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第14話 モンスターのテイムのやり方

第14話掲載させて頂きました。


当面の間、1日間隔の18時に掲載を予定しております。

土日は私用で忙しい為、おやすみをいただきます。

忘年会やら、草野球やら…


ご指導やご指摘、感想などありましたら頂けると嬉しいです。

それではよろしくお願いします。

「おまたせー。はい。これリナちゃんの紅茶ねー。スイト君にはこれね。グランは洗い物終わらせてすぐこっちに来るわ。そろそろイエルムを預かりましょうか…頭疲れちゃうでしょ。」


 アイナさんはドリンクを俺とリナさんの手元に置いた後、笑いながらイエルムをそーっと持ち上げ、自分の膝の上に置く。

 イエルムは全く起きる気配がない。リフルはグライアの上でぴょんぴょん跳んでいる。

 スライムによっても性格が違ってくるのかな。

 イエルムはおとなしくてリフルは活発な気がする。どっちも見てて可愛いけど。


 そして、アイナさんが持ってきてくれた飲み物をひと口飲む。

 おっ。香ばしくて後味はすっきりしている。

 前世で言う麦茶みたいな感じだ。飲み慣れた味で美味しい。


「さーて…なにから話せばいいのかなー?」


 アイナさんはうーん…といったような表情で言う。


「そうねぇー…スイト君はまずこの子達を見てどう思ったかしら?」


 この子…イエルム。リフル。それにグライアの事だろう。


「的外れな答えかもしれませんが…可愛いです。愛嬌があって。」


「あらあら。嬉しいわね。可愛い…か。正解になるのかなぁー…」


 アイナさんは、また更に悩んでいる。そんな変なこと言ったかな…?


「私からしてみてもこの子達は可愛いわ。そしてグランにとってもこの子達は可愛いと思う。そこまでは正解よ。ただ、私達は【職業】としてこの子と一緒にいるっていう側面があるわよね。」


 確かにそうだ。今はパン屋だがアイナさんもグランさんも元々は冒険者だ。

 そして、モンスターと一緒に戦って生計を立てていたのは間違いないだろう。


「スイト君が食べてた香草入りのパン。あれはリフルが採ってきたものよ。ドリルボアもそう。グライアとイエルムが倒してくれたものだわ。」


 なるほど。リフルは植物に詳しいと言っていたし、グランさんもさっきグライアを褒めていた。

 イエルムもドリルボアを倒せるのか。

 リナさんの家からゴトウッドまでに俺はスライムを倒してきたが、脅威には感じなかった。育て方次第でそこまで強くなるものなのか。


「ま、要するに俺もアイナもこいつらがいなければ、今の生活できてないってことだな。」


 アイナさんの横に先ほどの飲み物を置きながら、洗い物を終えたであろうグランさんが言う。

 

「あら?もう洗い物終わったのね。お疲れ様。グランの言った通りよ。そして私達はこの子達をパートナーとして見ているわ。もちろん可愛いのだけどね。パートナーというからには、どちらが上とか下とかないの。スイト君にもし仲間ができた時、常に対等に見て、信頼して、大事にしてあげる。そんなモンスターテイマーになって欲しいわ。」


