54:イッポン!
「Wasshoi!」
「アバーッ!」
「ひ、ひぃ! なんかよく解らん奴が攻めて、アバーッ!」
「……何語よソレ。」
そんな会話を交わしながら、どんどんと屋敷の奥へと入っていきます。にしても流石の忍者屋敷、色々とギミックがあって楽しいですよねぇ。
現在私たちは、この忍者の里のトップ。里長のお屋敷にお邪魔しています。彼らが保有する特殊な刀、里長が代々保管している『朧月』を合法的に入手するためですね。普通にお願いしても譲ってもらえるわけがないので、実力至上主義な所を利用し、私が里長になってしまおうって魂胆です。
というわけでお屋敷にカチコミ……、ではなくお邪魔している形になります。
「『多重影分身の術』、からの無差別カラテ!」
「「「アバーッ!」」」
「うわひど。」
お庭の池に潜んでいた忍者、お屋敷の天井に潜んでいた忍者。壁や床いたるところから忍者が飛び出してきて皆さんアンブッシュを仕掛けてくるのですが……。
やはり誰もアイサツがありません。このカーチェちゃんがスゴイツヨイ級ニンジャだったからいいものの、こちらのアイサツを一切返さず攻撃なんて、セプク案件です。彼らは古事記を読んだことが無いのでしょうか?
まぁそんなことを考えながら、影分身を行い手数の増量。飛んでくる石や矢や銃弾を優しくキャッチして投げ返してあげたり、カラテ=チョップを活用しその意識を刈り取って行ってあげます。
「今後私の配下に成りますからね、ミネウチで許してやります。」
「まだ威力調節が完璧じゃないから、そっちでやってくれるのは助かるんだけど……。アンタ、さっきから語彙おかしくなってない?」
「そうですか? いつも通り……。あ、ニンジャ。ドーモ、カーチェ=チャンで、ムゥ! アイサツ無しとはスゴイ=シツレイ! イヤーッ!」
「アバーッ!」
いつも通り喋ってるはずなんですがねぇ? まぁ私の内なるソウルがはしゃいじゃってるだけでしょう。
あ、あとチロさん。別に気にしなくていいですからね? 貴女に求めているのは圧倒的な魔法火力であって、今ここにいるニンジャたちをいい感じに無力化するコントロール能力ではありません。というか『獄炎』起動時のデメリットを『敵からの攻撃を撃ち落す』ことに使っている以上。ゲームですらできなかった超高等テクニックです。十分すぎます。
「あ、そう///? な、なら今日は楽させてもらいましょうか。……火力、火力か。」
よし、照れた。
とまぁそんな感じでどんどんと屋敷の中に入っていきます。
一応防衛用のトラップも幾つか発見できましたが、相手は忍者でこちらもニンジャ。相手が仕掛けてくるタイミングなどまるわかりですし、そもそもこの屋敷のマップはゲーム知識で全部覚えています。的確にそのすべてを解除し、その目的地まで一直線。
最後に最奥めいたアトモスフィアを放つショウジ戸を開ければ……。
「ここが里長の居場所、ってわけですね。」
「……よくぞここまで来たな、侵入者よ。しかし貴様の」
「あ、このタタミ。かなりのスゴイ級の品ですね。引っぺがして持って帰ろうかな。」
「か、カーチェ? あのおじさん話してるわよ?」
ん? どうしたんですかチロさん。え、なんかあの白髪のおじさんが話してる? いやアレ里長じゃなくて、単なる影武者です。
というわけで良さげなタタミ引っぺがし、首に巻いていたマフラーならぬ布を投擲。逃走しようとしている輩を巻き取り、そのすべてをこちらに引っ張り出します。Wasshoi! です。するとごろごろと出てくる、何人かの忍者。里長とそのお付きの忍者、あとは女性と子供という所ですね。……後者は別に引っ張らなくてもよかったかも。
「ぬ、ぬぅ! なぜわかった!?」
「状況判断、って言いたいですけど普通に知ってたからですね。というわけでさっさと里長の地位ください。あぁ朧月でもいいです。そしたら帰ってもいいので。」
「誰が貴様らなんぞにッ!」
そう言いながら、ニンジャ・ソードを抜き斬りかかって来る彼。既に逃げられないと悟ったのでしょう。かなり本気の攻撃ですね。
こちらも既に仕込んでいた『金剛の術』を持ってチョップで応戦します。……あ、やっぱ結構強い方ですね。風魔まではいきませんけど、その下の上忍を極めてそうなレベルの強さです。流石原作キャラのお爺ちゃん。お顔は老いていますが、肉体はまだまだ健在のご様子です。
「あとやっぱりアイサツしてくれないんですよね……。イヤーッ!」
「なッ!?」
カーチェちゃんも鬼ではないので1度くらいのアンブッシュは許しますが、ブッタではないのです。普通に2度目で怒ります。それをこう、何度も何度も繰り返されると……、腹に来ますよねぇ。
ということで空いた片方の腕で再度チョップ。彼の刀を粉みじんに破壊します。
「しかし相手が礼儀を軽んじるといっても、此方が欠いてしまえばムラ=ハチです。ということで……。ドーモ、里長=サン。カーチェです。さっさと里長の地位を私にプレゼントするか、朧月を渡すか、決めてください。」
「ぬぅ!? ゆ、許さんぞホクジョウの手の者め! わが孫のみならず、里すら手に入れようとする魂胆! こうなればもうここで討ち取って「ちょっと待って?」……え?」
いま、コイツ、なに、いいました?
