「あぁもう、うっさいッ! なんか必要なことしてるんだろうけど、黙れッ!!!」
そう叫びながら、最大火力の獄炎を起動する。
想像するのは、空に輝く真っ赤な太陽。今いる空間にはそんなもの無いみたいだけど、だったら私がなってやるまで。近づけば近づくほど火力が上がり、そのすべてを消し飛ばす大きな火球。今後ろで数字を言い続けてる悪魔によれば相手はバケモノみたいな強さらしいけど、そんなもの関係ない。
私の意思に反応して動くらしいバイクを操り、緑の板を走り回りながら、そのすべてを火にくべていく。
「……」
「ッ! 何もしゃべらないってのも不気味、ねッ!」
白目をむきながら、全く感情を感じさせない顔で、無言での攻撃。正直気持ち悪くて仕方がないと考えながら、回避行動を行って行く。
その直後に飛んできたのは、おそらく遠距離の魔法攻撃。それを炎で焼き尽くしながらバイクを動かすが、真上から落ちてくる辺境伯が三体。それをバイクの前輪で吹き飛ばしながら、炎で炙る。本気で燃やしてもまだ焼き殺せないのは炎使いとして業腹だが、カーチェからのオーダーは『使い物にならない間の護衛』のみ。
この場を動き回り、炙って相手の動きを止め、ただできる限り逃げ延びる。
(それしかない、ってのは解ってるけど……。ッ!)
ほぼ癖で常時展開していた『索敵』にから伝わって来る、無数の反応。周囲に視線を向けてみれば、敵の数が増えていることが理解できる。そう言えばカーチェの言う辺境伯のヤバさ、その最大の理由として『際限なく増える』ってのを言っていたけど……。
「こういうこと、かっ!」
バイクで緑の板に降り立ち、そこを走りながら距離を取る。
よくよく観察してみれば、徐々にその数が増え始めているのが解る。未だ後ろで数字を言い続けてる悪魔が言っていた『瞬く間に全てを埋め尽くす』ってほどではないけど、決定打を打ち込めない私からすれば、状況は単に悪化し続けるだけ。
そしてさらに厄介なのが……。
「ッ! 来たッ!」
増えたからこそ、出来ること。それすなわち、全方位からの囲い込み。
未だこの空間、現実とも虚空ともいえない場所が何なのかは解らないけれど、辺境伯たちがこの空間で飛行できることは理解できる。一応私も出来ないわけではないが、魔力を使うしボブの方が早い。だからバイクに乗っているわけだけど……。その差を奴らは、数で埋めようとしている。
でもその動きは、どこか“人間らしく”ない。
「よく解んないけど、とりあえず燃やして突破するに限るッ!!!」
全身に纏う炎の火力をより向上させ、変わらぬ無表情で距離を詰めてくる辺境伯たちを焼き、ついでに緑色の地面を溶かし敵の足と一体化させることで、その動きを止める。
そして更に放射する真っ白な獄炎。バイクが進む道を焼き開くそれに続きながら、やはり燃やし切れない辺境伯を轢き飛ばしていく。幸いなことに重量は普通の人間とそう変わらないようで、速度と重量さで簡単に吹き飛んでくれはするのだが……、
ヤった感覚は一切無し。というかよくよく観察すれば、さっき焦がした奴が無傷でこっちに向かって来てる。
(もしかして回復能力も持ってる感じ?)
……あまり考えたくないことだが、このまま殺し切れない状況は続けば、この空間すべてが辺境伯で埋まってしまうだろう。そうなったらもう逃げ場はないし、死ぬしかない。一瞬だけカーチェの方に視線を向ければ、首を振っていたことから『まだ時間がかかる』のだろう。
私だけじゃ殺し切れない。
そんなこと後ろに乗ってるコイツなら最初から理解していること、けれど攻撃でなく数字を唱え続けているのは、“出来ない”からだ。唯一活用できそうなのは、私達が出入りしたあの小さな穴だけど、そこから絶えずビームが出続けているのでどうしようもない。
上手く利用してあそこに引きつけ私の炎と同時に接触させることで何体かは殺すことは出来るだろうが……、確実に増える時間の方が早い。だって既に、最初は入った時の倍ぐらいの辺境伯が、この世界にいる。
もっと他に、何か……!
「111010001011111010111010111001011010001010000011111001001011110010101111」
「カーチェっ! ……あぁうん。まだ数字言ってるのね。」
「111000111000000110011001111000111000000110111001111000111000000110100110111010011000000110111000111001101000101010011110」
「視線だけでめっちゃ非難してるのは解るわ。」
「111000111000001010110100111000111000001110011111111001111010111010110001」
「ビーム周辺に移動しろ?」
急に背中に頭突きして来たかと思ったら、まだ数字を言い続けながら目線だけで私に言って来る彼女。
どうやら何か考えがあるらしいが……。何かしらの操作をしている両腕が気持ちの悪い動きをしている。多分私には見えない何かを操作しているようなのだが……。まぁいい、コイツは人間とは思えない部分が300割ぐらいを占めているが、その行動が結果に繋がらないことは無かった。信じて、やるしかない。
そう考え、また辺境伯を吹き飛ばしながらバイクを走らせると。
ビームの中に見える、一つの影。
「……あぁ、なるほどッ!」
救援だ。
「主様ッ! 遅参して申し訳ありませんッ!」
「ぎゃぁぁぁあああああ!?!?!? しぬ、しぬ! しぬぅぅぅ……、あれ? 死んでない。……というかなんじゃここぉぉぉぉお!!!!!!!!!!」