 しっかりとした表情でアイナさんは俺に言う。

 グランさんもうんうんと頷く。

 アイナさんもグランさんも3匹を大事な仲間と思い、愛情をもって接しているのだろう。だから3匹は2人に応えてくれる。

 非常に良い関係だと思うし、俺もモンスターテイマーになるからには、そういう関係が築けたらいいなぁ…と素直に思う。

 だけど、その反面それは当たり前の事なんじゃないかと思った。


「ただ、モンスターテイマーやモンスターと共に行動している奴はそうじゃない奴が多くてな。」


 と、グランさんは言う。

 さっきもアイナさんが少し愚痴っていたような…若いテイマーの質が下がってきているとか、テイマーの職をかじったなら…とか。


「やっぱり、モンスターのことを下に見る冒険者が多いのよねぇー…まぁ確かに『使役』する。って言い方はするけどね…」


 やっぱり。俺も前世ではこき使われていたし、人間下に見るとこき使う奴がどの世界にもいるんだな。

 可愛がってくれる先輩もいたけれど、対人間じゃなくモンスターだし、使役するには何らかの手順を踏むだろう。その上で見下しやすいってことなんだろうな。

 俺は前世を踏まえそんなことはしないが。あんな思いは絶対にしたくない。最後は精神にも肉体的にも異常をきたしていた訳だし。


「人間と魔王が敵対している以上、魔王側のモンスターを忌み嫌うのは仕方ないかもしれないがな。それでもこいつらは俺と共に生きて、信頼し合っている。そういう関係であるのがテイマーとして当たり前の姿じゃないかと思うんだけどな。」


 確かにモンスターが魔王側という認識があってそれを使役するのだから、それも見下す要因にはなり得るな…

 どちらが正解か分からない。が、俺はアイナさんやグランさんを見て二人のようになりたいと思った。

 魔王…か、そういえばルナリスも勇者も魔王もいるって言ってたな。


「ま、なんにせよモンスターテイマーを志すんだったらそういう気持ちでモンスターと付き合っていってほしいってことだな。」


「そうね。自分で言うのもおかしいけれど、私達のようなモンスターテイマーはなかなかいないわね。しっかり心を通わせていい関係を築いてほしい。スイト君にならできるわよねぇ?」


 アイナさんはそう俺に問う。

 もちろん俺もテイマーになるからには、仲間のモンスターと上も下もない、対等でお互い信頼できるようなモンスターテイマーになりたい。

 俺はアイナさんの問いに迷いなく、


「はい。もちろんです。」


 と答えた。

 アイナさんもグランさんもそれなら安心だ。と言わんばかりの表情だ。

 リナさんは良かったー!とニコニコしている。

 まぁでも…前世の事も踏まえたら、俺がされてきたようなことを仲間にできるわけない。

 あんな思いをするのもさせるのもごめんだ。

 …まぁまだ仲間いないんだけどね…


「よし!先輩テイマーとしての心構えを教えたところで、色々教えなきゃな。」


「そうねぇ。同じ志を持つ良い後輩ができたんだもの。」


 2人共、凄く嬉しそうな表情で俺を見る。

 そんなに他のモンスターテイマーって酷いものなのか…?

 出会ったモンスターテイマーがアイナさんとグランさんだけだからなまじ信用ができないんだが…


「まずはモンスターのテイムのやり方からよねぇ。これにはいくつか方法があるのだけれど。」


 うん。モンスターをテイムしないとモンスターテイマーは始まらないよな。

 アイナさんが言うには、弱らせて反撃されないようにしてからテイムの魔法をかける方法。

 これが最も多いパターンなんだとか。

 確かに、この方法だと多くの冒険者が冒険者の方が立場が上、モンスターの方が立場が下と明確に位置付けしそうだよなぁ。

 

 あとは、モンスターを倒してからモンスター側からついてくることがあるらしい。

 好戦的なモンスターには、自分を打ち負かした冒険者を主と認めて従うモンスターもいるとのこと。

 グランさんのグライアがそうらしい。

 アイナさん曰く、


「打ち負かしたグライアに突如近寄って俺についてこないか?って言ったのよねぇ。そしたらグライアがグランを主と認めてたわ。」


「だってよアイナ。あんなところで放っておいたらグライアは確実に死んでたしな…そもそも若いサイレントウルフがあんなとこにいたんだぞ。確実に迷子じゃねぇか。そう思ったら…な。」


