転生したら魔力ゼロだった
俺は、リヒト・イステンシュタイン。日本で高校生をやっていたのだが、トラックとの衝突事故であっけなく死に、異世界に転生した。
この世界でも俺は、前世をなぞるように母子家庭で育てられた。
母のカレン・イステンシュタインは俺を育てるために複数の仕事を掛け持ちしていたが、長年の無理が祟って倒れてしまった。幸い命に別状はなかったが、今までのような無理は出来なくなった。
母の貯金のおかげでしばらくの生活費はなんとかなりそうだが、俺が進学予定だった魔法学校の学費を支払うのは厳しそうだ。
だから俺は学校へ行くのはやめて、働きに出ると母に提案したのだが、猛反発を受けてしまった。内職をしてでも学校に通わせると言ってきたので、さすがにそれには反対し、学校には通うが学費は自分で稼ぐということで決着がついた。
技術も資格もない俺でも稼げそうなのは冒険者になることぐらいだったので、俺は冒険者ギルドに行ってみることにした。幸い俺の住むテトロンという街には、この国で二番目に大きな冒険者ギルドがある。
「冒険者ギルドへようこそ!」
ギルドの受付嬢が笑顔で出迎える。
俺は早速、冒険者登録のための書類に必要事項を書いていく。
「はい。これで大丈夫です!次は魔力量の測定を行うので、この水晶に手をかざしてください」
言われたとおり、カウンターの上に置かれた水晶に手をかざしたが、なんの変化も起こらなかった。
そう、俺の魔力はゼロだったのだ。




