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お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~  作者: サイリウム


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31:寝る子は育って動く


「……いや寝すぎでしょアンタ。」


「Zzzz……、はえ? ……Zzzz。」



雇い主であるカーチェにそう言うが……、帰ってくるのは寝言と寝息だけ。


いやまぁ確かに相手は幼女、まだ体が小さく疲れやすいからこそ、寝るのが仕事みたいなことは理解しているんだけど……。



「いや一週間ベットから出てこないのは色々とダメでしょうがッ!!!」


「Zzzz……」


「寝るなッ!!!!!」



思わず胸倉をつかみ勢いよく振ってみるが、一瞬だけ目を開けた後はすぐに寝息を立て始めてしまう。これがカーチェではなく普通の人間ならばあまりにも寝すぎているために心配し、薬師でも呼んでくるところなのだが……。こいつはこっちがキレているのを理解しながら、『なんか今日動くの面倒』という理由だけで無視してくるのだ。というか今は普通に寝ているようだけど、何度か寝たふりで無視されたことあるし……!


カーチェとかいう私の雇い主兼クソガキがこうなり始めたのは、今から一週間前。ちょうど私達が高級店でデザートを楽しんだ時まで遡る。



『迷惑料を併せて多めに払ったおかげか、保存の効く菓子を土産として持たせてくれたのはまぁいいのですが……。』


『はぁ~む。……んん~♡ かぁーふぇ!』


『口にモノ入れて話さないでください。あとお土産を馬車の中で広げるとか。行儀悪いですよ。』


『私庶民!!!』



……思い出してみれば途轍もなく品がない行為だということは理解できるが、あのお土産。大きくて厚くて甘いクッキーは、貪り食うに値するほど美味しかった。そもそもあのお店のデザート自体、これまで私が食べて来た甘味がただ『甘い』だけの何かだったと錯覚するほどに美味し……、じゃない! 一旦この話は置いておいて、とにかく私達はそのまま馬車に乗り、今泊まっている宿までやって来た。


カーチェが言うにはドレスを用意している時に予約しておいてくれたみたいで、完全に貴族用の宿泊施設。階層も高いし、そもそも広いし、設備も人も沢山いる様な所。他の貴族が泊っていたせいで取れたお部屋のグレードは中くらいのものだったらしいんだけど……。



『ふむ……、結構広いですね。とうか前世今世含めて実家より広いです。流石貴族用。説明を聞いた感じ、子爵から伯爵レベルの家が借りる様な部屋らしいですが……。十分以上ですね。もうここで暮らせます。』


『はぐはぐ。』


『チロさんはそろそろ食べるの辞めたらどうです? 後別にいいですが、今食べてるの私の分のクッキーですよ。』


『これ、クッキーっていうのね! カーチェの分まで美味しくいただくわ!!!!!』


『……べつにいいですが、食べ終わったら歯を磨いてくださいね? あと今着てるドレスはそこのハンガーにかけておいてください。後でクリーニングにでも出しておきますので。私はもう寝ます。』


『わかった!!!』



彼女の口から普通に聞いたことのない単語が出て来たが、なんとなく意味は理解できたしカーチェが意味不明なのはいつものこと。というわけではカーチェはそのままベットに飛び込み就寝し、私もカーチェの分のクッキーを食べ終わった際は言われた通りにして寝た。


まぁあの日だけで色々あったからね。ぐっすり朝まで眠ることが出来たんだけど……。



『おは……、うわもうこんなに日が上ってる。寝すぎ……。って今野営中じゃなかったんだ。というかこのベットヤバいわね。寝やすいとかそう言うもんじゃないわ。吸い込んで離さないとはこういう……!』


『Zzz……。』


『……カーチェみたいになってたわね。とりあえず起きよ。』



という感じで起床し、昨日はお土産のせいで全然見て回らなかった部屋の中を探索。一般市民からすれば広すぎる部屋の中に戦々恐々としながら探索していると、棚の中で見つけた『このホテル』についての説明。


特に私は王都ですることもないし、カーチェからは護衛として雇われている。あまり離れすぎるのもいけないだろうと思い、彼女の枕もとでその冊子を読み込むことにした。……部屋が広すぎて怖くなったとか、今ここで一人部屋から出たら『なんで貴族用のホテルに一般市民が!? 追い出せ!』とかに成りそうで怖くなった、とかでは断じてない。



『へ~、食事とは1階の食堂で出してもらえるのね。んで時間は……、うわ。たぶんコレ朝食間に合わないわね。』



冒険者として活動するにあたり、読み書き計算は出来ないと詰むと先輩やギルド職員に言われた私は、つたないながらも一応何とか全部熟すことが出来る。ただ私みたいな一般市民の出からすれば、時計なんか最悪一生見ずに終わる様なものだ。確かに部屋の中にはそれっぽいのがあったんだけど……、普通に見方が解らない。たぶん『Ⅰ=1』だと思うんだけど、ⅣとかⅫとかマジで何を意味してるか解らない。というかなんでⅠがてっぺんじゃないのかしら?


