40:あとしまつーです
はい、というわけでその後の話をしていきましょう。
まず初代国王が宿っていたゴーレムですが、コアを破壊したことで完全に機能を停止。その魂もどっかに行ってしまった感じになります。たぶん成仏したか消滅したかのどっちでしょう。
王女のソフィは別に気にしていないようでしたが、ラストアタックを決めちゃったチロさんはちょっと複雑そうにしてましたよねぇ。まぁ自分の住んでる王国、その建国の英雄である初代国王の魂をぶっ壊しちゃったわけですから、仕方のない話かもしれません。
こっちの感覚で言うと、蘇った信長を始めとした戦国オールスターズ全員自分の手で殺しちゃった、とかでしょうか? ……いやこれはこれで誰かに自慢できそうですね。
『い、勢いでやっちゃったけど大丈夫なのかしら。』
『安心しなさい愚民。主様に歯向かうものなど存在する価値もないのですから。』
『……元王女が言うならまぁ納得するけど。あと愚民って呼ぶの辞めてくれない?』
『嫌です。』
ということで私たちは王墓に眠っていた金銀財宝、そのすべてを手中に収めることが出来ました。今後の攻略に有用なアイテムも手に入りましたし、若干減り始めていた『アイテム欄』の資金も大幅に増やすことが出来た形に成ります。おそらくこれで、もうお金に困ることはないでしょう。
ですが今回の戦いは、お金やアイテムがメインではありませんでした。
わざわざコアの破壊という手間をかけてゴーレムを破壊したのは、『王墓を守る警備ゴーレムの主導権を奪いたかった』からです。
『そこまで数は多くありませんが、普通に“兵力”として有用ですからね。ソフィにプレゼントして、この国をより万全にするために上手く使ってもらいましょう、って感じです。後々それ以外にも使えるかもですしねー。』
『主様のご期待に応えられるよう、全力を尽くします。』
既に副葬品の金銀財宝はこちらで回収しましたし、今後賊が入ろうとも待っているのは王家のロイヤルな死体だけです。一瞬そっちもボブにしようかと思いましたが、王女というイレギュラーがいますし、『王家全員がなんかヤバ気な特殊アンデッドになる』となればちょっと管理が面倒なので、そのまま寝てもらうことにします。
まぁさすがに守る者が誰もいないというのはかわいそうなので、暇をしていたボブ達を何人か強化合体させて守護者として置いておきますが、そうなるとゴーレムたちの仕事が浮く形に成ります。
だからこそ再就職先として、王女の所に投げつけるってわけです。
『というわけでソフィ、心臓貸してください。』
『いかようにもお使いください。』
『…………なにしてんのアンタら。』
『この警備長ゴーレム、初代国王が宿っていたコアの代わりに、ソフィの心臓を埋め込むんです。そしたら……。はいできた。』
急に再起動する、警備長ゴーレム。ちょっと顎でソフィに指示してみれば、想定通り彼女が自由に動かせるようで、ゴーレムと共に深い臣下の礼を送って来てくれています。
はい、これで王墓にいたゴーレムたちの主導権は、全部王女のものに成りましたね。
コアの代わりにアンデッドの心臓を使う。流石カーチェちゃん、頭良い!
