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第33話 やっぱりこのぬるぬるだけは慣れないわ…

第33話掲載させて頂きました。


毎週月水金の18時に掲載を予定しております。


少しずつ評価が上がって、モチベーションも上がっております!読者の皆様いつもありがとうございあMす。

レビューや評価、感想などを頂けると今後の創作意欲に繋がります。

またご指摘や、こうした方がいい等、助言も頂ければスキルアップに繋がると思いますので頂けるとありがたいです。

 俺達は道をさらに歩き、目的地へ向かう。

 ぬめぬめむし1体に出会ったくらいで、虫系の魔物にはなかなか出会ってない。


「虫系の魔物ってなかなかいないんですね。」


「普段ならしびればえもぬめぬめむしも見るんだがな。こないだの雨のせいかまだ少し空気も地面も湿っているからビッグフロッグに食われたんじゃないか?」


 なるほど。ビッグフロッグの主食は虫系の魔物だったな。

 そして湿っているから行動範囲を増やしていると。


「この辺の魔物では、ビッグフロッグが一番めんどくさいわねぇ。」


「そうよね…体表の分泌する粘液もそうだけど、解体するときぬるぬるするもの…肉は美味しいんだけど…」


 …恐らくアイナさんの面倒くさいと、リナさんの面倒くさいは意味が違う気がする。

 とにかく、この辺で一番面倒くさいってことはアイナさんが言った通りなんだろう。

 確かにドリルボアは一撃は強烈なものの、避けるのは容易いし対策は立てられる。

 見ていた感想を言うならば大きな小回りの利かない一撃は強烈なバイトラビットだ。


「お。話してたら目の前にいるぞ?」


 グランさんはイエルムが察知する前に目視で確認する。俺もグランさんの視線の先を見ると数メートル先にカエル…と聞いていたがでかいな。1メートルないくらいの大きな蛙がピョンピョン跳んでいる。


「さて…こちらには気づいてないようだけれど…」


「とりあえずイエルムの光の矢でこちらに気づかせましょう。スイト君にもどう戦うか見せないといけないからねぇ。イエルムできる?」


「ピィ!」


 ひと鳴きするとイエルムは光の矢を放つ。ビッグフロッグの目の前に強烈な一筋の矢が放たれた。

 やはりハルとは威力も全然違うな。

 ビッグフロッグは放たれた光の矢に驚いたが放たれた方向を確認し、俺達を見る。

 ビッグフロッグは俺達の姿を確認し、こちらへ跳んでくる。が、そこまではスピードは出ないんだな。


「よし、こっちに来たな。スイトは俺の後ろをついて回れ。ハルはグライアの上だ。」


 俺は頷きグランさんの後ろをついて回る。対峙するのはイエルムとリフル。

 直接的な攻撃しかないであろうグライアはハルを乗せ俺とグランさんの前に立つ。


「イエルム、リフル!可能な限り、ビッグフロッグの攻撃を避けなさい。」


「ピィ!」「ピー!」


 2匹は返事をするとイエルムが前に、イエルムの斜め後ろにリフルが立つ。

 ビッグフロッグは屈んで大きくジャンプをする。そして、イエルムとリフルがいた場所に腹から落ちる。

 バシンッ!と音が聞こえた。ボディプレスか。

 イエルムとリフルの大きさ的にも大ダメージを食らわせられると思ったのだろう。

 ビッグフロッグは即座に体勢を戻し今度は口を開けリフルに向かって凄い速さで長い舌を伸ばす。

 その間にイエルムはビッグフロッグの気を向けるために光の矢を一撃放つ。 

 光の矢はビッグフロッグの頬袋辺りをかすめ、そのまま木に直撃した。

 リフルは何やらごにょごにょ何かを唱える。リフルが唱えていると周りの草がビッグフロッグに絡んでいく。

 草木を操るとは聞いていたけど実際見てみると凄いな。リフルが自分の手足を動かすように草を操っている。


「草木を操って相手の動きを止めるんだよ。リフルの得意技だ。まぁ大きな木の根などはまだ動かせないらしいが…」


 まだ?それじゃいつか木も自在に操ることができるんだろうか…それよりもビッグフロッグは無数の草木に手足を拘束され身動きが取れない。1本だと恐らく容易く切れてしまうが何十にもなった草の根だ。なかなかほどけないだろう。


