70:逵溷ョ溘?諢
というわけで未だ気絶しているらしい両親の看病&説得に行ってくれた王女を見送りながら、話を進めていきます。少々不安なのは確かですし、ちょっと両親のことが心配ではあるのですが、辺境伯討伐の方が重要度が高いですからね。今は色々押し込んで準備していかなければなりません。
「まぁ後はボブーズが集めた情報を纏め、辺境伯を滅殺しに行くわけですが……。まだ我々に足りないものが存在しています。えぇそうですね、前衛です。」
「あぁそう言えばなんか言ってたわね。小太郎とかだっけ?」
「む? あぁあの童か。礼儀正しい奴だったのぅ。まだまだ先があったろうに。」
チロさんの言う通り、忍者の里での目的の一つとして原作キャラ。その中でも比較的使いやすい彼をスカウトし、前衛職として仕立て上げるという計画が存在していました。しかしながら既に他界していため計画は頓挫。前衛職はお預けになった形になります。
ま、代わりにモミジちゃんという回復支援係が手に入ったのでプラマイ0なところがありますが……。対辺境伯を考えるとやはり前衛職は必須です。
とまぁそんな感じにご説明したのですが……、モミジちゃんが何か言いたそうですね。どうぞ。
「あまりその辺境伯? というのを知らぬ儂が言っていいのか解らんのじゃが、これ以上いるのかの? 正直チロ殿の火力と、先ほど童が見せたあの真っ黒な光の奔流。あの二つぶつけてしまえば勝てるんじゃないかの? あの邪神? ワンパンしたわけじゃし。」
「多分無理ですね。邪神の数百倍強いので。」
「「すうひゃく!?」」
えぇ、決して数値的なものではないのですが、感覚的に言えばそうなります。
再度のご説明にはなりますが、辺境伯というのはこの世界の元になったというか、世界そのものとも呼べるゲーム。『天帝のアバンギャルド』の発売三周年記念として発表されたDLCボスになっております。つまりそれまでバグで遊び倒したり、全キャラをカンストさせたり、邪神でお手玉をしているような奴ら相手に公式が生み出したボスなのです。弱い筈がありませんし、バグ対策も完璧だと公式が豪語するほどの敵キャラでした。
「げ、げーむ?」
「あ、だめモミジ。そこから先は考えても聴いてもいけない奴。死にたくなかったら心に蓋をするのよ……!」
「あ、うむ。……なんの話じゃ?」
チロさんが何か忠告していますが……。まぁいいです。
とにかく辺境伯は、私などとは比べ物にならない程の上位プレイヤーでも楽しめるように設計されたボスなのです。表面上のステータスは確かに邪神よりちょっと強い程度ですが……。スキル構成やギミックなどが凝ってましてね。生半可な準備では倒せない相手なのです。
おそらく私とチロさんが最大火力を叩き込んだとしても、削れるのは体力の2割程度。原作開始10年前の今なので、多少弱体化してそうですがどうなるのか全く分からない相手です。
「む、むぅ。なんで童が10年後のことを知っているのかというのはチロ殿のいう通り置いておくとして……。とり合えず想定できる最大の強さで考えた場合、初撃で倒し切ることが難しい。ということでいいのかの?」
「えぇその通りです。自身もPCを破壊された身なので、自分の手で倒し切ったわけではないのですが、その手順とギミックは理解しています。色々とややこしいので詳細は伏せますが、いつも通り任せて頂ければ問題ないかと。」
「ふ~ん、まぁ了解って言いたいところだけど……。ねぇカーチェ。そもそもの話なんだけどさ。」
はい、何でしょうチロさん。
「私達って連携の経験ないわよね?」
……あ。
「相手が初手ぶっ放しで死なないのなら、その後の連携も必要になるでしょう? でも私はチームでの経験は少ないし、カーチェもこれまでほぼ0。モミジは……、そもそも戦闘の経験あんまりないんじゃない?」
「う、うむ。儂、大体お仕事ばっかりでそう言うのはあんまり……。身を護る術だけ覚えて、それっきりじゃな。」
「でしょう? どういう戦い方を考えてるか知らないけど、このままじゃ連携もクソもないわよ。」
ん~、言われてみれば確かですね。一応解決策はいくつか考えられるのですが……。確実にご許可頂けないでしょうし、おそらくこれを実行した時、王女以外に逃げられる気がします。
「ちなみにどういうの?」
「ボブ「あぁもういいわ、聞いた私が馬鹿だった。」でしょうね。」
「では少々面倒ですが、前衛を入れて何度か連携訓練と辺境伯の倒し方を共有した後。挑むことにしましょうか。」
「うむ、真っ当な手段じゃな! ……最初からそれでよかったのではないか?」
何言ってるんですかモミジちゃん。そんなことすれば私のお昼寝時間が減ってしまうではないですか。私の至高の時間を奪う者は神であろうと消し飛ばすのです。たとえ世界そのものが敵に回ろうがお昼寝の為には切り捨てるのが普通でしょう? ……あ、もしかしてジョークでした?