『あとおそらくですが、ソフィの弱点は今ゴーレムに埋め込んだ心臓のはずです。アレを破壊されたらアンデッドとして死にますので、一旦分離してゴーレムの中に安置した、って感じですね。あ、ついでにさっき拾った財宝の中で使えそうなのがあったので、それで補強しておきました。』
『……つまりゴーレムに埋められた心臓を破壊しなきゃ、王女倒せないってギミック?』
『流石チロさん、鋭いですね。』
今回は無敵と血魔法の小細工をもって撃破しましたが、この警備長ゴーレムはそもそもかなり強い存在です。
物理魔法半減が付いてますし、そもそものステータスも高い。再度敵対されれば面倒な相手ですし、味方に成れば頼もしい存在。だったら味方にして更に強化してしまえばよい、って話です。
『というわけで副葬品の中から見つけた防御力・魔法防御力向上のアクセサリーをぶち込んで更に強固にしました。追加してフレームの強化も行ったので、さっきのようにコアを露出させて破壊することは二度と出来ないでしょう。ついでに魔力の自動回復も組み込みましたので、ソフィちゃんがクソ強化されましたね。』
『やば。』
『そ、それほどまでに我が身を思ってくださるとは……! こ、このご恩! 絶対に忘れませぬ!』
とまぁこんな感じで、王女が何者か。それこそ私の敵である魔王とか邪神とか辺境伯とか、あと王女のことを殺しやがったあの公爵に再度狙われても、絶対に死なない状態に出来たわけです。
……ま、一応保険として他のアイテム。王女が敵対した時に備え、私が指示するだけで確実に彼女の心臓を破壊するアイテムも置いておきましたが、別に話す必要はないでしょう。
あまりにも私に狂信的なのでそうそう裏切ってくることは無いと思いますが、此方の配下が敵に持っていかれるとかよくある話ですからね。その対策です。
『では帰りましょうか。チロさん、あのお店貸し切りにしますから好きなだけ食べて良いですよ。あとソフィは、これから大変でしょうが頑張るように。必要なら手を貸します。』
『ほんと!!!』
『必ずやこの国を主様に。』
とまぁこんな感じで王墓から脱出しまして、別行動が開始。
私とチロさんはいつも通りの2人組で行動して、この前食べにいったお店の予約に。
王女様は大量のゴーレムと共に凱旋しながら、王城に向かった感じになります。
「それでまぁ、今日がようやく貸し切りできた日なのですが……。」
「うま! うま!」
「……ちょっと不安になりますね。これは。」
スイーツでおかしくなってしまったチロさんから目を逸らしながら、紅茶を嗜みます。
多分これまで溜まったストレスを暴飲暴食と砂糖で消し飛ばしているのでしょうが、量が量です。積み上げられた皿の数はもう数えたくありませんし、何故か厨房の方から悲鳴が聞こえます。かといって今無理矢理止めたら全身まるかじりされそうで、止めることもできません。
「時間も停止する『アイテム欄』があるので、余った分はそこに入れて後日食べるという形にするつもりでしたが……。」
「おかわり!!!」
「これだと余る前に、パティシエさんがノックアウトされそうですね。」
確かに、出て来た菓子が文字通り吸い込まれていくので見ている分には面白さがあるのです……、作ってる側からすれば恐怖でしかないでしょう。
あとですが、食べ始めたから1時間以上経っているのになんでこの人の体型は変わっていないんでしょうね? 既に5㎏ぐらいは腹に入ってそうなのに、一切膨らんでいないのは恐怖を覚えます。
まぁ貸し切りに合わせて材料費とか全部こっちで持つことになってますから気にしないでおくとしましょう。最悪、今の資金力と『王女の後ろ盾』さえあれば、店ごと全部買い取ることも可能なのですから。
そんな現実逃避をしながら、紅茶で喉を潤し、王女から送られてきた報告書に目を通します。
(……こっちもこっちで、やらかしてますねぇ。)
アンデッドとなって帰還した王女ですが、最初は一悶着ありながらも無事“復活した”と認められたようで、国王や王妃から号泣しながら迎え入れられたそうです。
どうやら王家の間では『初代国王がゴーレムに宿っている』ということは伝聞として残っていたようで、『初代国王様のお力により蘇った』ということで納得された様子。おそらく王女が“初代国王が入っていたゴーレム”を上手く使い、小芝居を打つことで丸く収めたのでしょう。流石ですね。
ま、さすがにアンデッドであることがバレると全部ひっくり返ってしまうので、その辺りは王女も隠しているようですが……。特に現状は問題ないみたいです。
「原作であったように、王都の区画整理などをはじめたそうですし、原作通りに進むところは進むのでしょう。……ジュポン公爵が即日で処刑されたことを除けば、ですが。」
まぁ自分を殺した相手をそのまま生き長らえさせる理由もなかったようで、帰還した直後にゴーレムを派遣。今回の王女暗殺に関わった者たち全てを捕縛し、その日のうちに処刑したご様子。身分の高くない下々たちはその場でゴーレムによって撲殺されたようですが、公爵などの身分の高いものたちはわざわざ見せしめとして、王都の広場で斬首されたとのことです。
かなりの人が集まっていたそうですが……、私は働き過ぎたことの反動で5日ぐらいずっと寝てましたのでどんな感じだったのかは知りません。ま、王女復活しましたし、死んだのならそれでいいでしょう。
ちょっと残念ではありますが、ね?
