44:魔改造のチロ
「しゃオラァ! オラ! オラ! 私最強! 最強! 死ねクソモンスター!!!」
「おぉ、仕上がってますねぇ。」
「クソカーチェも死ねぇ!!!」
「あらら。じゃあマッスルボブ君。やっちゃってください。)
「ギャッスル」
ちょっと暴走し始めていたチロさんの首筋をマッスルボブ君に狙わせますが……。流石最強を名乗るだけはあるのでしょう。しっかりと片手で受け止め、爆炎を放射。一瞬にして火だるまにしてしまいました。
しかしこちらもその程度想定済み。マッスルボブを生贄にチロさんに近づいていたスケルトンボブが彼女の首筋を強打。確実にその意識を刈り取ります。
うんうん、一発は不意打ちに耐えれているようで何よりです。本音を言えばスケルトンボブも撃破し、実は地中に潜んでいたアシュラボブも排除して欲しかったんですが……。ま、レベリングを強要して疲れていたのです。今この瞬間だけは勘弁してあげましょう。
あ、ちなみにアシュラボブもやられていたら、私が手ずから気絶させてました。
「いやはや、にしても人って転職させた後更にレベリングさせると、凶暴になるんですねぇ。どうせ目を覚ましたら元に戻っているでしょうから暴れて貰っても構いませんが……。帰るのにまた“虚空”通る必要があるので、寝ていてもらっていた方が楽なんですよね。」
先程も言いましたが、ちょっと前までのチロさんは下級職。最下級、下級、中級、上級、最上級。5段階ある職業の中で、2段階目に位置していた存在でした。
まぁそんな状態で辺境伯など倒せるわけがありませんし、そもそも魔王どころかその前の四天王すら難しいレベルです。経験値おじさんが嫌だというのなら、メタル系に位置する『ますたーおもち』を虐殺することで強くする以外の方法はありませんでした。
「というわけでまぁずっとレベリングさせてたんですけど……。うん、スキルビルド以外はちゃんと出来ましたね。」
というわけで、チロさんの“現在”のステータスを見る前に、ちょっとばかしご説明を。
まず彼女は、これまでの傾向からMPやM.ATKの伸び率が良いタイプ。つまり魔法型の成長率を保有していました。これでHPやATKなどの近接系の伸びも良ければオールラウンダー系への転職も考えたのですが……、まぁ案の定というべきか、全然伸びてはくれませんでした。
ま、典型的な後衛魔法タイプってわけですね。
「んで肝心の転職ルートなのですが……、途中からちょっと精神が壊れて暴力性が上がって来ましたので、凶悪なDLC追加職業は一旦後回しにし、通常の職業。正規のルートを辿ることにしました。」
下級の『魔法使い』から中級の『魔導師』、上級の『賢者』って感じですね。まぁ全部スキルが雑魚なので基本的に転職する意義は無かったのですが……。今のチロさんの職業。最上級職であるアレに繋がると考えれば、お釣りが来ます。
とと、お待たせしました。ではでは、まだ魔改造の途中ながら頑張っておもちをしばきまわしたチロさんの雄姿をご覧に入れましょう。
ステータス、です。
[STATUS]
Name : チロ
JOB : エスカルラ
Level : 3
EXP : 116 / 68791
HP : 18 / 26 (+5)
MP : 25 / 44 (+13)
ATK : 11 (+5)
DEF : 15 (+7)
M.ATK : 29 (+11)
M.DEF : 25 (+14)
SPD : 13 (+3)
LUK : 0
SKILL : 魔法
範囲魔法
上級魔法
獄炎
「はい、というわけで魔法系の最上位職。地獄の炎を操る『エスカルラ』に転職してもらったんですが……。やっぱチロさんもモブよりな人なのでクッッッソ弱いですね。はい。」
いや、獄炎っていうスキル自体は強い方なんですよ? 習熟度上げて奥義さえ覚えてしまえば、自己バフ乗せた後なら邪神もワンパンいけるんですから。ですがまぁ、ちょっと数値の向上が渋くて……。主人公などの原作での強さを考えると多分中級職レベルですね、コレ。名前だけ最上級職です。
雑魚です雑魚。
「というわけでテコ入れするために、やってきました天使のお部屋。やっほテーちゃん。」
「おわ人の子ッ!?!? ……べ、別に来るのは良いのだが、真後ろに出現するのは控えてくれぬか?」
「出現位置はこちらから指定できないので、我慢してください。」
