38:いいよねバイク
「んでカーチェ、この扉の先だけどさ……。絶対なんか強めのボス出てくる感じじゃないの?」
「復帰早いですねチロさん。てっきりずっとウジウジ悩んでいるものかと。」
「アンタのせいよッ!」
両手を上げてまた怒り始めたチロさんを一旦無視しながら、この王墓に眠るボスのことを思い出していきます。
彼女の言う通り、この扉の先にはボス。王墓というダンジョンのボスが存在しています。その名は『魔導警備長ゴーレム』。名前の通りこの辺りをウロチョロ歩き回っていた警備ゴーレムのトップであり、通常のゴーレムと比べ3倍ほどの強さを誇っています。しかも警備ゴーレムと同じ魔法物理半減などの特殊効果も保有していますので、真面に戦えばアンデッドになった王女がいても勝つのは難しい相手です。
「……3倍?」
「あ、主様? 御身の安全を守り切ることが難しくなってしまいます。どうか再考願えませんでしょうか?」
「ん? あぁ大丈夫ですよ。たぶんそのまま引き渡してくれると思いますし。」
実はここのボスですが、初代国王の魂が乗り移って動いてる感じのゴーレムになっています。確かにクソ強いのは確かですが、ゴーレムのように融通が利かない様な敵ではないので……。原作においても、此方が望まない限りは戦闘に成ることはありませんでした。
確かに普通の盗掘者であれば問答無用で殴り殺しに来そうですが、今の私達には王女がいます。王家の正当な後継者がいるのであれば、信用度は最初からMAX。正直に『魔王とか邪神とか辺境伯とか世界滅ぼしてくるヤバい奴を殺しに行くのでここに置いてある金銀財宝全部ください』って言えば喜んで差し出してくれるはずです。
「流石主様! まさにその通りかと! 我が始祖も主様のお役に立てると聞けば、涙して喜ぶはずです!」
「……自分の子孫アンデッドにした奴を歓迎するかなぁ、普通。」
「愚民! 貴様、主様のペットでありながら崇高なお考えを否定するのか!?」
「あ、アンタねぇ! 元王女だからって、言って悪い事あるでしょう! ペットじゃないって何度言えば解るのよ! あと愚民でもない!!!」
「ちなみにですが、一応敵対した場合もズルすれば勝ちきれるので大丈夫ですよ。というわけで御開帳~。」
というわけで喧嘩し始めた二人を放っておいて、アイテム欄から死体をポイポイ。即座にアンデッド化させて扉を開けさせます。
すると内部の機構が動いたのか、次々に明りが灯っていく最後の部屋。金銀財宝で埋め尽くされており、その最奥には巨大なゴーレムが一体。
アレがさっき言ったいた“警備長”であり、その後ろに置かれている大きな棺が初代国王の眠る場所となっております。まぁ建国の祖が眠る場所なので豪華なのは不思議じゃないんですが……。あまりにも金ぴかすぎて趣味悪いですね。
(王国が資金的に厳しく成った時、この王墓に眠る財宝で立て直せるように集めたそうですが、美に関する見識はあつめられなかったみたいですねぇ。)
そんなことを考えながらテクテク中に入ってみれば、重く響き渡る起動音。どうやらゴーレムが目を覚ましたようです。……面倒ですし、全部王女ことソフィに任せてしまいましょうか。ほら王女、貴女が対応してください。
「はっ! 我らが父祖よ! その眠りを妨げてしまい、大変申し訳ありません! しかしお願い……」
『黙るがいい、アンデッドよ。確かにその体、その魂は我が血族のものだろう。だが魔に堕ちた者の話を聞くつもりはない。』
「なッ!? あ、主様に頂いたこの身! この魂を否定すると仰るのか! それは父祖であろうと許されざる大罪! 撤回と謝罪を求めます!」
あら、喧嘩し始めちゃった。……ん? どうしたんですチロさん。私の肩突いちゃって。
「ねぇカーチェ、もう一発ぐらいだったら大火球打てるから、それ打ち込んで逃げない? あんなおっきなゴーレム勝てる気がしないんだけど。5mくらいあるし。無理よ無理。」
「5.7mですね。父祖の約3倍の身長を誇ってるそうです。ちなみに敵対した場合、警備ゴーレムが一斉にこちらにやって来るので、逃げ場はありません。」
「終わりじゃん。」
「ご安心を、既に戦闘の準備は始めています。ズルしていきますよ。」
王女とゴーレムに宿った初代国王様が言い合いしている間、後ろでチロさんとそんな会話を交わします。
まぁ何も起きず宝物この中身全部持って帰れるのがベストだったんですが……。ひとんちの子孫アンデッドにして改造して使役してたら、キレるのが当たり前です。王女はなんか『この世のすべて主様に捧げられるべき!』みたいなよく解んない狂信者みたいな考え方してるので、戦闘が起きるはずないと思ってたみたいですが……。ま、私がそれを鵜呑みにするわけがありません。
ということで準備していたのがこちらです。ほら後ろ見てくださいよチロさん。
「……なんかアンデッドが人の頭を腕と足で挟んで、腕立て伏せみたいな状態になってるわね。」
