50:いざ鎌倉
ということで色々準備を整え、早速旅に出たわけですが……。
「なんでチロさんそんなにボロボロなんですか?」
「あ、アンタがご両親への説明全部私に投げつけたからでしょうが……ッ!」
「そういえばそうでしたね。」
自身の両親は、真面な人です。未だ五歳児である私がまた長期の旅に出るとなれば、止めるのは必至というものでしょう。しかも私は、前回の遠征で色々やらかして来た実績があるのです。
最終的に『カーチェの可愛い冗談』ということで収まりはしたのですが……。それをもう一度するとなれば、確実に止められてしまう恐れがありました。ということでチロさんを生贄に捧げ、無理矢理許可を勝ち取った形に成ります。まぁとりあえず何もなく送り出してくれましたし、何とかなったと思っていたのですが……。
「何とかなってたらここまで疲労してないわよ……ッ!」
まぁそりゃそうですよね。
チロさんボロ雑巾みたいになってますし。
あ、何話したかは聞きたくないのでスルーします。
「させると思う?」
「……新型ボブを差し出すので勘弁してください。」
「いらないわよそんなの!?」
え、このボブすごくいいのに。大丈夫ですか?
アンデッドの中から骨だけになったものをかき集め、一体の存在に構成し直した超高級ボブですよ? これまでのフレッシュな腐肉ではなく、全て研磨した骨で構成されているので匂いは100%カット。命令も細かく丁寧に打ち込んでいるので家事に洗濯料理まで。なーんでもお任せできる万能ボブです。
完璧な執事を目指して作成したので、セバスチャンならぬ『ボブチャン』という名にしたため変に聞こえるかもしれませんが、すごくいいアンデッドなんですよ……? これ一体で生活が凄く豊かになります。
「アンデッドが人類の敵ってこと覚えてる? こんなの侍らしてたら即討伐対象に成るわ馬鹿。」
「便利なのに……。ベットメイキング能力とか凄いんですよ? ほら見てくださいよ馬車に設置した私のベット。すっごい綺麗。」
「あぁ確かに。ってアンタいつの間に馬車を寝室に作り替えたの!? こんなのもう移動式ベットじゃない!?!?」
あ、これですか?
馬車の中でずっと寝転がっているのも辛いと思ったので、荷台の部分にマットレスを敷き、ついでにサスペンションや防音設備を追加しておきました。ボブを部品に使っていますので、馬車自体がアンデッドになったようなものですけど……。これで移動中も快適にお休みできるって寸法です。外から見れば単なる何処にでもある馬車ですが、中に入れば快適な空間。ロマンあるでしょう?
別にもう他人という関係性でもないですし、チロさんでしたら一緒に寝てあげてもいいですが……、どうします?
「……私何に突っ込めばいいの?」
「さぁ?」
「さぁってアンタ……。」
はい、ということで話題を消し飛ばすことに成功したので、今回の旅の目的をご説明していきましょう。
「まず今回お邪魔する『忍者の里』ですが、ご存じの通り追加DLCで増えたマップになっています。」
「ご存じじゃないし、消し飛ばされてもないわよ。」
「一応DLCが来る前にも忍者系列のジョブは有ったのですが、とあるキャラ固有の職業だったんですよね。それがDLCによって解放され、ついでにそのキャラの故郷に行くという体で幾つかのクエストが追加された形になっています。」
まぁ職業単体で見れば『物理と魔法の二刀流』であるからこそリソースが割かれてしまい、特化した職業に劣るというのが忍者系列の職業なのですが……。今回の目的である『とある武器』を入手することで、評価が一変する職業でもあるのです。
「名を『朧月』。忍者系の職業に就いたものが使用した場合。『常時二回攻撃』が可能になる武器です。早い話、物理攻撃に限りますが、一回攻撃すれば二回分のダメージが算出されるってやつですね。なおスキルを使用した攻撃にも適用されます。」
「……えぐい武器ね。」
「でしょう?」
原理的には、刀身が朧というはっきりしない形状であるからこそ、実際に振るった攻撃と相手が視覚的に認識した攻撃。その二回のダメージが通るとかいう奴のようですが……。まぁそんなフレーバーテキストはどうでもいいのです。
単にダメージ効率が倍になる。それだけで抑えておいて損はない武器に成ります。
「あ、ちなみに『秘伝忍法』というスキルは『自身を忍者系職業についていることにする』という効果があるので、物理特化型の職業に就いた後、『秘伝忍法』と『朧月』を持たせるのが主流になってましたね。」
「なんかもう無法ね。」
「でしょう? 物理前衛職なら取るべき職業です。」
まぁ私としては忍者も朧月も“途中経過”でしかないですし、前に出て敵と戦う面倒そうな前衛職なんかかけらもしたくありません。いつか正式な前衛職を見つけてくる必要があるのですが……。今チロさんにそこまで説明する必要もないでしょう。
とりあえず私が今、『忍者』であることが重要なのですから。
「というかカーチェ、そんなヤバそうな武器ならさ。その『忍者の里』でもお宝みたいな扱いになってるんじゃないの? 王墓の時みたいに盗むのは無しだからね。あ、あとその里のトップをアンデッドにして洗脳するってのも。」
「しませんよ? 私を何だと思っているので?」
「アンタの所業を羅列しただけだけど?」
チロさんの言う通り、『朧月』は里の重要な武器。里長がしっかりと守りを固め保管している武器になっています。
急に外部の人間が来て「それちょーだい!」と言っても「は? 死ね?」と返されるだけでしょう。別にそこから戦闘になったとしても、私とチロさんなら軽く制圧できるでしょうが……。普通に戦闘が面倒です。より効率よく物事を運ぶ必要があるでしょう。
「里長が保管しているのなら……、早い話。このカーチェちゃんが里長に成ればよいのです。」
「……は?」
今の私は、風魔。つまり忍者で一番強い職業です。
原作の方でも語られていましたが、忍者という過酷な職業に就く者たちが集まるのがあの里になっています。つまり強さこそ至高であり、長の印になっています。まぁそれ相応の面倒ごとも増えるでしょうが……。武器を確実に手に入れるには、これが一番速いのです。
「あと管理が面倒になれば王女に投げとけば何とかなるやろ、っていうのもありますね。アレなら上手い事やってくれるでしょうし。」
「そう上手くいくとは思わないんだけど……。」
「ちなみに忍者ということで和のテイストが強調されたマップに成りますので、和食を食べることが出来たりします。無論、和菓子も。……チロさん興味ありません? 食べたことのないその土地独自の絶品お菓子。甘~いあんこたっぷりのおはぎとか、もっちり練り込まれたお団子とか。すごーく美味しいですよ……?」
「早く行きましょう。爆速、爆速で!」
「まぁ普通に国外にあるので馬車でいくと4カ月くらいかかるのですが……。」
「…………虚空移動ッ!」
「2時間ですね。」
「………………そ、それぐらい耐えきってやるわッ!!!」
「話が早くて何よりです。ではボブバイクで参りましょう。」
ではでは、楽しい虚空ツーリングと行きましょうか。いやはや、にしても久しぶりの日本食。ちょっと楽しみですよねぇ。お味噌食べたい。
カーチェは麦味噌派できゅうりと一緒にポリポリしたい派です。
次回以降、怒られたら内容を差し替えます。