久しぶりの再会を背後からのアンブッシュで驚かせながら、チロさんの首根っこを掴みながらこの空間にやってきます。アイテム欄に天使像がありますので、いつでもここに来ることが出来るんですよねぇ。
どうやらお仕事に集中していたようで、酷く驚かせてしまったようです。気味の悪い目玉の集合体が驚いているのを見るのは趣があって良いのですが……、今はチロさんの魔改造タイム。彼女が寝ている間に色々と済ましてしまいましょう。
というわけで取り出すのは『誓約書』。レベリングの際に命の危険性しかない場所に長期間放置したせいか、私への暴言しか吐かなくなった時間帯に書かせたものをお見せします。
「人の子よ、その赤髪の方の人の子は絶対に休ませた方が……。うん? なんだこれは。」
「誓約書です、内容を纏めると『チロさんが意識のない時はカーチェが勝手に転職させてもいいですよ~』ってやつです。」
「えぇ……。いやでもちゃんと本人が書いてる奴だな。う、うむ。正直許可しちゃいけない気がするけど、書類に上がっている以上許可しないといけない奴だな、うむ。では転職……、でいいのだろうか?」
「えぇその通りです。チロさんを最下級職の村人にしてあげてください。」
「…………その赤髪の人の子、悪い事しちゃったのか?」
そう言いながらカルマ値を確認するテーちゃんでしたが、善寄りだったことで『え、じゃあ何で無理矢理弱体化させるの?』みたいな視線を送って来る彼。私のカルマ値がマイナスに振り切っているせいか、確実に私がチロさんを騙して悪事を働こうとしているように見られていますが……。
よくよく考えてくださいよテーちゃん。お昼寝時間を確保することに命を懸ける私が、他人の嫌がらせとか言う非効率な行為に手を出すと思いますか? そもそも私は身内に優しいタイプなのです。ほら見てくださいこの曇り無き眼、嘘なんかついてないでしょう?
「確かに曇ってはないが、一切の感情が見えなくて逆に怖いのだが。」
「まぁ早い話、やり直せばもっかいレベリングできるんですよ。」
最上位職はそのスキルの強さから求められる経験値が高くなってしまうというデメリットがあります。まだ発売された当時は『戦闘前にセーブし、求める数値が来るまでやり直す』とかしていたのですが……。とあるDLCが無料公開されて以降、とにかく試行回数を増やす方向にシフトし始めました。
そう、最下級職という必要経験値の少ない『村人』に転職できるようになる追加DLC『お前はさっさと実家に帰って家の畑を継げ』ですね。
ステータスそのままに村人から開始できる“強くてニューゲーム”みたいな奴です。
「うわほんとにその名前のDLCある。……え、神? なんでこんな変な名前に? 他のもうちょっと凝ってるのに、なんでこれだけ???」
「プレイヤーたちが『やり直させろ!』ってクレーム送り過ぎたせいで、製作陣がキレながら実装したからですね。『お前らゲームなんかしてないで実家帰って親孝行でもしろやボケェ!』という謎のキレ方をしながら発表されたので、私も印象に残っています。」
「あ、あぁ。まぁ確かに親孝行は大事ゆえな……。何の話だ???」
ということで未だ困惑しているテーちゃんの目玉にチロさんの手を乗せ、勝手に転職を開始。
無事最下級職の『村人』に戻り、次のレベルまでの数値が“5桁”から“3桁”になったことを確認し、すぐに転職の空間から飛び出します。テーちゃんには悪いですが、チロさんが気絶している間に色々終わらせたいですからね。だってこの人私が何かするたびに大きなリアクション返してくるのだもの。
普段はそれを見て楽しんではいますが、レベリングという作業の時間中に邪魔されたら面倒なのです。ささ、手早ーくやっちゃいましょうね。
「でじゃアンデッドを大量に出しまして……。ボブバイクも一台取り出します。後はそれにチロさんを乗せて、アンデッドで固定して、おもちレベリングに必須な『シャルロットナイフ』を持たせれば、はい完成。チロさん専用、『全自動経験値バイク』でーす。」
なんとこちらのバイク、先ほどまでチロさんが人力で行っていた作業。
回転しておもちが出てくるまでマップ切り替えをする、見つけたらバイクを走らせて接近する、ナイフを使って敵を撃破する、後は他の敵と接敵せずに帰って来る、というややこしい作業を全てアンデッドがしてくれるという優れものなんです!