「あと普通に集権化を押し進めてますし、反対派の貴族や官僚をかなりの速度で処断してますね。完璧な状態で王国を私に献上しようとしているのでしょうが……。なんというか、流石王女ですね、手際が良い。」
普通、権力闘争などに負け処断された貴族や官僚は職を失い、その勝者である王女を恨むことになるのでしょうが……。流石原作で有能扱いされていた彼女というべきか、恨まれ過ぎないように上手ーくフォローを入れている様です。
新しい職を手配したり、生活が困らないように保護したり。よりうまいのが『弾圧した者たちが一か所に集まらないように分割している』ところでしょう。
徒党を組むことすらできず、徐々に今の現状を受け入れ何もできなくなる。ゴーレムたちという圧倒的な暴力だけでなく、彼女本来の頭脳も利用した方策。
「うん、蘇らせて良かったですね、ほんと。」
ま、そもそも彼女が死ななければ私が働く必要はなかったのですが。
……復活しアンデッドになった王女も調査し始めているようですが、明らかに公爵の裏には『何か』がいました。原作と今現在の世界を比較したところ、どうやら王家と貴族のパワーバランスはほぼ同じ。つまり通常であるならば『公爵がことを起こすことはない』のですが……、暗殺は起きてしまっている。
これはすなわち、彼の背後に『暗殺を決断させる理由になった何か』がいることに他なりません。
ゴーレムなどを派遣した際にそれを発見できればよかったのですが、王女からの報告には一切痕跡なしとのこと。表向きの存在である公爵やその配下たちは丸ごと排除したため、即座に“あちら”が動いてくることはないでしょうが……。警戒するに越したことはありません。
すでに動き出している魔王陣営か、邪神を信仰する狂信者たちか、それとも私の知らないDLC要素である辺境伯絡みか。何が原因かは解りませんが、問題が起きたとしてもすぐ対処できるよう、対策を練り準備しておく必要があるでしょう。
さらにお昼寝から遠ざかってしまいますが……、頑張らないとですね。
「ま、本格的に動き出すのは故郷に帰ってからですが。」
「ふぇ、かふぇふの?」
「えぇ、帰ります。ちょっと王都にも長居し過ぎましたからね。パパもママも心配しているでしょうし、さっさと帰ってお家でぬくぬくしながら適宜頑張る、って感じですね。あぁそれと、人の目もなくなるのでこれまで後回しにしていた説明もしてしまいましょう。」
「よふぉやくふぇ。まふぁしょうひき、なふぃふぃわふぇるかわふぁふぁんなふてふぁふぁいけど。」
「『ようやくね、まぁ正直何言われるか解んなくて怖いけど』、ですか? まぁ驚く話ではあるでしょうが、これまで文句言いながらもついて来てくれたチロさんなら問題ないかと。あと口の中にモノ入れて喋るなって何度言ったら解るんです?」
「やだ。」
や、やだって貴女……。マジでチロさんスイーツ関わると精神年齢下がりますよね。
はぁ、まぁいいです。色々と振り回してしまったのは確かですし、今日の暴食で発散して頂けるのならばそれに越した話ではありません。どうせ彼女が満足するまで時間がかかりそうですし、ボブバイクの調整と改造を頭の中で熟しながら待つとしますかね。
ようやく村に帰ります。良かったですねパパママ、何周りも大きく()なったカーチェちゃんが見られますよ。