「リフル!ナイスよぉ!イエルム!とどめを刺しなさい!」


「ピィー…ピィッ!」


 イエルムは溜めて、先ほどよりも、ハルよりも大きい光の矢をビッグフロッグに放つ。

 光の矢はビッグフロッグの人間で言う眉間辺りに刺さり貫通していく。

 その一撃でビッグフロッグは動かなくなった。


「よぉーし。2人ともいい子ねぇ。」


 アイナさんはにこにこしながら2人を迎える。

 2匹の連携は非常に素晴らしかった。イエルムが完全なアタッカー。リフルがサポートに回る。

 立ち位置もそうだし、動きも洗練されていた。


「ビッグフロッグぐらいならイエルムだけでも戦えるのよ。だけど、森や植物があるところではリフルの『植物操作』を使えば大概相手を拘束できるわ。それ以外にも葉を散らして相手の視界を遮ったりもできるけど。イエルムに頼ってばかりじゃ、リフルも育たないからねぇ。」


 やはり仲間同士の連携も大事になってくるんだな。ビッグフロッグは一撃で仕留めていたが、もっと強大な魔物と戦うこともあるだろう。その際にリフルの植物操作はイエルムだけでなく、グライアの攻撃も確実に致命傷を負わせることになるだろう。


「ビッグフロッグの攻撃にはボディプレスと舌での攻撃。それに頬袋を膨らませ粘液が混じった水を吐き出す技があるんだがな…今回は見られなかったか。」


 グランさんいわく粘液が混じった水を飛ばす技は威力はないものの味方の視界を遮る技なんだそう。イエルムとリフルは避けていたがボディプレスもそこそこの威力はあるがしっかり装備していれば致命傷にはならないが、肌が露出しているとそこそこのダメージを食らう。舌での攻撃もしっかり装備をしていればそこまで痛くないそうだが、問題は自分の手に攻撃が飛んできたときらしい。

