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お昼寝したいのに主人公が爆散したからできません ~モブだけでも世界は救えるのか~  作者: サイリウム


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20/75

20:扇動幼女



「ということで今このレース場で放心している人たちを味方にします。」


「……結構残ってるわね。」



マフィアさんたちを拷問して場所を聞き出した後、戻って来たのは私達が大金を稼いだあのレース場です。


まぁ48億という途轍もない金額が払い戻されるということは、それだけ当初の下馬評と比べ大いに荒れたレースであったことはご理解いただけると思います。


そうなると『安牌』に賭け、しかも手を出してはいけないお金で勝負してしまっていた人には大変なことになるわけで……。結構な数が心ここに在らず、という感じです。先ほどのレースで最後だったというのに数百人レベルで残っていることからも、どれだけの影響が大きかったのが見て取れます。



「まぁ普通に大レースでしたので、その余韻を楽しんでいるだけかもしれないですが。」


「もしそうだったら蹲って泣き叫ぶとかはしなくない?」


「それはそう。」



先程の『ミラクルオコノミ』が出走したレースは、この世界における頂点のレース。GⅠというものでした。まぁ元になったレースもGⅠで、出走したお馬さんたちが軒並み名馬という途轍もないレースと聞きますので、競馬のファンであればもう嬉しくて仕方がない、というものらしいです。


前世攻略サイトに書いてあったのを読んだだけなのであまり興味はありませんが……、まぁ理解は出来ます。となると普通に『ミラクル』の大ファンが感極まって泣いてるだけかもしれませんが、どっちにしろこの場に残っている時点で私の駒候補です。


さて、話を戻しましょう。



「今の彼らは精神的ダメージを受けています。細かい所は個々人で変わって来るでしょうが……“なぜあの馬に賭けてしまったのか”とかそういう所でしょうね。お金もなくなったし、これからどうしようと蹲っているわけです。」


「……ギャンブルって怖いわね。」


「ですのでその緩んだ心に付け入り、対ヤクザの尖兵として仕立て上げます。」


「もっと怖いのが隣にいたわ。」



そう言いながら勝手に拝借するのは、レース場の備品である魔道具。拡声器です。実況席からもらった奴ですね。


さてはて、正直こういうのは初めてですので上手くいくかは解りませんが……。まぁやるだけやってみることにしましょう。


内容は適宜変更しますが、大筋はゲーム内で主人公がしていた演説や前世娯楽として見た幾つかを参考にしながら、って感じですかね? あぁそうそう、声も頑張って変えないと。普段の気だるげなものではなく、自身に満ち溢れ思わず皆が信じてしまいたくなるような感じで……。



『そこの蹲って惨めで愚かな敗北者たち、いつまでそうしているつもりですか?』



まずは注目を得るところから。


失意の底にいる彼らに優しい言葉を掛けても、届かない可能性が高いです。故に今一番気にしていることを煽る様に声を出すことで、確実に私の存在を認知させます。


そして反応が返って来るよりも先に、次の言葉を紡ぎます。



『幾ら掛けました? 幾ら負けました? えぇ、言葉にせずとも解ります。必死に働いて手に入れた金、使ってはいけなかったはずの金、大事で大事でたーいせつなお金。ぜーんぶなくなっちゃいましたねぇ?』



より煽り、怒りに火をくべる。私の幼女という外見も相まって、徐々に失意が怒りに代わっていく様子が嫌でも見て取れます。まだ理性が残っているようですが、このまま煽り続ければ本気でキレてこちらを殺しに来てもおかしくありません。幼女趣味ならば、追加で凌辱辺りもでしょうか?


しかしここで怯んではなりません。敢えて実況席、机の上に登りより注目を受けることで、“私”を意識させます。



『えぇえぇ、子供に煽られて腹が立つでしょう。煮えくり返るでしょう、怒って、怒って、怒って……。ですがその怒り、本当に向ける先は合っていますか?』



話の本筋へ。疑問や反論を喰らう前に、更に言葉を。


より多くの人間の視線を集めていることを実感しながら、より紡いでいきます。



『一つ、話をしましょう。このレース運営する者たちの話です。ご存じの方も多いでしょうが、この町は裏の存在。マフィアによって支配されています。本来国営であるはずのレースも同様で、その賭け金なども彼らが司っているのです。』



知らない人もいるでしょうが、あえて“知っている”前提で。


感情を高ぶらせた相手に対し、更にプライドを刺激させる行い。本来ならば何も感じなかったような人間でも、こうすれば上手く“通り”ます。知っている人はより話に耳を傾けてくれますし、知らなかった人も『勿論理解している』顔で聞いてくれるという寸法です。



『して、ここで疑問が一つ。“マフィア”などという汚い存在が、真っ当に賭けを行うでしょうか?』



1拍だけタイミングを置き、すぐに結論へ。


声高々に“事実”を彼らに伝えます。まぁ実際の所は、レース運営周りが実際にマフィアによってなされているとかゲームでも描写されてなかったから知りません。しかし払い戻しをせず代わりにマフィアが出て来たことから、多分そうなんだろうなぁという憶測を“事実”として語っている感じです。


そしてその“事実”は“真実”に。



『えぇそう、しないのです。するわけがないのです!』



より強調し、答えを脳に植え付ける。



『いくら賭けても、賭けても、賭けても! 彼らからすれば豚! 私達の金を貪り取って私腹を肥やしているのです! 私達が搾り取られ惨めな思いをしているなか! あざ笑っているのが彼らです! その証拠に、この人! 少額ながら何とか掠り払い戻しがあったのにも関わらず、“払われなかった”!!!』



私の48億という確実に怒りの矛先が私に向けてしまう事実を隠し、彼らに“見せてもいい”真実だけ伝え、より煽る。



『これが何を意味するか! そう、彼らが私達を食い物にしている! それ以外ないのです!』



断定、怒りの方向性を固定。



『今こそ! 今こそ立ち上がらなければなりません! 賭けた金を、奴らの私腹を肥やすために奪われてしまった金を! 取り戻さなければいけないのです!』



よし、よし! 上がって来ました! ここから更にぶち上げて……!



