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お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~  作者: サイリウム


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32:天使様♡



はい、ということでチロさんにごスイーツをおごってから1週間経ちました。


自身の想定通りと言いますか、やはり高級ホテルの寝具は色々と格が違いまして、これまで家で使っていた布団が寝藁だったのかと思うレベル。前世使っていたパイプベッドと比べても天と地の差で、いくら文明レベルが違っていようと貴種向けに作られたものは格が違うのだと解らされてしまいました。


おそらくまだバネ関連の技術は発明されていないはずなのに、魔物素材でマットレスのスプリング部分を生み出していたのはもう感激の至り。しっかりとした反発を残しながらも全身を包み込んでくれる……。え、そう言う話を聞きたいのではない? んもう、ワガママさんですね。お昼寝に関することですし、このまま87,600時間ほど語り明かそうと思っていたのに……。



(ま、冗談は程々にして。『宿泊中に何をしていたか』、軽く纏めておきましょうか。)



と言っても、特に変なことはしていません。軽く諜報網の構築を行っていた程度のことです。


以前纏めていたように、王女を殺しやがったクソ公爵を滅殺するには、貴族社会での情報が必要でした。折角解りやすい標的がいるのですから、公爵に組する奴ら全員この世からバイバイしてもらおうって寸法ですね。しかしそれをするにも、やはり情報は必須。単なる村人でしかない私には少々難しい話でした。


そのため目を付けたのが、ホテル。


王都に家を持たない下級貴族や何らかの理由で自身の屋敷が使えない貴族が使用する高級ホテルです。人が集まる所には情報も集まる。身分を偽造しお金さえ払えば私でも利用できる場所でしたので、標的としては最適だったんですよねー。



(んでそんな高級ホテルで働く者でも、金に困る奴はいるんです。)



チロさんの前ではずっと寝呆けていた者に見えていたでしょうが、あの時私はベットの上で様々なことを熟していました。枕に顔を埋めてオブジェクトを“透過”してホテル全体を見渡してみたり、チロさんが眠った後部屋を抜け出して対象に会いに行ったり、副支配人に当たる人に金を握らせた後に私のお友達である『なかよ死・生首ボブブラザーズ』を見せてあげて脅したり、色々したわけです。


まぁお陰様で、ある程度の諜報網を構築に成功。週に一度のペースで故郷の村に“報告書”が届くようになりました。便利ですね。



(勝手に副支配人のお部屋を模様替えして、壁紙代わりにボブーズを並べて『いつでも見てるぞ』みたいなことしたせいであの人不眠症になっちゃいましたが……。まぁ誤差で誤差。)



まぁそんな感じでホテル内部という限られた区域ながら諜報網が出来ましたし、チロさんがキレていたように今日があの狸大司教と交わした契約日、『天使像』を受け取る日です。


というわけでホテルをチェックアウトしまして、そのままスラム街に直行。


浮浪者の恰好をしながらも明らかに『訓練された者たち』がたむろするお家に入ってみれば、待っていたのは見知らぬ男性。彼に合言葉と契約書を見せれば、すぐに運んできてくれる物体。黒い袋に包まれているせいで解りませんが、これが『天使像』でしょう。


まぁ偽物掴まされた場合、教会にある天使像を強奪しながら腹いせに教会を爆破すればいい話。何も確認せずに『アイテム欄』に放り込んでみれば、無事『天使像』として表記されています。多少私の能力に驚いたような雰囲気を醸し出す“大司祭側の男”でしたが、軽く笑いかければ顎で出口を示してきます。


これ以上特に留まる理由もないので、言われた通りに建物から出てスラム街からも出れば……。



「無事取引終了というわけですね。」


「……護衛だったのかしら? 後ろから付けてた奴らが一斉に消えたわね。」


「あぁ『索敵』の魔法ですか? わざわざありがとうございます。」



まぁこちらが何の対策もしていないようならば、闇討ちしてしまおうとでも思っていたのでしょうねぇ。金で売り払えるものとはいえ、彼らにとって天使像は価値ある存在です。奪えるのならば『事故』を装って奪い返してしまうつもりだったのでしょう。


チロさんがずっと警戒してくれていたおかげで、手を出さずに帰ってくれたようですが……。



「護衛としては気が気じゃないんだけどね。服は確かに襤褸切れだったけど、その下の肉体がかなり仕上がってたし、接近された上で数で押されれば普通に負けてたでしょうね。」


「ご安心ください。もし襲って来ていたらみんな一緒に“虚空”に沈めていたので。」


「ヒェ」



あら可愛らしい悲鳴。



「チロさんの反応を見ればわかりますが、あそこは私以外にはいささかキツイ場所のご様子。皆さん数分放置すれば廃人に成るでしょう。あ、その時はちゃんと足場用意してあげるので、それに乗っかってくださいね? 回避できるので。」


「ウン、ソウスル……。んんッ! それで、こっからどうするの? 一応『転職』っていう当初の目的は果たしたようなもんだし、ここから例の貴族について調べるか、村に帰るかってところだろうけど。」



そうなりますねぇ。まぁ片方は終わってますけど。


諜報網のことですが、面倒だったので彼女には伝えていません。というか今日の朝お伝えしようと思ってたんですけど、なんかキレ捲くってたので断念した感じです。とまぁ提示された片方は終わっているので、後は故郷に帰るだけなのですが……。



「王女……。いえ、いと高きお方の安否を確認せねばなりません。暗殺の話が誤報であり、何処かに生き延びている可能性もまぁないとは……、言い切れません。希望的観測が10割ですが。」


