第56話 ロゼリールの巣作り2
第56話掲載させて頂きました。
毎週月水金の18時~19時頃に掲載を予定しております。
急な出張が入り先週金曜日(3/22)の投稿が出来ないままになってしまいました。申し訳ありません。
ブックマークも40件を超え、評価も190PTを超えました。本当にありがとうございます。
レビューや評価、感想などを頂けると今後の創作意欲に繋がります。
またご指摘や、こうした方がいい等、助言も頂ければなと思います。
ロゼリールが巣作りを開始して1週間が経った。
巣作りは順調のようでグランさんが手伝いに来てから3日ぐらいで当面の巣作りは完成したようだ。
これから配下のソルジャービーが増えれば巣を徐々に拡張していく…ということになるらしい。
巣作りがおおむね完成したタイミングで自慢げにロゼリールが俺の元へ来るので俺達は巣を見たが、ロゼリールの部屋。女王の間があって、配下のソルジャービーの部屋、食物庫があった。
これからハチミツを製造する部屋など色々作るとのこと。エマの巣は本家だからか非常に広かった。あそこまでとはいかないが、ロゼリールの巣もどんどん拡張していくのだろう。
そして、当の本人は巣作りはソルジャービーに任せて家の周りを散策しているとか…まぁこの辺りには強い魔物もいないし心配はしていないが…
そしてある休日の朝、ロゼリールが俺を呼んだ。何かと思えば隣に鋭い爪が特徴の魔物がいる。
この界隈では見た事のない魔物だが…新しくできた友達だろうか?
「ビビッ!」
ロゼリールは俺に向かって鳴き、隣の魔物を紹介する。隣の魔物も俺に一礼をする。
うーん…わからん。とりあえずリナさんを呼ぼう。
俺はロゼリールにちょっと待っててくれと言い、家に入りリナさんを呼ぶ。
リナさんはリビングでハルとお茶を楽しんでいたようだったので、すぐに来てくれた。
「ロゼリールがなんか紹介してるみたいなんですが…」
「あぁ。この子は”ネルモル”っていう魔物ね。普段は地中で生活してる魔物よ。大人しい性格で、その鋭い爪で地中を掘りながら生活してるわね。」
なるほど。察するに、ロゼリールとソルジャービーが穴を掘りながら巣を作っていたら、同じく穴を掘っていたこのネルモルと出会ったという感じだろうか。
「もしかして友達か?それに巣作りに協力してくれたのか?」
「ビビッ!」
ロゼリールは元気に返事をする。恐らくどちらも正解なのだろう。しかし、わざわざ巣作りも手伝ってもらっているとは…できる事は限られるがお礼をしなければ。食べ物でいいかな?そう思い、俺はロゼリールに与えているおやつであるチゴの実をロゼリールに2匹分渡す。
チゴの実はハルも大好物なので多めに採取するようにしている。チゴの実を埋めたらチゴの実が生る木とか生えてこないかな?そしたら採取も楽なんだが…
4つのチゴの実をロゼリールに渡すと2個ネルモルに分けていた。
ネルモルは嬉しそうにチゴの実を持っている。どうやらネルモルもチゴの実が好きなようだ。
ロゼリールもこちらにきて新しい友達ができたようでなによりだ。というか普段ふらふらこの界隈を散策しているのなら新しい友人をまた連れてくるかもしれないな。ネルモルもまた顔を出してくれるかもしれないし、今度スライズに行った時にグランさんに生態を聞いてみよう。
「ビッ!」
ロゼリールは俺に鳴くとチゴの実を抱え、ネルモルと巣へ帰っていく。
まぁ夕飯はリビングでみんなで食べるからそれまで巣作りをするかふらふらするか自由に過ごすのだろう。
「ロゼちゃんも新しいお友達ができて良かったわねぇ。ネルモルは基本地中で暮らしてるし穴を掘らせたら蜜蜂族よりも効率良く巣作りが進むんじゃないかしらね。」
「そっかぁー。ロゼリールも巣作りがはかどるし仲の良い友達もできて、こっちの暮らしに慣れてくれたらいいですよねぇ。」
「そうねぇ。さ!スイトもとりあえずはやる事ないんでしょ?天気もいいし、外でお茶にしましょ!」
そうだった。リナさんはリビングで紅茶を飲んでたんだったな…
「すいません。紅茶淹れなおしてくるんで、椅子に座って待ってて下さい!」
「お茶冷めちゃっただろうなぁー。早く飲みたいなぁー。」
「大至急淹れてきます!」
「ふふっ。待ってるわねー。」
俺は駆け足で家に入りお茶の準備をする。ハルはぴょんぴょん跳んで俺の頭の上に乗る。
「ピィー」
なぜか俺の頭の上が落ち着くようだ。が、今から湯を沸かすけど大丈夫なのか?
