14:到着するみたい
(そういえばチロさんってどれぐらい強いんでしょ? 結構出来るのは知ってますが、数値として見たことはないんですよねぇ。)
馬車ならぬ牛車に揺られながら、そんなことを考えます。
振動というのは面白いもので、電車に乗ってる時の方がよく寝れるみたいな感じで惰眠を貪っていたのですが、まぁ少し飽きてきてしまいました。もうそろそろ目的地。王都に向かう前に“稼ぐ”ために向かっている地へと着きそうなのですが、これ以上お昼寝するとしんどくなってしまいそうです。
(だらだらのんびりネムネムするのは好きですけど、そのせいで体調を壊すのは違いますからね。)
ということで彼女のステータス。勝手に見ちゃいましょうか。
個人情報なので勝手に見てしまうのは少し気まずさを感じるのですが……、多分今から『ステータス見ますね?』と言っても困惑させるだけでしょう。レベルの話をしても理解していないようでしたし、説明するだけ時間の無駄になってしまいます。黙っておけばどうせバレませんし、まぁ良しということで。
「……『ステータス』」
「ん? カーチェ、あんた何か言った?」
「いーえ、何も。というかもう“ちゃん”付けしてくれないのですね。」
「不思議なら胸に手を当てて考えろクソガキ。」
すっごい攻撃的な笑みを浮かべながらこっちを見てくる彼女。
あらら、嫌われてしまいましたかね? とりあえず言われた通りにしておきますか。
えーっと、野営のお手伝いせずにずっと眠りこけてたのとか、夕食の準備中に眠りこけて鍋に顔ぶち込んで火傷と溺れそうになったこととか、こっちを襲いに来た魔物目掛けていつもの糞を投げつけたらあっちが滅茶苦茶キレてきたことぐらいですかね?
「ぐらいじゃないわよぐらいじゃッ! ひっぱたくわよッ!!!」
「もう2桁ぐらい叩かれてますよね、この一月で。……あ、親父にもぶたれたことないのに!」
「でしょうねぇ!」
そう言いながらキレるチロさん。え~、でも私仕事してますよね? アイテム欄に荷物入れてますから馬車のスペースは最大限つかえますし、食料品はいつでも新鮮なものが食べられます。あと普通に炊事洗濯掃除できますし、お料理は昔からちょっとした趣味としてやっていたので得意な方です。実際チロさんから『無駄に美味しいのムカつく』って評価頂きましたし。
ほら、便利でしょ。私? 仕事してますよ?
「確かに便利なのは認めるけど、それがずっと眠り呆ける理由にはならない、っていってんのッ! 二人しかいないんだから作業は分担しなきゃならないって何回も口酸っぱく言ってるでしょうがッ! あと作業中寝るなッ!!!」
そう言いながらガチ切れるチロさん。
まぁそもそも。この世界に置いて、旅というものは酷く危険なものなのです。
そもそも舗装された道が少なく不便ですし、防壁の無い村や町の外は危険がいっぱい。盗賊のみならず魔物が結構襲ってくるため、気の休まらない時間が続きます。そのため一応雇用者と被雇用者という関係である私達であっても分担して互いの安全を守らなければならないのですが……。
うん、ぶっちゃけちゃうと面倒です。はい。なんで夜寝ちゃダメなんですか……?