「人の頭なんて人聞きの悪い。これは最新鋭の生体タイヤですよ。」
今回ご用意したのは、生首を手と足の先端に固定して“高速回転”するように設定した自信作。
そう、『アンデッドバイク』です。
生首が高速回転することで馬よりも早く行動することが出来、同時にアンデッドなので休息も燃料も必要ない最高の移動手段です。……血が継続的に断面から吹き出るので、通った跡が赤く染まる上に、普通に原材料がゾンビなので臭いというデメリットがありますが、まぁ画期的であることは変わりありません。
この世界では私が初めての作成者でしょうし、今年のノーベル賞は間違いないですね。
「あ、アンタ人の心どこに置いてきたの!?!?」
「それは開発者のRTA走者に言ってください。いくら便利でもこんな気味悪いの作りませんって。」
「目の前に完成品がある上に、今から使おうとしてるじゃない! やっぱ悪魔よアンタ!!!」
「おやつ抜き」
「てん、いや流石にもうダメでしょ! あと天使ってあの気持ち悪い目玉の化け物だったじゃない! というかあの女性の天使像は何なのよ! もう意味わかんない!!!」
あら、またキレちゃいました。可哀想に……。あ、でも。これ普通に便利ですよ? 死霊術師に成れば死体だけで作れますから、DLCありのRTA序盤ではほぼ必須の移動手段でした。
「というわけでこれに乗り込みましょう。ちなみにチロさん、私と同じことをしないと多分流れ弾で即死すると思うので、死にたくなかったら頑張ってください。」
「……死ぬの?」
「間違いなく。」
「…………じゃあやる。」
よろしい。では今回も皆さん大好き。
バグのお時間となります。
「まずですが、世界には『無敵時間』というものが存在します。所謂プレイヤーに対する救済処置であり、同時にゲームを遊びやすくするための工夫ですね。ダメージを受けた後などの『特定の事象』が起きた際、一定時間その他の攻撃を無効化する感じです。」
今回はそれを、意図的に引き起こし、“持続”させます。
「では最初に、バイクに乗り込みます。」
「うん。……うわ、ねちょっとしてる。」
「次に地面に武器を置きます。私はいつもの『木こりの斧』、チロさんは『鋼の剣』でいいですね。」
「私、剣そこまで使えないけどいいの?」
「構いません。では騎乗中にそれを拾おうとしながら……、バイクから降ります。そして同時に、ダメージを受けましょう。今回は『アイテム欄』から小石を取り出し、頭にぶつけることで代用します。」
「あだっ!?」
「んでダメージを喰らった瞬間、再度バイクに騎乗し直します。」
「あ、うん。」
「はい、もう無敵です。」
「へ?」
ね、簡単でしょう?
ちなみにですが、今回は一度に3つの『無敵時間』が発生する事象を同時に起こすことで、バグらせた感じになります。
『アイテムを拾う』という行為、キャラクターとアイテムが接触した瞬間に発生する無敵時間。
『騎乗物に乗る』という行為、キャラクターが馬などに乗り降りする瞬間に発生する無敵時間。
『ダメージを受ける』という行為、キャラクターが攻撃を受けプレイヤーに復帰時間を提供する無敵時間。
この3つを同時に引き起こすことで、ゲーム側に『あ、1番の無敵時間処理しなきゃ。え、次は2番の無敵時間?うわ3番の無敵時間も来た。え、今度はまた1番の無敵時間!?』という感じで、延々と無敵が続くのです。
「ほら、私達の体。薄っすらしてるでしょう?」
「え? は!? すけ、透けてる!? え、私死ぬの! 幽霊!?」
「バイクから降りなければずっと無敵時間は続くので、死にませんが?」
はい、ということで準備完了です。
相手が攻撃を半減して来るのならば、此方は無敵になればいいだけのこと。初代国王と口論していた王女は無敵になっていませんが……。まぁ最悪、木っ端みじんにならなければもう一度“再誕”させることは可能です。何せ今の私は死霊術師ですからね。アンデッドをもう一度生み直すなど簡単なお話。
まぁ普通にあのステータスなら戦闘が終わるまで独力で生き残れそう、ってのもありますが……。
「こ、この! 無知で愚鈍でわからずや! なぜ主様がこれほど素晴らしいお方であることが理解できないのです!? も、もう許せません。祖先への尊敬の念など消し飛びました! ゴーレムごとその魂、破壊しつくしてやるッ!」
「あ、ソフィ。ゴーレムは利用価値あるので残します。」
「御意ッ!!!」
『……貴様が、そこのアンデッドの主人か。我が血族の遺体を弄ぶには飽き足らず、王家の財を奪おうとするその魂胆。万死に値する。せめてもの慈悲だ、一撃で葬ってやろう。』
「あ、もう戦闘ですか? りょです。ではアンデッドバイク改め、ボブバイク君! とつげきー!」
走る! 匂う! 血で汚れる!
DXボブバイク号!
特殊ギミックで正義のゴーレムをやっつけよう!
カチェチェホビーから3980円で大不評発売中!