ハルにお湯沸かすぞー?と聞くと、ピッ!と言って即座に降りて外へ出ていった。
熱いのが苦手なのか、それとも蒸気が苦手なのか…その辺も詳しく調べた方がいいかもしれないな。熱いのが苦手なら、火属性の敵と対峙した時に不利になり得るだろうし。
ともかくいつも以上に素早く紅茶の準備をし、庭へ持って行く。
玄関を出るとリナさんがハルの相手をしてくれているようだ。
俺はリナさんに紅茶を淹れ、ハルにはチゴの実を渡す。そして俺も椅子に座り紅茶を淹れゆっくりとひと口飲む。
ふぅー…落ち着くなぁ。気温もちょうどよくぽかぽかする。絶好のお茶日和だ。
「ロゼちゃんも巣作り頑張ってるわねー。」
外にあるロゼリールの巣の出入り口を見ながらリナさんは言う。
とは言えあれはほぼソルジャービーの通用口だが。ソルジャービーも通用口から出たり入ったり忙しそうだ。巣作りは大方完成したので今は食料や、ハチミツ作りに精を出しているのだろう。
「そうですねぇ。まぁ本人は暇があればふらふらほっつき歩いてるみたいですけれど。」
「まぁこの辺りなら大丈夫でしょう。攻撃してくると言ってもバイトラビットくらいなもんだし。」
確かに。ロゼリールが住んでいたマルスーナの森には色々な魔物がいたしな。天敵となるビッグフロッグがいないだけでも十分安心して過ごせるだろう。
そういえば数日前、ロゼリールの配下のソルジャービーに呼ばれたのだが、足元にバイトラビットが落ちていたことがあったな。どうやらソルジャービーが仕留めたようで、俺にくれるということだったのだが…皮を剥いで、肉だけにして半分を試しにソルジャービーに渡してみると喜んで巣に持ち帰っていた。木の実とか蜜だけじゃなく肉も食べるんか…と思った。
そしてソルジャービーがバイトラビットを仕留めれるという事はロゼリールにとってはなんら造作のないことなんだろうなぁ。とふと思う。
「ハルとロゼリールが無事でのびのび生活できたらそれが一番ですよ。あ、もちろんリナさんも!」
「えー?あたしはついでなのー?」
俺とリナさんは冒険が終わったあと冗談も言えるようになっていた。
それだけ距離が縮まりお互い気を遣うという事がなくなった。と言えるんじゃないだろうか。
そもそも俺は前世から女性に全く縁がない生活を送っていたのだが…こんなに可愛い人と生活して、冗談も言い合えるようになるとは…慣れとは恐ろしいというか素晴らしいというか…それでも初対面の女性にはなかなか上手く話せれないのも事実だが。
容姿はどうあれリナさんの性格や毎日一緒にいる事でやっぱ慣れてきて俺もリナさんもお互い気を許せているんだろうなぁ。
そんな事を思いながら紅茶を啜る。
「あ!そういえばスイト。ライフカードは確認したかしら?」
「あー…そういえば…帰ってきてから確認してないなぁ。ロゼリールの事とか色々あったし忘れてました。」
「なら今確認しましょう!この間の冒険で絶対成長しているはずだし!」
この間の冒険で多少なりとも成長できていれば嬉しいなぁ。火魔法も低級ではあるが使えるようになってるし、全く成長していないって事はないだろう…多分…
俺は緊張しながら自分のライフカードを開くことにした。
《ネルモル》
主に地中で生活する小さな魔物。昼間地上に出てくることは滅多にない。
大きく鋭い爪を持つが性格は大人しく、襲ってくることはまずない。
木の実や地中に生息する虫などを食べる。
その長く鋭い爪を使った穴掘りが得意である。