『今こそ怒りを力に変えて、立てよ国民! 正義は我らに在り! 今こそ悪のマフィアに正義の鉄槌を叩き込むのだ! 続けェェェ!!!』


「「「オォォォオオオオオオ!!!!!」」」



はい、作業終了。後は雄たけびを上げるふりをしながらこの尖兵たちを引き連れてマフィア事務所にカチコミしましょう。


どうせ溜め込んでるんでしょうし、全部貰って行っちゃいましょう。48億に満たない場合は無論全額差し押さえ、超えていた場合は……。迷惑料として全部持って行っちゃいましょうかね? あぁそうだ。土地の権利書とかも貰っておかないと……。




~幼女移動中~




(はい、というわけで到着しましたマフィア事務所。この世界基準ですが、結構いい建物ですよねぇ。4階建てですし。)


(この世界……? まぁあの死んじゃったマフィアが言うにはこの建物全部マフィアのものらしいしね。蓄えていてもおかしくないでしょ。……んでさ、カーチェ。)


(なんでしょ。)


(この暴徒化した人たちどうするの?)



こそこそ二人で話しながら、振り返ってみれば……。いつの間にか武装したヤル気満々の皆さんの姿が。


途中で怯まれたら困るので道中ずっと鼓舞し、ついでに私の『アイテム欄』に入っていた盗賊の武器を近くにいる人たちに分け与え気を大きくさせたのは確かなのですが、それでも渡せたのは十数人ほど。



(でもなんか数百人規模の人が全員なんか得物持ってるんですよねぇ。)



「金返せェェェ! 血ぃ吐くまで吐き出せやゴラァ!」

「ふざけんな運営! 俺の人生どうしてくれんだ!」

「屑ども全員殺されに来いやァ!!!」

「もう殺すしかなくなっちゃったよ……!」

「血祭りにあげてやる!」



もうどっちがマフィアか解らない様な状態。うんうん。このやる気だけが溢れかえっている感じですね。私としては頼もしい限りですが、チロさんからすれば怖くてしょうがないと言った感じなのでしょう。まぁ気持ちは分かります。みんな怒り心頭ですもん。……ちょっと煽り過ぎましたかね?


この世界の人々は、前世と比べかなり騙されやすいことが推察できます。その理由として、現代日本のように整った教育制度が一切ないことが挙げられます。


何せ“教育の場”など整えられるのは豊かな貴族ぐらいなもので、一般市民は読み書き計算がかなり怪しいものばかりです。私の村でも読み書きができたのは私達家族だけでしたし、間違えずにすらすらと計算できるのは私ぐらいなものでした。



(これが何を意味するかというと……、経験の蓄積がしにくいんですよね。)



人は経験から学ぶ生き物ではあるのですが、人ひとりが経験できるものなど限られています。故にその経験を文字で書き上げ共有することで『自分がした失敗を他の人が繰り返さないように』と、することが出来るのですが……、この世界の識字率は最悪。どれだけ残しても届かないのが現状です。


そんな世界でこの暴徒化した人たちは生きているわけですから、演説なんか聞くの初めてだった人もいるでしょう。いくら素人で付け焼刃と言っても、此方の頭に入っているのは数百、数千年レベルで進んだ文明の知識をたらふく抱え込んだ存在です。理論化され再現可能だと判断された“鼓舞”を叩き込まれれば、対処できるものなどいなかった、という寸法です。



(まぁそのせいでやり過ぎたんですが。……もっと煽ってマフィアと全面戦争しますかね?)


(やめて!? ほんとに!!!)


(そうですか? 仕方ありませんね……。でもこれ治めるには“ヤル”しかないので突撃だけはさせますね。)



「諸君! もう言葉は十分に尽くした! 慈悲をかけたというのに相手から謝罪の言葉もなし! ならばもう、その体に叩き込んでやるしかなし! 全員、武器を構え!!!」


「「「おぉぉおおお!!!!!」」」


「突撃ィ!!!!!」


「「「ぶっ殺せぇぇええええええ!!!!!!!」」」



「わァ……ぁ……。」


「ほらチロさん、私達も行きますよ。“泣いちゃった!”とかしてる暇ないですって。」



ほら急がなきゃ、折角人数あつめて“バグ”の発生条件を整えたんだから活用しませんと。


どうせ一般市民搔き集めて怒らせただけなので、ある程度訓練した上に人数と地の利があるマフィアに勝てるわけがないのです。まぁ最初上手くぶつかれて相手を何人か吹き飛ばせば勢いに乗って制圧しきっちゃうかもしれませんが……、誰かがみっともなく死んで怒りというバフが消えればすぐに逃げちゃうでしょう。


だからさっさと相手のボスか金庫落しておさらばするんですよ。ほら早く早く!



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