39:ぶんどどー!
「ボブバイク、突貫! ぶんどどー!」
「ギャギャギャ!!!」
「うわ速ッ!?」
いきなり超加速し、ゴーレムに突撃する私たち。
なんかタイヤにしてる生首から悲鳴が聞こえた気がしますが……。使い物にならなくなれば、新しいボブを追加するだけです。なんかすっごく倫理を凌辱している気分ですが、このバイクかなり有用ですからね。使い潰す気でやっちゃいます。
さて、ここで『天帝のアバンギャルド』における騎馬攻撃について解説いたしましょう。
無論このゲームにも馬や飛竜などの騎乗可能動物がいるのですが、それを乗って戦闘もすることが出来るのです。大規模マップでの騎兵突撃なんかが良い例ですね。んで、今いるこの場所のような開けた場所であれば室内でも騎兵突撃が使用可能になったりします。んで肝心のダメージ計算式なのですが……。
「速さ×質量×攻撃力! 実際は物理エンジンの関係で色々あるみたいですが……。大体こんな感じです! つまり速さこそ強さ! というわけで、てやー!!!」
「つか、つかむとこ! 掴むとこ無い! おち、落ちる! しぬぅぅぅ!!!!!」
なんか振り落とされそうになってるチロさんを無視しながら、ゴーレムに攻撃を叩き込んでみます。転職したとはいえ、未だ最弱な私の攻撃力を考えれば、単に殴っただけでダメージは通りませんが……。騎馬攻撃なら別。たぶんHPを1だけ減らすことが出来ました。
つまりこの警備長ゴーレムのHPが90なので、あとコレを89回繰り返せば私の勝ちですね。
……うん? どうしたのですかボブバイク君。あ、チロさんが本気で振り落とされそう。仕方ありませんね。では新しいボブの部品を追加して、チロさんの胴体をがっちりつかんでおいてください。あ、ついでに私の腰にも抱き着いておいてくださいね。振り落とされた瞬間に無敵時間が終わるので。
「ギャ!」
「な、なんか抱き着いてきたぁぁぁ!!!」
ボブバイクの裏側に出現するのは、新たなボブボディ。
そんな彼らがバイクと私達をしっかりと固定するように抱き着きますが……。傍から見れば首のない死体が急に抱擁してきたような状態。固定は出来ますが、異様に怖いことでしょう。チロさんが泣き叫ぶのも不思議ではありません。
そんなことを考えながら、ゴーレムの股の下を通り抜け離脱。方向転換して再度攻撃に移ります。
『ぬ、ぬぅ! ちょこまかと! だがッ!』
しかし、今回の敵は初代国王。好き勝手攻撃させてくれるほどやさしい相手ではありません。
足元を走り回る私を殺すため、その魂がゴーレムを躍動させてきます。あまりこの世界の歴史には詳しくないので知りませんが、武芸に優れた方だったのでしょう。何かしらの型に基づいた動きでゴーレムの拳を動かし、私の脳天目掛けて叩き込んできますが……。
響く、電子音。
直撃すれば即座に私の命を散らす巨神の拳が、弾かれます。
『なッ!?』
「無敵って言ってるでしょう? というわけで今度は連撃です。あとチロさん、仕事してください。当てるだけでいいですから。」
「あぁぁぁぁ!!! もう、もう帰ったらあの高いとこのスイーツ死ぬほど驕らせてやる! んで死ぬほど食べる! だからさっさと死ね、このクソゴーレムぅぅぅううううう!!!!!」
うるさ。……あとマジで食べ放題させてあげないと暴動起こされますね。帰ったら貸し切りの予約入れよ。
とまぁそんな感じで私が連撃を入れ、チロさんが大上段からの叩き込みをぶち込むことで、ゴーレムにかなりのダメージを与えます。数値にすればおそらく一桁代のダメージでしょうが、塵も積もればなんとやら。これを繰り返せば確実に勝てるのです。楽な作業ですねぇ。
ということで飛んでくる攻撃を全て無効化しながら、ちくちくちくちく……
む、“十分なダメージ”を与える前に動かれますね、これ。
『……原理は解らぬが、攻撃が通らぬことは理解した! ならば足を潰すまでよッ!』
そういいながら、今度は私ではなくボブ。バイクの方を狙って来る国王様。
即座にボブが反転し、その生首の断面から血をまき散らしながら回避しますが……。さすが初代様、鋭いですね。
