41:確定演出
「カーチェ?」
「なんですかママ。」
「聞かされていた予定より、二カ月ぐらい到着が遅れたような気がするのだけれども。」
「誤差では?」
「パパもママも、心配していたのだけど。二カ月よ二カ月。」
「……それは正直に申し訳ないですね、はい。」
というわけでようやく帰って来た故郷なのですが……、迎えてくれたのはニコニコのパパママではなく。完全にキレちゃってるママでした。いやまぁ、確かに二カ月はやり過ぎましたかね?
い、いやほんと色々あったんですよ。言い訳、言い訳させてください。
まず寄り道してカジノに行ったでしょ? そこで乱数調整してお金稼いだ後、レースで馬鹿勝ちして、マフィアに喧嘩売ってその組長虚空に叩き落して、王都で貴族の真似事して、王墓に忍び込んで盗掘して、そこで王女復活させて配下にした後王国関連のこと色々お任せて……。うん、色々あったんです。
お昼寝というか、何もせずだらだらしてた日が大体2カ月くらいあったので遅れてしまいましたが、本当に色んな事したんですよ? まぁ全部そのままいえるわけないので、全部ぼかしますが。
「……なんかぼかされた気がするけど、今お昼寝に二カ月とか言ってなかった?」
「ギク」
「つまりもうちょっとシャキシャキ動いてたら早く帰って来れたという……、ことよね?」
えぇまぁ。そうなりますね。
ただ私も、最大限頑張って早くお家に帰って来たのです。ママも知ってるでしょう? 私がお昼寝しなかったら死ぬって。いや死にはしませんけど、精神がとても疲れてしまうのでお昼寝しなきゃ人生やっていけないって。それにそれに、ほら見てくださいよこの物資たち。パパも大喜びしてるでしょう?
「す、すごいぞママ! 壊れた粉挽き小屋用の資材だけじゃなく、村の防壁を強化する石材まで入ってる! 嗜好品どころか普段の食料もあるし、これは新しい作物の種かい!? それにそれに、古着だってたーくさんあるじゃないか! 防衛に使える質の高い武器もあるし……! これ全部、カーチェが買ってきたのかい!?」
「えぇ稼ぎましたので。」
「すごい、凄いぞカーチェ! キミは大天……」
「ぱぱー?」
「ア、ハイ。ナンデモナイヨ、ママ。」
あらら、折角色々買い込んできたというのに、頼みの綱のパパが撃沈してしまいました。
元々大量に物資は買い込んでいたのですが、全て「アイテム欄」に収納していたため、そのまま村に持ち帰るのは少々難点がございました。一応ですが、私の「アイテム欄」はチロさんの勧めにより隠していることになっています。そのため両親にも説明が面倒なので隠しているのですが……。そうなると、偽装が必要になってくるのです。
いやまぁばらしてもいいんですけど、他の村の人にもバレてしまった場合、この情報を何処かに売り払っちゃう可能性もあったので、隠している感じです。
ということで大量に馬車を買い込み、アイテム欄に入れていた物資をそちらに乗せ換え。人目のない所は量産したボブバイクで牽引し、人目のあるところでは牛さんに頑張ってもらってよちよちかえって来たのですが……。全部無駄になりましたね。
パパもママも喜んで遅れたことを帳消ししてくれると思ったのに。
「ねぇ、カーチェちゃん。ママ遅れるのならお手紙の一つぐらい送るように言ってたよねぇ?」
「ですねぇ。」
「なんで送らないの?」
「めんどう。」
「お尻しばき倒しましょうか?」
「ごめんちゃい。」
ぴえ、怒ってるママ怖い。
いやまぁ確かに悪いとは思ってたんですよ。絶対酷く心配させちゃってるだろうし、連絡入れた方がいいよなーってことは。ただそもそも、この世界で手紙が届くことは酷く稀です。同じ町の中ではほぼ確実に届くでしょうが、町から町へとなれば、各段にその成功率は下がるのです。
何せお外には魔物がわんさかいますし、盗賊さんもいっぱい。最近は地面を赤く染めながら高速で走り回るアンデッドの馬車隊が出没したという噂まであるのです。お手紙なんて出しても、届くわけがないのです。
だからまぁもういいかな、って。甘えちゃったわけですねぇ。
「ま、まぁママ。カーチェも反省しているようだし……。」
「反省してないですよこの子? たぶん同じことやらかしますし、ぼかしたところで絶対に変なことやって帰って来てます。顔にかいてありますもの。『やらかしました』って。」
「……いつもの無表情じゃないかい?」
「後ろで控えてるチロさんの顔を見ても?」
「うわ滅茶苦茶何とも言えない顔してる。……え、えぇ? カーチェ、ほんとに何やって来たんだい?」
あら。チロさんの顔で全部バレてしまいましたね。いやまぁ彼女に表情を隠すなど絶対に不可能なので仕方のない話なのですが、こうなるのだったらお顔の形が無くなるまでボコボコに殴っておけばよかったです。……しませんよ? ジョークですジョーク。
ま、バレてしまっては仕方ありません。お二人に伝えても大丈夫そうな話だけお伝えすることにしましょう。
「そうですねぇ……。王女洗脳して王国乗っ取る準備を完了してきました。」
「…………キュ」
「あ、パパ倒れた。」
「か、カーチェちゃ~ん?」
「あ、ママもっとキレた。」
うーん、話題選択間違えましたか。
やはりここは『レース負けた人を煽動してヤクザ事務所にカチコミ仕掛けた』って言った方がインパクトがあって良かったかもしれません。
え、どうしたんですかチロさん。天を仰いで頭抱えちゃって。え? 直前に考えたカバーストーリー? んなもん聞いてませんし、覚えてませんよ? というか村到着するまでずっと寝てたので。たぶん寝言の私と話をしていたのでしょう。哀れ哀れ。
……というかなんでパパママ普通に信じちゃってるんでしょうね? 普通五歳児がそんなこと言っても戯言で済ますじゃないですか。え? 私が言うと嘘になんか思えない? 確かに! じゃあ事実に事実を重ねて更に両親を怖がらせましょう!
「あ、それと。近いうちに私が公爵、チロさんが伯爵ぐらいの爵位を貰うことに成るみたいです。ソフィちゃん、あぁ王女様にさっき念話で報告されました。なんか一代限りの奴みたいですけど、毎年お金がもらえるいい感じの奴みたいです。凄いですね。」
「え!? 私貴族になるの!?!?!?」
「か、カーチェちゃ~~~~~ん??????????」
なんかあの子によると『貴族と平民の身分差が酷いので、お渡ししておきます。これでどこに行っても主様が不快に思われるようなことは起きないかと。本当のところ言えば即座に王位をお譲りしたいのですが……。不出来な自身をお許しください』ってことらしいです。
ちなみにまったくお仕事のない感じの貴族なので、ほんとに『偉さの証明とお金貰える』だけの爵位に成ります。私にとっては最上の称号なのですが、ソフィちゃんからすれば微妙な感じらしいですねぇ。
ま、そんな感じです~。
「……とりあえず、お説教ね。」
「そこを何とかなりません、ママ?」
「なると思う?」
「思いません。」
カーチェちゃん、お説教決定!
「あ、チロさんもお説教ですからね?」
「ふァ!?」
「監督責任」
「ア、ハイ。」
チロさん、お説教決定!
良かったですねカーチェちゃん、死霊術師になって人類の敵ポジションになったことはバレてないよ! まぁそんなこと両親に言えるわけがないのですが。