「それ期待しちゃいけない奴じゃん。」


「いや解ってはいるんですよ。ただこっちにとって、生きていてくれた方が利に成るのでどうしても……。しかしあのホテルにいた貴族の会話聞いている限り、やっぱマジらしいんですよね……。」



深夜勝手に抜け出して諜報網を作る傍ら、お偉いさんが集まるバーみたいな所にドレスを着て遊びに行ってみたりしたのですが……、そこでミルクを飲みながら耳を傾けた所、どうやらもうお葬式と言いますか、家族葬を済ませたっぽいんですよね。


王様と王妃がなんか号泣しながら王墓に向かったって話が上がってましたし、マジで死んじゃってるっぽいんです。混乱を避けたり、下手人を何とかするため一般公開はまだまだ先みたいなのですが……。



「はえ~。……ってなんでアンタがそんなこと知ってるの!? 部屋から出てなかったでしょうが!!!」


「深夜に勝手に抜け出してましたからねぇ。お陰様で諜報網が完成しました。ぶい。」


「なんで一人で出歩いてるの!? わた、わたし護衛! アンタ護衛対象! 守られろ!!!」


「いやだってチロさん感情全部顔に出るじゃないですか。お口もよわよわですので、連れていけるわけないでしょ。あそこ大司教様みたいな狸の楽園、異世界ぽんぽこランドですよ?」


「どこよソコッ!?」



いや肥えて脂肪を蓄えた上に、お腹を真っ黒に染めた悪い奴らが互いにお腹叩き合ってる場所ですけど……。あぁなんか武官っぽい人もいましたので、真っ黒腹筋の人もいましたね。


ま、あぁ言う場所は貴族の社交場。武器や魔法といった物理的な方法で殴り合うのではなく、お口で社会的に殺し合うような場所です。その辺りは全くチロさんに期待していませんでしたから、連れて行ってもお荷物だったんですよねぇ。



「ということでまぁ“ほんとに死んでるのか”の最終確認として、死体を見に行こうと思ってるんですよ。というわけで王墓に忍び込もうと思ってるんですが、来ます?」


「……見つかったら親類縁者全部処刑になるの知ってて言ってる?」


「チロさん、世界には『バレなきゃ罪じゃないんだよ』という言葉があるのです。はい、ということで準備していきましょうねー。最初は『転職』ですー。」



というわけで滅茶苦茶嫌そうな顔をするチロさんを引っ張りながら王都の中をテクテク歩きまして、戻ってきました王都の出入口。


牛と馬車を預けたあと、ずっと放置してた宿があるとこですね~。ちょっと馬屋の方に顔を出せば、村の牛が元気そうに草を食んでいるのが見えます。一応何かあった時の為に1月分のお金+牛の飼育代も渡していたので、特に問題なく育ててくれていたようです。


ということで宿の受付で帰って来たことを伝え、さっと割り当てられたお部屋に入ります。


後は足りない頭で『どうやったらコイツ止められるだろ』とかいう無駄なことを考えているチロさんに『索敵』を行使してもらい、周囲に人。スパイなどがいないことを確認してもらいます。


そして取り出したるは先ほど手に入れた『天使像』。


女性の天使が模られた真っ白な石造で、2mくらいある結構な奴ですね。転職の力が籠ってなくても、それ相応の美術品として価値がある奴ですねー。



「はいチロさん、手を。」


「あ、はい。」


「じゃあ使いますね、『転職』。」



そう言いながら石像を触ってみれば、ぱっと周囲を塗り替える真っ白な光。


視界どころか全身がその光に包まれていき……、ようやくそれが収まったと思えば、目の前に広がるのは先ほどまでいた宿の一室とは全く別の空間。


白のパネルのが格子状に延々と敷き詰められた“転職用”の空間です。



「ほー、こんな感じなんですねぇ。」


「は!? え!? 何ここ!?」


「ん……? チロさんって『魔法使い』ですよね? でしたら一度は転職してるはずなので、来たことがあるのでは?」


「て、転職ってこんなのじゃないでしょ!? もっとこう、天使様が頭に話しかけてくれるみたいな……。」


「ほほう、そこはゲームと現実の違いってやつですかね。私からすればこの手抜き真っ白空間が転職でしたので、興味ありますね。」



まぁこちらとしては『この空間』に来れた時点でほぼ勝ちを確信しているような状況ですので、途轍もなく暇にならない限り、その辺りの検証はする気はありません。ということで考えを脳の片隅に吹き飛ばしながら、周囲を探ります。ゲーム通りでしたら、あの気持ち悪いのが……。



「あ、いたいた。おーい“テイアイエル”!」



そう声をかけた瞬間、ゆっくりとだが確実にこちらに振り向こうとする“球体”。


徐々にその姿がこちらに現れていき……、権限するは、大きな目玉。


我々の創造する様な天使ではなく、聖書に書かれた内容をそのまま表現したような体。


肉体の軸を構成する巨大な目玉と、数えきれないほどの眼をもって羽を構成した天使。未来を象徴する神の使いの名をもつソレが、この世界における天使様です。うんうん、相変わらず天使像とかけ離れた見た目してるね!



「というわけで作中キモさ堂々のNo1、転職天使のテイアイエル君、ちゃん? ですー! ぱちぱち~!」




「な。」


「ば。」




あれ? なんかチロさんもキモ天使も固まりましたね。




「なんか人の子おるぅぅぅううううう!?!?!?!?」


「ばけものぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!」





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