この無敵時間ですが、搭乗者にのみ発生するバグであり、実は乗り物には適用されないというデメリットを抱えています。つまり乗り物を攻撃されると普通に通ってしまいますし、乗り物を無敵時間ループの起点としているため、破壊されると無防備になってしまいます。
まぁ所詮ボブバイクですので、死体のストックがある限り幾らでも用意できるのですが……。一定の手順を必要とする手前、隙が生まれてしまうのも確か。ボブ達をアンデッド化してバイクにしている手前、ゲームのようにこちらで指示を出すのではなく、ある程度自動で回避してくれます。
しかしボブは所詮ボブ。バイクの速度や小回りに限界はありますし、自動回避を延々とすることは不可能。私ではなくボブを狙われ続ければ破壊されてしまうでしょう。
『面妖な術を使うようだが、このゴーレムの前ではすべて無意味! 賊は賊らしく死に絶えるがいい!』
「ならば役に立たない死者はとっとと冥府に帰ってろ、と返すとしましょう。ボブ! 射出!」
「ギャ!」
私の掛け声と共に、高速回転しながら発射されるのは、バイクの前輪。
そう、ボブです。
バイクとして加工したせいか、本来もう出ることのない血を大量にまき散らしながら発射されるソレ。寸分の狂いもなくゴーレムの頭部に向かって打ち出されたソレは……、着弾する直前で、爆発をかまします。
そしてまき散らされるのは、大量の血液。
「ボブ換装! ソフィ! 解ってますよね!」
「勿論です主様!」
そう叫ぶと、帰ってくるのはそれまで潜伏していた王女の声。
彼女の意味不明なほどの狂信っぷりを考えると、私が戦い始めた瞬間に加勢し始めてもおかしくなかったのですが、此方で待機するように指示していた形に成ります。
実は『死霊術師』という職業には『作成したアンデッドと念話のようなもので命令を送ることが可能』って能力があるんですよね。それを利用した感じです。
さて、ではここで彼女の能力と、現在の“場”について思い出して頂きましょう。
まず王女、ソフィちゃんの保有するスキルですが『血魔法』というものが存在しています。自分の血のみならず、他者の血まで操ることのできる魔法、流石に他人の体内の血を弄れるようになるには一定の修練が必要ですが、地面に転がっている血液程度であればノータイムで動かすことが可能です。
そして、ボブバイクこと『アンデッドバイク』の特徴。
おそらく不気味さをアップさせるため、製作陣が追加したのであろう特徴。本来既に流し切っているはずの血液がその頭部から延々と流れ続け、通った後を血で真っ赤に染めるというもの。
「ここまで来れば、もうわかりますよね?」
ボブが走り回ったおかげで、このフィールドは血まみれ。さらに前輪ボブを射出し爆散させたことで、ゴーレムの身体には血が付着しています。
そう、すでにここは、王女様の独壇場。
「主様を愚弄したその大罪! その魂をもって償って頂く!」
『なッ! 体が!』
即座に彼女が血魔法を使用し、そのゴーレムの全体に巻き付いて行くソレ。
地面に広がっていた血がその足を固め、ボブによって付着した血がその腕を止める。出来上がったのは、もう何もできないゴーレムとそれに宿る初代国王のみ。
さぁ、後は簡単です。
「ソフィ、足場! あと“胸襟を開かせ”なさい!」
「ッ! 御意!」
そう指示した瞬間、私の眼の前に生み出される、血のジャンプ台。
そして私の意思を正しく理解したボブが、全速力でソレに向かって走り始めます。
「チロさん! 弱点に全力で叩き込んでください!」
「弱点って何処よ!?」
彼女がそう叫んだ瞬間、ゴーレムに付着していた血がソフィの手に寄って更に蠢き出し、聞こえるのは金属が軋むような音。徐々にその胸部が開かれていき、見え始めるのは真っ赤に光るゴーレムのコア。かの存在の心臓にして、初代国王の魂が宿る物体です。アレを破壊すれば……、こっちの勝ち。
もう、解りましたよね、チロさん。
「りょーかい! 魔法使いが物理攻撃って変な話だけど!」
「ジャンプまで3,2,1」
「ぶち殺してやるわァァァアアアアア!!!!!!!!」
ボブに乗った私達が空中へと浮き上がり、即座にボブの前輪と後輪をコアに向かって射出。ついでに私の斧も投げてみれば、ようやく見えたコアの罅。
其処に向かって、チロさんが剣を差し込めば……。崩れ落ちるゴーレム。うんうん。状況終了ってやつですねー。