 その攻撃で装備の盾や剣を落としてしまうと、ビッグフロッグは攻めてくるとか。

 しかしどの攻撃にも対応できないと長期戦になるのは確実だし、その間にドリルボア等が襲ってくることもあるそう。

 身動きが取れない中でのドリルボアの一撃は死に値するので、なりたての冒険者がこの界隈で命を落とすとしたらビッグフロッグとドリルボアのコンボだそうだ。

 それでもこの2匹と同時に対峙することは滅多にないが、ソロの冒険者は年に1人は大怪我をして帰ってくるとか。

 そのような事故を防ぐためにもギルドは2人以上の冒険を推奨しているとのこと。


「なるほど。イエルムとリフルのコンビの下位互換…みたいなものなんですね。」


「まぁざっくり言うとそんな感じだな。面倒くさいことにこの2匹は食性も違うから敵対しないんだよ。」


 ドリルボアは草食。ビッグフロッグは肉食だからか…2匹とも食性が一緒なら同時に襲ってはこないもんな。


「あー…やっぱりこのぬるぬるだけは慣れないわ…」


「リナさん…ビッグフロッグの粘液をどうするんですか?」


「え?これ薬になるのよ?ビッグフロッグってしびればえとか食べるのに痺れないでしょう?粘液を加工して、虫刺されとかに効く薬が出来るのよ。」


 そういうことか…確かにしびればえを主食としているのに平気なんだもんな。粘液とか体の構造的に耐性があるのかもしれない。


「肉も欲しいけど…グランさん?いる?」


「ビッグフロッグは処理めんどくせぇんだよな…こういう時塩とか水辺が近くにあればなぁ…燃やしちゃっていいぞ。」


「はーい。粘液採取したら燃やしちゃうわね。」


 リナさんはポケットの中から出したガラスの瓶に粘液を入れていく。ある程度溜まると火魔法でビッグフロッグを燃やした。


「まぁビッグフロッグの攻撃はおおよそその3パターンね。この辺の魔物の中ではそこそこ状況などを考えるみたいだけれど…ほぼパターン化されてるもの。」


 リナさんはさっと燃やし俺に説明してくれる。

 ボディプレスのような近距離での物理技。舌を伸ばす中距離程の技。それに加え粘液が混ざった水鉄砲のような攻撃。か。


「魔物研究に長けている人物が言ってたが、粘液の水鉄砲は主に餌を捕る時に良く使われるらしい。動きを止めてそのまま捕食。ってことだろうな。」


 なるほど。あくまで捕食に用いる要素が高い技だから見れなかったのかもしれないな。

 もしくはイエルムとリフルがスライムで粘液がそんなに通じないと踏んだのか…

 なんにせよ攻撃力はドリルボアの方が上で攻撃もボディプレスは回避する余地があるし、舌の攻撃も死に至る程度ではなさそうだった。


「しかしこの辺にビッグフロッグが出るってことはこの間の雨のせいか。普段はこの辺には出ないんだが…」


 確かに森という事を考えてもいつもより地面は湿っている感じがする。

 活動範囲を拡げて餌を捕りに回っているのだろうか?


「そうねぇ。でも行きの段階でスイト君とハルちゃんにドリルボアとビッグフロッグの戦い方を見せられたのは良かったわねぇ。主に向こうから襲ってくるのってこの2体だもの。」


「そうだな。あとはこちらから攻撃しなければ襲ってこない魔物が多いからな。スイトは大体把握できたか?」


「そうですね…でもお二人のような、スムーズな立ち回りができるかと言われると…」


「あらあら。そんなことは気にしなくていいのよ?私達だって最初は思うように動けなかったもの。こればっかりは実戦あるのみ!よぉ。」


 アイナさんがフォローを入れてくれる。

 確かに目で見て、頭で整理をしてみたものの、いざ実戦で…となるとまだまだ不安だし、スムーズに動ける自信はない。が、それでもアイナさんやグランさんの戦い方を見られたのは大きい。

 何も知らない敵と戦うより、ある程度の性質などが分かっていた方が実戦経験のない俺でも格段に戦いやすさは違うだろう。

 それに実戦経験が俺はまだないに等しい。最初からできるわけないんだ。そこは焦っちゃダメだ。俺が焦る事によってハルにも迷惑がかかるかもしれない。


「ははは。スイトはすぐ不安になるな。まぁだがその分仲間の魔物を思っている。ということだろ?大丈夫だ。アイナが言った通り俺だって最初は右も左も分からなかったからな。その時に俺の師匠が…あぁ…」


 グランさんの師匠は相当スパルタだったのだろうか…グランさんのテンションが下がっている。


「まぁそれがスイトの悪いところでもありもちろんいいところだわ。でも、冒険前と違ってちょっと自信がついてわくわくしてる…って感じかしら?」


 リナさんは俺にニッコリ笑いながらそう話しかけてくる。

 そう見えるのかな?でも実際、最初は不安で仕方なかったが、今はハルがいるし、ハルの為にもしっかりしなきゃ。と思っている。

 それに、グランさんとアイナさんの戦闘を見ていて、俺もああいう風に戦いたい。と思った。

 それが表情とかに出てたのかな…?


「リナさんは凄いですね…その通りです。不安だけどそれよりも俺はワクワクしてます。」


 俺は多分この人には嘘をつけないな。つくこともないだろうけど、すぐ見抜かれそうだ。

《ビッグフロッグ》


 最大で1メートルくらいになる蛙の魔物で、マルスーナの世界樹の木陰側ではよく見る魔物。

 攻撃パターンが3パターンあり、高く跳びあがってのボディプレス。長い舌を勢いよく伸ばしてくる中距離攻撃。粘液が混じったぬるぬるの水鉄砲がある。

 食用としても美味しいのだが、体表に出ているぬるぬるの粘液を取らなければいけないので下処理が必要である。

 また、粘液は虫刺されなどに効く薬に用いられる。

 

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