7:親近感
「カーチェ? この前言ってた冒険者さんが来たみたいよ?」
「うにゃ? ……はーい、ありがとママ。」
目をこすりながら、ベッドから降ります。
パパから冒険者の相談を受けて数週間。例の経験値プレゼント盗賊さんを土で埋めた私はぬくぬくと幸せなお昼寝ライフを送っていたのですが……。ついに終わりが来ちゃったみたいです。いやまぁ今回依頼の対象を選んだのは実質的に私ですし、冒険者が来たら動き始めると決めたのも私。更にその彼女が来たら起こしてってパパやママに言ってたのは私なんですが。
「女性の魔法使いさんみたいだし、気になるわねぇ。ウチに居ついてくれないかしら?」
「ねむ……。王都の人がここみたいな田舎に来るなんてないと思いますよ。畑しかないですし。」
「まぁそうよねぇ。」
なんか言ってるママに、一応言葉を返します。まぁ気持ちは分かるんですけどね?
ゲームの『転職』というシステムのおかげが、この世界のゲーム的な職業、ジョブの選択は自由です。しかしながらどの職業を選んでも活躍できるというわけではなく、それぞれに合った職を選ばなければいけません。そしてそんな職の中で一番成り手が少ないのが……、魔法使いとなっています。
(単純に、MPを持ってない人が多いってのが原因でしょうね。)
私のレベリング結果を見て貰えば解るように、この世界はモブにとってかなり強くなるのが難しい世界です。成長率の差、才能の差はいかんともしがたいんですよね。
私みたいに自動経験値吐き出し盗賊おじさんマシーンがあればマシですが、他の人はそんな便利機械持っていません。つまり命の危険を冒しながら強く成るしかないのですが……。その攻撃手段を魔法に頼った瞬間。MPが牙をむきます。
(確か最小の魔法である『小火球』とかでもMPを1ほど持っていかれたはずですし、MPが一桁とかだとすぐ攻撃できなくなって詰むんですよねぇ。)
まぁつまり。魔法使いの職を選んである程度生き残れてる時点で、滅茶苦茶才能のある人ってことなんです。今回依頼した冒険者はそんな才能を必要とする魔法使いの職に就きながら、たった一人で依頼を熟している。つまり滅茶苦茶魔力を持っているってことに他なりません。
ママも村長の妻。村の防衛戦力になるうえに、子供を産んでくれればその優秀な才能。MPへの成長率が遺伝してくれるかもしれない素敵人材が居座ってくれないかと考えるのは自然というものでしょう。しかも魔法って戦闘以外にも使えますから単純な労働力としてもかなり優秀なんですよねぇ。ゲームでも魔法使って一瞬で作業終わらせてキャラいましたし。
「男の人だったらカーチェを勧めたんだけど、ねぇ?」
「私に反応する時点でかなりの危険人物だと思いますよ、ママ。あと5歳に言う冗談じゃないです。」
「あら、2割くらい本気よ? さ、寝ぐせ直してご挨拶に行きましょ。」
若干その2割を気になりながらも、はーいと答えながらママに体を預けます。
……っと、そろそろ今回の目的について詰めておくことにしましょうか。
まず私の現在の目標は、『転職すること』になります。今の初期ジョブである村人がカンストしちゃったので、転職して再度レベリングできるようにしたいわけですね。何をするにもある程度の強さが必要なわけですし。
(このままだと、何処かに移動するだけで死にますからねぇ。)
現在の私は、まだ雑魚中の雑魚。おそらく5歳児の中ではかなり出来る方だとは思いますが、それでも森に入って何かと接敵すれば即死する弱さです。このままでは世界を救う旅、いえ正確には主人公の代わりを見つけて原作キャラたちに色々押し付けるための旅に出たとしても、道中即座に命を落としてしまうでしょう。
故に転職してレベル上限をリセットし、もう一度レベリングして強くなる。しかしそれを為すには村の外にある王都の教会に行かなければならない。でも一人で外に出れば即死する。
(というわけで……、あの冒険者さんを利用させてもらいます。)
ま、とりあえずはご挨拶しなきゃですねー。
「よし! 綺麗!」
「ありがとう、ママ。でも自分で出来ましたよ?」
「いいの、もっと甘やかせて頂戴。どんなに賢くても私達の子なんだから、ね? ……あと危ないことはしないでね、本当に。」
……何か勘付かれてますね。流石ママ。
でもまぁ止めようとはしてこないですし、ある程度は信頼して頂いているのでしょう。確かに危険こそありますが、今考えてる作戦が一番安全そうですし、今この時点で最寄りの“転職できる教会”がある王都に行くにはこれしかなさそうなのも確か。
心配かけてしまうのは確かですが、今は見逃してもらえると助かります。本音を言えばずっとお家でゴロゴロしたいんですけど、そうもいきませんからね……。
「ママも私の性格は知っているでしょう? ずっとのんびりしてたいですし、自分から危ないことに必要なく飛び込んでいくほどおバカじゃないです。普通に死にたくないですし。」
「……確かにそうね。さ、ご挨拶にいきましょ。」
「うん。」
母に手を引かれながら、そのまま外へ。
すると村の出入り口辺りで人が集まっているのが見えます。ま、ここに来るのって定期の行商人さんとかぐらいですからねぇ。冒険者やら旅人やらが来るだけで大イベントです。かなりの騒ぎになっても仕方ないでしょう。
さーて、資料で名前は知っていますが、どんな方なんでしょうね。
「あなたー?」
「ん? あぁ、来たか! チロさん。こちら家内と、娘のカーチェです。娘がどうしても冒険者の方とお会いしたいと言ってましてね……。」
「いえ、全然大丈夫ですよ。初めましてカーチェちゃん。冒険者やってるチロといいます。よろしくね。」
「はい、此方こそよろしくお願いいたします。」
ほんのり赤みが掛かった茶髪に、少しつり上がった目元。
けれど印象に残りにくそうな顔をした少女が、そこにいました。……やっぱ顔で解りますけど、この人も私とおんなじですね。主人公で爆死したルール君みたいに顔が滅茶苦茶整ってるタイプじゃないです。モブですねぇ。
(子供に対してもしっかり挨拶してくれますし、良い人そうで安心しました。)
ちょっと申し訳なさは感じますけど、利用させてもらいますねー。