「この童、やっぱ狂人に分類されるんじゃないかの? 親の顔が見てみたいもんじゃ。」
「残念でしたねモミジちゃん。私の両親は真面です。」
「自分が真面ではないという自覚はあったんじゃの。それは一安心じゃ。」
……強制ボブアーマー起動。そんなことを言う人は経験値おじさん処刑係です。
ちょっとまだ不安なステータスを上げて貰います。
「のじゃッ!? や、やめッ! あ、なんか記憶がッ! あッ! これこの前もッ!? だ、ダメなのじゃ! おもちは嫌なのじゃ! あと処刑係って何なのじゃ!? お、おたす、んぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
「……程々にしておきなさいよ。やり過ぎたら燃やすし。」
えぇ、解っていますとも。邪神でのレベリングの際にモミジちゃんの限界は既に測定し終わりました。SDGsに配慮したレベリングを行わせて頂きます。彼女は回復役ですし、一番死なないようにしなければいけない人材です。防御面は固ければ固い方がいいですからねぇ。
「生命線だものね。それで、聞きそびれてたけど誰を前衛にするつもり? 正直アンタの犠牲者をこれ以上増やしたくないんだけど。」
「ご安心ください。王女を使います。」
「主様ッ!」
そんなことを話していると、ちょうど王女が。
私の両親の世話と言いますか、説得をお願いしていたはずなのですが……。どうしたのでしょうか? ちょっと雑に扱ってしまっているのは自覚しているのですが、それでも大事な今世の両親です。もし何かあれば王国丸ごと全部バグの海に沈めるぐらいには、あの人たちのことを私は思っています。
まぁこの程度のことは王女も理解しているので、丁重に扱いはしたのでしょうが……。とりあえず報告しなさい。
「は! もしものことを考え、王宮宝物庫から『エリクサー』を持参していたのですが、それを使用させて頂きました! すぐに目を覚まされたのですが……。何故か私の顔を見た瞬間にまた気絶されてしまいまして。」
「あー、まぁ国の王女が寝起きにいたら気絶しても仕方ないわね。カーチェ、次はアンタ自身でやりなさい。あとそろそろ全部説明したらどう? あの人たちなら受け入れてくれるでしょ。……心労は凄そうだけど。」
……話したくないことの方が多いので、大半は墓まで持って行きます。刺激が強すぎるでしょうし。
「まぁそれも一つの手かもねぇ。魔王とか邪神を倒してるのは誇らしい話かもだけど危険ではあるし、そもそもボブとかでやってることが人様に見せられるようなものじゃないから……。」
「でしょう?」
「そ、それで主様。先程この身の話をなさっていたようですが……。な、何かありましたでしょうか?」
あ、そう言えば貴女の話でしたね。
簡単に言いますと……。ソフィ。貴女を再改造します。
「ッ! 既に我が身は主様のもの。如何様にもお使いください。」
話が早いのは良いですね。まぁチロさんには理解できないでしょうので最初から。
まずカーチェちゃんの趣味の一つとして、ボブの魔改造が挙げられるのですが……。これは単に生活をより豊かにするというものだけでなく、対辺境伯を見据えての研究開発でもあったのです。辺境伯は強大な敵であり、同時に自己増殖を繰り返す厄介な敵。もし戦闘中にバグのキーが作動してしまった場合、一瞬にして世界が辺境伯で埋まることになります。
その際にその増殖を押しとどめる、もしくは増えた分だけ消し飛ばす機構が必要だと考えた私は、ボブに眼をつけたのです。
「単なるボブはボブⅡに、ボブバイクはボブカーへと進化して来ました。実はそれ以降も色々作ってはいたのですが、対辺境伯を考えると少々火力不足。ということで更に開発を重ね……。」
完成したのがこちら、ボブングです。両腕の発射口から魔法的光線を放ち、頭部だけでの飛行も可能。無論両足も実装済みなパーフェクトなボブです。小型化が難しかった故に5mほどの巨大ボブにはなりましたが、その性能はお墨付き。オールレンジ攻撃で瞬く間に増殖した辺境伯を焼き尽くしてくれるでしょう。
