24:またキャラが死んだ!人でなし!
はい、というわけで王都に付きました。
道中チロさんとちょっと、先日虚無空間に連れて行ってしまったことに対するお叱りなどあれど、一応これまで通りの関係を保ちながら到着することが出来ました。まぁ以前よりもより化け物を見る様な視線が増えた気もするのですが……。まぁ些細なことでしょう。得難い人材が逃げちゃうよりはマシですし、前世のパワハラ上司三連星よりは優しすぎる視線です。
「んで? カーチェ、どうすんの。私は依頼達成の報告と新規依頼募集のストップ掛けにいかないとだから、冒険者組合に寄らなきゃならないんだけど……。アンタ優先でいいわよ。」
「では当初の目的通り教会に向かいます。あぁそれと、王都の地理は詳しくないので案内任せてもいいですか?」
色々と寄り道してしまいましたが……、当初この旅の目的は『転職』。自身のカンストしてしまったレベルを初期値に戻し、止まってしまったステータス向上作業を再開させるものでした。
しかし現在の私は小金持ち、現金30億と換金していませんが数十億は固いおたからや権利書の保有者になります。ちょうどいい機会ですし、この王都は人と物が集まる王国随一の都市。少々滞在期間は伸びるでしょうが、この段階で出来そうなことは全て手を伸ばすつもりです。『転職』の後に粛々と済ませてしまう、って感じですね。
「馬車に揺られながらお昼寝するのもいいですけど、やっぱり家に勝るもの無し。何度も行き来するぐらいなら一回で纏めて、余計な移動時間を短縮。総合的なお昼寝時間を伸ばすって寸法ですねぇ。」
「まぁそれは別にいいのだけど、町の案内いるの? アンタのことだから既に知ってそうだけど。」
「えぇ。知ってはいますよ? 10年後のデータですが。」
この王都ですが、原作ゲーム。『天帝のアバンギャルド』にて明確に 『この十年間で大規模な地区整理を行った』という描写がありました。
原作にて正ヒロインを勤めるこの国の王女様ですが、原作開始時において実質的な国王として君臨していました。これは魔王の手先に寄って両親を殺されたが故に起きたことで、魔物たちの進行に対応するため即位を後回しにしながら権力を集中させ執務を執り行っていたのが理由なのですが……。
主人公や私同様当時15歳の小娘王女が、貴族たちの傀儡にならずに国王として君臨できた理由として『とあるプロジェクトの成功』が一因となっています。
(それが王都の大規模改装、ですね。)
これによってスラムなどの荒れた区画を整理しながらそこに住んでいた人たちに職と新たな住宅を提供。治安の向上などにも成功。これが評価され幼いながらにも国政に関わる比率を年々増やしていき、原作が開始する頃には実権を握っても問題ない程度には成長している、って状況になってたわけです。
「まぁ幾ら王族とはいえ、そんな若いころからお仕事するなんて正気を疑いますが。」
「はえー。お上って今そんなことしてるのね。」
「あ、ちなみにまだ公表されていない状態だと『なんでお前たちが知ってるんだ!?』ってなってスパイ扱いで処刑されますから注意してください。」
「だからなんでアンタはそういうよく解んない情報知ってんのよ!? 未来予知でもできんの!?!?」
「んなもん出来るんだったらあのクソガキ死ぬ前に止めてましたよクソが。勝手に死ぬなクソクソクソ。」
「誰よソレ!?」
騒ぐチロさんを無視しながら、近くの馬宿に馬車と牛を預け街中を歩きます。
まぁ今後改装されるとはいっても、主要施設の位置が変わることはないでしょう。こういうのは基本的に中央に向かって歩き続ければ何とかなるんです。まぁスラムの撤去が主目的なれど、幾つか通常の地区も合わせて整理したとかいう話は聞いていますし、道を間違えれば一気に迷うことに成るでしょうが……。ま、今の王都で暮らしているチロさんがいれば問題ないでしょう。
「……にしても、装備を身に着けている人の割合が増えてきましたね。そもそもの人が多くて不快ですが、声が大きい人が増えてより不快です。」
「ま、まぁ戦闘職だとね。声大きくなるのは仕方ないから……。あと冒険者組合がこの先にあるからね。ちなみに『転職』の施設がある教会はもうちょっと奥よ。」
「あら、そうでしたか。ではチロさんの用を先に済ませましょうか。」
いいの? と返してくる彼女に頷きを返します。