「両方とも寝ると死ぬから怒ってんのよッ! 次見張りの時に眠り込んでたら尻ひっぱたくからねッ!!!」
「はーい。」
だからお昼寝して寝だめしてるんですよ? というとまたキレられそうなので普通のお返事を送りながら、先ほどから開かれていた彼女のステータスを覗き込みます。
(あ、やっぱ強い。)
[STATUS]
Name : チロ
JOB : 魔法使い
Level : 13
EXP : 89 / 227
HP : 16 / 18
MP : 27 / 27
ATK : 6
DEF : 8
M.ATK : 15
M.DEF : 9
SPD : 10
LUK : 3
Skill : 魔法(J)
流石ソロで冒険者してるだけあるのか、結構レベル高い上にステータスも強めです。流石に原作に出て来た魔法系のキャラに比べれば弱いですが……、もうちょっと成長すれば普通に原作に絡んでいけそうなレベル。この状態でも序盤ならばメイン火力に成るでしょうし、成長次第で中盤も活躍できそうな性能してます。……『10年後の原作開始時に生き残っていればストーリーに関わっていないとおかしい』強さですねコレ。
あのゲーム、『天アバ』ってかなり多めのキャラがわちゃわちゃ出てきてそこからパーティメンバーを集めていく奴なので、基本冒険者とかで名の知れてる人はスカウトしていくんですが……。『チロ』なんてキャラいませんでしたし、この前考えていた通りそう言う事なのでしょう。
つまりこの人いつか死ぬんですねぇ。はえー。
「なんかめっちゃ失礼なこと考えてるわねアンタ。」
「チロさん死にたいですか? あ、これは軽口への返答とかではなく事実確認です。」
「んなわけないでしょうがッ!? 頭沸いてるの!?!?」
「ですよねぇ。」
というかこの人に魔法直撃させられたら死ぬのは私か。……あんまり怒らせないようにしとこ。
あ、ちなみにスキル欄にある横にJって書かれた奴は職業スキルってやつですね。キャラが初めから持ってる固有スキルとはまた別の、転職によって手に入る奴です。これってもし違う職業になっても継続して使えるので便利なんですよねー。
……正直彼女がどうなろうが私はお昼寝出来れば構わないので気にしないのですが、ある程度こちらの意図を組んでくれてなおかつ一定の強者に守ってもらえる現状はかなり得難いものだと推察できます。MPがかなり多く継続戦闘能力も高いため、正直これ以上の人を探すとなるとそれこそ原作キャラを引っ張って来る必要があるでしょう。
見限られてどこかに放置されたら困りますし……。今の関係を維持するためにも、今回の目的地ではちょっと頑張った方が良いかもしれませんね。
「……どうしたのよアンタ。さっきまでずっと後ろで寝転がってたじゃない。」
「生まれてからは初めてですが、ちょっと本気を出そうかと思いまして。」
「…………まだ付き合い短いけど天変地異だということは解るわ。明日世界滅亡するのかしら?」
「するとしたら10年後ですねぇ。あ、見えて来た。」
「え、10年後?」
さっきまでずっと寝転んでいた馬車の中から顔を出し、外を見渡してみれば大きな防壁。
そう、私達がいる王国の中で王都に次ぐ巨大都市。『ギルバーレ』です。
王都となると王様のおひざ元な上お貴族様もいっぱいいるので商人として旗揚げするにはちょっとややこしいというか、色んな利権が関わってくるので面倒なのですが……。このギルバーレはかなり開かれている都市なので、新人商人が旗揚げするのにはかなり魅力的な町だったりします。
(まぁ町自体の治安があまりよろしくないので、身を護る強さが必須な町でもあるのですが。)
ゲームにおいてはとある新人商人がこの町で商売を始めるので、一定期間護衛して欲しいみたいなサブイベントが起きたりします。町自体が結構面白い所ですし、ミニゲームも多かったのでそれ関連でしっかり覚えていた、って感じですねー。
「さ、チロさん。町に着いたら早速馬車と牛を預けて町に繰り出しましょう。あ、途中酒場か何かで噂売り、ニュース屋も捕まえて情報抜いておかないと。折角本気を出すんです、もうここで一生分稼ぎ切りますよー。」
「え、ちょっと、ちょっと待って!? 10年後滅ぶの!? ねぇアンタそういう嘘つかない口でしょ!? 説明しなさいよ! なんでそんな重要そうな情報をさらっと明確に出すのッ!?」
「……ニコ」
「なんでそこで黙るッ!?」
説明するの面倒なのでまた今度ですねー。
RPGで金策と言えばアレですよね。