とまぁそんな時間の解らない私でも、お日様を見れば何となく今の時間帯。朝食の時間が過ぎてお昼に差し掛かっているのは理解できた。



『と言ってもカーチェはまだ寝てるし、私も昨日食べ過ぎたからそこまでお腹減って……。うん? ルームサービス?』



全く知らない上に慣れない場所、そこから来る不安のせいか普段よりも多くなる独り言を自覚しながら、新しく見つけた文章を読み始める。



『えーと。部屋にある注文口の所に欲しいものを書けば、職員の人が持って来てくれる。……はえ~、便利ねぇ。あ、でもすごく高い。たぶん貴族様用だから味は良いんだろうけど、躊躇どころか諦めるレベルで高いわね……。』



貴族様からすればコレぐらい屁でもないのかもしれないが、私達市民からすれば軽い軽食を食べるだけで一月の食費が消し飛ぶような値段をしている。まぁ確かにカーチェのおかげで、お金には困っていないのだけど……。うん、確かにカーチェからいくらか持たしてもらってるけど、贅沢しすぎて今の暮らしが崩壊すれば意味がない。生活レベルを上げ過ぎて、後々めちぇくちゃ苦労したって話よく聞くし……。


ということで朝食は我慢し、カーチェが起きるまではこの部屋の中にいることに。


あとはまた部屋の中を探索したり、棚の中にあった本を眺めてみたり、瞑想して体内の魔力を整えてみたりしたんだけど……。



『起きないわねこの子。もう夜なのだけど。』



流石にお腹も減って来たし、部屋の中も飽きた。かといって一人で部屋の外に出るのは怖いので……。恐る恐るルームサービスを使ってみることに。説明書見ながら見様見真似で部屋に置いてあった紙に『サンドイッチ二人分』の注文を書き込み、同時に『まだ主人が寝てるので静かにお願いします』とも書いておく。


それで紙を注文口に放り込んでみると、どうやらそれが階下の厨房かどこかに届くみたいで、すぐに職員の人が食事を運んできてくれた。



『失礼いたします、ルームサービスです。』


『すみません、わざわざ~。』


『いえいえ、護衛お疲れ様です。して、お嬢様はまだ? 他に何かご必要でしたら、ご用意させて……。』


『…………ご飯ですか?』



持って来てくれたホテルマンの人と言葉を交わしていれば、ぬるっと私の背後に立つカーチェ。目をこすりながらだったからこのやり取りで起きたのだろうけど……。傍から見ればご飯の為だけに起きて来たようにしか見えない。



『もう夜ですか。寝過ぎましたね。』


『か、カーチェ……、様?』


『えぇ、カーチェです。悪いですねチロん、寝過ぎました。あぁそれとそこの。追加で何か持ってきてください。これは取っておくように。』



寝ぼけながらも、ホテルマンの人に賄賂を握らせ『貴方のせいで起きたのではないですよ』とフォローを入れながら追加の注文をする彼女。確かに軽食レベルのものしか頼んでなかったから、もうちょっと食べたいところだったけど……。というか王都に来てからずっとそうだけど、なんでこの子こんなに貴族の真似が上手いんだろ。


……どっかの御落胤とか……。ではないか。ご両親と顔そっくりだったし。となると本人の気質……?



『畏まりました、すぐにお持ちします。』



とまぁそんな感じでカーチェが頼んでくれたおかげでサンドイッチだけではなくなんか大きめのステーキを食べることが出来たんだけど……。



「流石にこれが一週間も続けばキレるわよッ!!!!!」


「Zzz……。」


「寝たふりやめなさいこのクソカーチェッ!!!」


「ち。バレてましたか。でもいいじゃないですかー、わたしのお金ですしー。」


「ホテルマンさんから私たちどんな目で見られてるのか解ってんのアンタッ!? ヤバい主人に仕えてて大変だなって同情と、仕えているのなら諫めろよお前って目で見られるのよ!? しかも割合がどんどん後者に寄っていくッ!!! あと普通に外出られなくてつらいッ!!!!!」


「普通に出たらいいじゃないですか。」


「護衛が護衛対象から離れたらダメでしょうがッ! あと怖いッ!!!!!」


「まぁお部屋含め、内装凄い豪華ですからねぇ。出入り口に辿り着く前にチロさん気絶しそう。あはー。」


「こっちは笑い事じゃないのよッ!!!!!」


「はいはい、まぁ今日『天使像』の受取日でしたし、引き上げることにしましょうか。チロさんが深夜寝てる間に、寝具の買い出しや諜報網の構築できましたし……。」


「なんか言ったッ!?!?!?」


「いーえ、何も。」




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