ここまで牛車で来た時に理解できましたが、数多くの冒険者が王都に詰めているせいか、王都周辺に魔物は一切見受けることが出来ませんでした。つまりレベリングが出来る様な環境ではなく、そもそもこの地に付いた時点で『転職』は帰るまでに為せればいい話です。それに、今考えている“ある事”が成立するのならばそもそも王都で『転職』する必要もなくなってしまいます。
わざわざ引き返して報告しに行くのも二度手間でしょうし、先に彼女の用を終わらせてしまう方が効率的でしょう。
「そ、なら甘えましょっか。まぁ受付嬢に軽い手続きお願いするだけだから、10分もかからないハズよ。あ、それと。ちょっかいかけてくる変な奴もいるから抱っこさせてくれる?」
「構いませんが……。」
「暴力的な奴がいてね? 子供とか殴って来る奴いるのよ。流石に私が抱いてれば『お前いつガキこさえたんだ!』みたいな煽りで済むだろうけど。」
「……お母様とでもお呼びすれば?」
「やめて? マジで。」
おう、ガチな否定。
とまぁそんな会話をしながらやってきました冒険者組合。ゲームでも見たクロスさせた剣と盾のマークが特徴的な建物です。おそらく王都の改装に合わせて建物も改装したのか、外見は私の知るものよりもさびれていますが……。この冒険者が行き来する情景は変わっていないご様子。
そんなことを考えながらチロさんに抱かれ中に入ってみると、真っ先に見えるのは朝から酒盛りしている冒険者さんたち。ま、酒場併設型なのでそういうのもあるでしょうねー。
(あぁいうのは関わらないのに限るわ。目を合わせないように受付までいくわよ。)
(了解です。)
酒場のテーブルに近づかないようにしながら、スタスタを私を抱えながら受付まで歩き、呼び鈴を鳴らす彼女。すると奥から受付嬢の方……、ではなく筋骨隆々のハゲのおじさんが出てきました。
こういうのって女性の方が定番だと思いましたが、殴られたら私どころかチロさんまで死にそうなマッスルマンが出てきましたね。まぁ受付で冒険者が暴れないように、こういう人がいてもおかしくないというのは解りますが、ゲームじゃ結構お綺麗な3Dモデルのキャラがいたので……。
「チロか、どうした。」
「達成の報告しに来たわ。」
「あぁこの前のか。思ったより遅かったが……。」
「この子のお守りも任されてね? それでちょっと。」
彼女が受領書。村で父が用意していた書類を彼に手渡しながらそう言うと、視線をこちらに向けるハゲ。明らかに堅気ではないですし、何ならこの前虚空に沈めた組長よりも強そうな気がしますね……。ゲームでは見たことのない人なので、全く知らない人です。
とりあえず見た目相応の幼女として、おどおどしながら手を振っておきましょうか。
「(フリフリ)」
「ふむ、大人しい子だな。ともかく書類は受け取った。無事討伐できたようだし、成果として記録しておこう。……それで?」
「(コイツネコ被ってるッ!)……あぁごめんなさい。それでなんだけど、新規の依頼は無しにしてほしいの。ちょっとこの子の両親。村の村長様に気に入られちゃってね? 上手くアガれそうなのよ。」
雇い主が私であると正直に言えば面倒になると彼女も思ったのでしょう、若干虚偽を混ぜながらもハゲにそういうチロさん。
そう言えばここまでの道中で『先輩とか職員の人に将来の相談とかしていた』って言ってましたし、その一人がこのハゲなのでしょうか? チロさんの言葉を聞いて、その強面を若干緩ませてますし、何らかの関係があったのは確かなのでしょうが……。
「そうか。まぁ悪癖や欠点こそあれど、根は真面目なお前のことだ。良い就職先が見つかるとは思っていたが……、思ったより早いな。しかし、いや何でもない。今はお前の新しい門出を祝うとしよう。」
「ベネットさんが言い澱むなんて珍しいわね。なんかあったの? この子に王都を見せるつもりだったんだけど。」
…………今ベネットって言った? 殺されたんじゃ!
とりあえずパイプ突き刺さなきゃ……!
「いや、な? 公的には秘されているのだが……、実は王女殿下が暗殺されたそうでな。色々とお上がきな臭い動きをしている。最悪大きな争いが起きてもおかしくない、わざわざ王都に帰って来たところに悪いが、頼れる地が他に出来たのなら早く帰った方がいいぞ。」
「……………は!?!?!?!?!?!?!?」