ただまぁ、アンデッドが無理矢理チロさんの身体を動かすので、傍から見たらアンデッドの群れにチロさんが飲み込まれているというか、死体で出来た巨大なバイクの中にチロさんが埋め込まれているみたいな形になってしまうんですよね。
その分、死体の匂いとか体液とか触感とかがダイレクトに伝わってくるのですが……。
「ご安心ください。何せ今のチロさん。気絶してるんですもの。」
意識がない間ならいくらでも出来る優れものなんですよねぇ。
はい、後はボブバイクを発進させて、レベリングと転職を繰り返していけば……。
[STATUS]
Name : チロ
JOB : 魔法使い
Level : 1
EXP : 0 / 101941
HP : 5 / 42 (+16)
MP : 25 / 79 (+35)
ATK : 26 (+15)
DEF : 33 (+18)
M.ATK : 59 (+30)
M.DEF : 57 (+32)
SPD : 23 (+10)
LUK : 0
SKILL : 魔法
範囲魔法
上級魔法
獄炎
「うんうん、イイ感じになりましたねぇ。状況次第では普通に王女にも勝てるんじゃないですか? 転職させ過ぎたせいで要求される経験値が6桁に成っちゃいましたが、まぁ大丈夫でしょう。」
魔法使いという2段階目、下級職故に必要経験値は低めですが、そもそものレベルアップ回数が多すぎるため倍率が掛かってしまい、6桁に成っちゃった奴ですね。
一応ここからスキルなどの厳選をしていく必要があるのですが……。まぁコレぐらいならおもち連打でも何とかなりますし、チロさんが受け入れてくれるようでしたら今後製作していく『全自動経験値おじさん魔王バージョン』を使用して爆速で上げればいい話です。
あ、ちなみにですが例の『経験値おじさん』もリニューアルしてまして、『自分で自分の首を落させる』作業を繰り返した結果、『盗賊』のレベルをカンストさせ、『大盗賊』へと転職。吐き出す経験値量を向上させるという方法に成功しています。テーちゃんからバケモノを見る様な目で見られましたが、バケモノはそっちの見た目なんですよねぇ。
「と、話が逸れてしまいましたね。ではでは。チロさんを叩き起こす前に……。一度帰りますか。」
ということで大量に出しておいたアンデッドたちにダンス、キレッキレのブレイクダンスを踊らせることでこの場の負荷を増大。チロさんの首根っこを掴みながら再度虚空へと侵入し、家の近くにある捨て去られた墓地。経験値おじさんのホームに戻ってきます。
後は適当なボブにチロさんを叩き起こすように指示すれば完了ですね。
……あ、バケツの水ぶっかけるんですか? いいですけど窒息とかしないように注意してくださいね? 最悪死なれても利用は出来ますけど、王女のように変なバグり方してくれるとは限りませんし、『ギャ』とかしか言えないチロさんは全く面白くありませんから。
「さてはて、どんな反応してくれますかね?」