 グランさんらしい男気のある方法だと思う。そして男らしさの中に優しさもある。

 そんな主に迎えられてグライアも幸せだろうな。


 そしてもう一つが心を通わせること。らしい。

 曖昧だな…とは思ったがどうやらアイナさんとイエルムがそうなんだとか。

 たまたまイエルムと対面して、意気投合したそうで…あとは行く先々をイエルムが後ろからついてきて、テイムしていいか聞いたら了承を得たのでテイムしたと。

 スライムは好戦的ではないし、攻撃を仕掛けなければ反撃されることも早々ないので、種族によってはこういう方法もある。とアイナさんは言っている。


 ちなみにリフルはイエルムをテイムした後に出会い、イエルムとリフルが何やら意思疎通をして、ついてくることになったのだとか。

 色々なテイムの方法があるんだな…


「しかしまぁ、ほとんどの場合が弱らせてからテイムの魔法を使う方法だわな。今ここにいる3匹は珍しいケースだとは思うが、使役の魔法を使っても奴隷のように扱うってことは俺らはしないけどな。」


「問題なのはテイムした後の付き合い方よねぇ。一番最初に説明した方法が一番オーソドックスなテイムの方法だけれど…心を寄り添わせるって事には時間がかかるように私は思うわ。」


「最初はそりゃ心なんて通じてないだろうが、冒険者からモンスターに対してちゃんと向き合ってやれば自ずと良きパートナーになってるとは思うけどな。」


 アイナさんとグランさんは真剣にそう話す。

 この人達は真摯に自分のモンスターと向き合っているのだろう。


「スイト君が最初のモンスターをどうやってテイムするのかまだ分からないけど…良きパートナーに巡り合えると良いわねぇ。」


 アイナさんは微笑んでそう言う。

 アイナさんの膝にいるイエルムはまだ目を瞑っている。気づいたらグライアも目を瞑って寝ているし、さっきまで元気だったリフルもグライアの横で寝ている。

 幸せそうな3匹を見て俺も頬が緩む。


「そうですね。俺もまだ自分の仲間がどんなモンスターなのか分かりませんが…お二人とこの3匹のような関係を作られるようなテイマーを目指したいと思います。」


「それを聞いて安心したわぁ。スイト君がその気持ちを忘れないままだったら良いテイマーになれるわよ。」


「俺らもいつか追い抜かれる日が来るかもな。早く一人前になって一緒に冒険に出たいもんだ。」


「俺もお二人に早く追いつけるように一日も早くテイムしないと…良いお話を聞かせて頂きありがとうございます。」


 俺は二人に向かい頭を下げる。

 ふとリナさんを見ると、リナさんはにっこり笑う。

 この二人に俺を紹介してくれたリナさんにも感謝してもしきれないものがあるなぁ。


「まぁ何か分からないことがあったらここに来るといいさ。俺もアイナも喜んで色々教えよう。」


「あ!テイマーについて書かれた本が色々あったわねぇ。今度来た時までに選別しとくわね。さてと…お昼休憩はそろそろ終わりにしてお仕事を始めましょうか。ね?グラン」


「もうそんな時間か。二人ともまた来てくれ。えーっとお代は…パンが8個とセットが2人で大銅貨2枚と中銅貨2枚だな。」


「はい!グランさん。二人ともスイトくんの為に色々話してくれてありがとう。また寄るわね。」


「おう!確かに…丁度だな。毎度あり!俺らもまたリナの店に寄らしてもらうわ。」


「アイナさん。グランさん。今日はどうもありがとうございました。パンもスープも美味しかったです。また寄らせて頂きます。」


 俺は軽く礼を言って席を立つ。

 少しの音でグライアが起きてしまい、「もう帰るの?」といった表情で俺を見る。


「グライアもまたな。ドリルボア美味しかったぞー。」


 そういってグライアの頭を撫でる。

 グライアは尻尾を振って嬉しそうだ。


「じゃあアイナさん。グランさん。ごちそうさまでした!」


 店の扉を開けて出ていくリナさんの後ろを俺もついていく。

 扉のところで軽く二人に会釈し、顔を上げるとグランさんは笑いながら腕を組み、アイナさんは手を振ってくれている。


 お腹も膨れたし、良い人を紹介してもらえた。

 次はどこへ連れて行ってもらえるのだろうか。


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