ち、チロさん?
「なんかお孫さん亡くなられたみたいね。」
「は???????????????????????????????」
「い、今更何を言うッ! この恨み、はらさでおくべきか!」
え、原作キャラの小太郎くん死んじゃったんですか? は?
どうせ本筋にはあんまり関係ないので実質的に拉致して魔改造してちょうどいい前衛にするつもりだったのに? は? アイツ死んだの? や、役立たずが……! 本筋に関係なくても! 原作に出てるなら! ちゃんとストーリー始まるまでに生きとけよバカ!!!
「きぇぇぇええええええ!!!!!」
「ちょ、カーチェ! 来てる! 来てるわよ! ぶつぶつ言ってないでほら!」
「これで何人目? 3人? いた王女は復活させたから2人? ということは小太郎も復活させれ……、あぁダメだわこの地域火葬じゃん。確実に灰しか残ってないじゃん。んなのどう考えてもアンデッド化は無理じゃん。幽霊的なレイスじゃなくて、ゾンビとかスケルトンしか作れないわけだし。え、どうしよう前衛。他に探すっていっても生まれが解ってんの小太郎ぐらいだったのに、どうすんのよ。チロさんみたいにまた拾う……、いやこのレベルがごろごろ転がってたら原作開始時に魔物に押し込まれることなんて起き得ないし、そこら辺のモブを育成するとなると、色々と面倒ごとが増えるし、私の睡眠時間減らされるし、そう言うのは困るし。となると私が前衛? いやできなくもないけど、役割分担があるし、嫌だし、多少ある補正からもどっちかというと魔法系なのは解ってるから、やっぱり前衛は合ってないというか、どうしようもないというか。やっぱりあのクソルールとかいう主人公が爆散したのが全部悪いというか……。」
「死ねぇぇぇええええええ!!!!!」
あぁもう煩いッ!
いま私考え事してるでしょうがッ!!!
即座に思考を切り替え、不埒者に対する迎撃へ。
印を踏まずそのままカラテ奥義、『ジェット・ツキ』を敵の丹田全てに叩き込みます。そして相手が吹き飛ぶよりも早く、更に攻勢。伝説と謳われるカラテ技、『サマーソルトキック』を使用。
そしてこちらも空中へと飛び上がり、敵の肉体をしっかりと羽交い締め。屋根を打ち破り、より高度を上げながら大空へと到達した瞬間。真下へと降下します。そして仕掛けるのは、
回転。
回転。
回転。
読者の皆さんの中にニンジャ動体視力をお持ちの者がいれば、理解して頂けたでしょう。
そう、これぞかのテキサス革命の闇の英雄『デスフロムアバブ』が生み出した暗黒カラテ奥義。
『アラバマオトシ』
ニンジャではなく、単なる忍者でしかない敵に対処できるはずもなく。一切抵抗できず地面に叩きつけられる下手人。
無論私もウケミ、それこそエンシェント・ウケミを取らなければ同じ目に合ってしまうのがこの技。少しでも失敗すれば同じ目に合ってしまいますが……、自身はフウマというスゴイツヨイ級ニンジャでありながら、未だニュービー。高度なウケミを扱えるほど修練は積んでいません。
だからこそ使用するのは、ウケミではなく虚空移動。
打ち付けられる瞬間に世界に強烈な負荷をかけることで、地面の当たり判定を無効化。そのまま虚空世界に入ることで勢いを殺し切り、そこから浮き上がることで元の世界に帰還することに成功する。
まさにワザマエ!
……まぁ、技を掛けたのが里長じゃなかったらの話ですが。
「あ、やべッ!?」