ただそんな高火力な分、死体が必要でして……。幾つかのボブを解体して作っているのですが、未だ200体ほどしかご用意できていません。奴のことを考えれば、一万体ほど作っておきたかったのですが……。これ以上死体を求めるとなると、今いる王国民を全てボブにする必要が出てきます。
流石のカーチェちゃんも流石にそこまではやりたくありません。そこの王女から虐殺計画が提出されましたが、無視しておきました。
「……ごめん、ちょっと時間頂戴。ツッコミ考えるから。」
「別にいりませんよ? ボブングは過程ですし。」
「は!?」
まぁそんな風にボブの最終形態を生み出した私ですが、まだまだ研究開発の手を休めるつもりはありません。ということでコストカットや小型化を突き詰め、ボブの頭脳を直結させて計算能力に特化させたコンピューターならぬ『ボブピューター』を活用することで、何とか“手のひらサイズ”までそれを押し込むことに完成しました。
「んで出来たのが、コレ。『縺雁燕縺ョ蠢?∮』です。」
「……な、なんて言ったの?」
「『縺雁燕縺ョ蠢?∮』」
「?????」
実物を見せながら口で説明してみますが……、全く伝わりません。まぁそれもそのはず、実は開発途中でおそらくこの世界の上限、いやゲームにおける想定を完全に超えてしまったようで、名前も姿も完全にぼやけた感じになっちゃったんです。
当初は王女に埋め込む心臓、より正確に言うなれば強化アタッチメントとして開発していたのですが、おそらく強化率を上げ過ぎた結果、バグっちゃった感じでしょうね。分類的にはそう放置しても問題ない奴だとは思うのですが……。モミジちゃんに見せるのは当分やめておくつもりです。経験値おじさんを上回る特大のバグですもの。多分、今これ見たらショック死しちゃいます。
ま、そんなことどうでもいいのです。重要なのはこの手に完成品が握られていると言う事だけ。
「ソフィ、胸の傷を開けなさい。埋め込んであげます。」
「よ、よろしいのですか!? こ、これに勝る喜びはございません……ッ!」
そういうと、これまで血で固めていたであろう偽装が、ゆっくりと溶けていきます。
彼女の死因は、心臓に突き刺された剣、その傷は今も残っており、その胸にあるはずの臓器はここに在りません。彼女の核というべきその存在はあの王墓にあったゴーレムの中に埋め込まれ、どれだけ王女を攻撃しようとも破壊されることはないというギミックを構築するに至りました。それだけ見れば十分な盾に見えるでしょうが……、いまだ前衛を為すには、物足りないのです。
脈動し続ける表現できないソレを、ゆっくりと埋め込むと……。王女の身体に流れ出す、より強い力。人体の理を理解し、ボブ数万人のエネルギーをアレに込めたのです。この世界の理を超えた力は、確実に王女を新たな存在へと書き換えていき……。
大きくその姿がバグ独特の揺らぎを経た瞬間、生まれ変わります。
「あぁ、これが新しい私。主様、より一層の忠を捧げます……!」
[STATUS]
Name : 繧ス繝輔ぅ
JOB : 荳サ讒倥?蜒
Level : 縺溘¥縺輔s
EXP : 縺?▲縺ア縺 / 縺?▲縺ア縺
HP : 0 / 0
MP : 671 / 329
ATK : 99
DEF :278
M.ATK : 44
M.DEF :438
SPD : 11
LUK :-99
Skill : 荳也阜縺ッ雋エ螂ウ縺?縺代?繧ゅ?
「……あ、すいません。これ思ったよりヤバいかも。世界ごとバグるかも。」
「カーチェッ!?!?!?」
〇カーチェの秘密
モミジちゃんというバグを何とか出来る存在が出来たせいで、元々なかったブレーキがアクセルに変わったぞ! 二重アクセルでお友達を抜き去ろう! なおモミジちゃんはデスマーチ確定です。
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