第12話 一押しのパン屋さん
第12話掲載させて頂きました。
当面の間、1日間隔の18時過ぎに掲載を予定しております。
土日はおやすみを頂こうかと思っております。
拙い文章かとは思いますが、よろしくお願いします。
ご指導、ご指摘など頂けるとありがたく思います。
ちょっと褒められるとやる気が爆発的に上がります笑
冒険者ギルドを出て、リナさんの後を追う。
「…アレイラっていつもああなの。いっつもからかわれててー…」
なるほど。いっつもアレイラさんにいじられてる訳か。
「でもやっぱりスライムの雄雌分かるのは凄いと思いますよ?見た目ではわかんないですもん。」
「えー?わかると思うわよ?メスはオスよりちょっと柔らかいのよ。オスがバルンッ!って感じだったらメスはプルンッ!って感じ!」
なるほど…全くわからん。これも経験の差…なのか?アレイラさんはリナさんくらいしか分からないって言ってたし。
「冒険者ギルドも行きましたし、次はどこに行くんですか?」
「そうねー。とりあえずお昼だし、ご飯にしようかな?翠斗くんパン屋さん気になってたし!」
…いや、あれは焼きたてのパンの香りに釣られてただけで…
でも凄くいい香りがしたのは確かだ。しかしリナさんはちょいちょい良く見ておられる…
「バレてましたか…すっごい良い香りだったんで…」
「パンの匂いは食欲がそそられるよねぇー。よし!今日のお昼はパンと…なにかお店にあったかな?」
なぜかリナさんは少し考えているが、パンを買って行くのは決定の様だ。
「じゃあパン屋さん行ったら一旦、あたしのお店でご飯にしましょう。ご飯食べながらどこに行くか決めよっか。」
ちょうどお昼時か。
確かに少々お腹は減ったな。こちらの主食はパンなのだろうか?
来た道を戻り噴水広場を抜け、西側の通りに出る。
お昼時だからだろうか、人の数も先ほどより多く感じる。
リナさんの後をついていくと先ほどのパン屋より前の路地を入っていく。
「実は路地に入ったところに美味しいパン屋さんがあるのよ。うちのお店もよく利用してくれててねー。なによりスイトくんの今後の為にもなるかもしれないわ!」
「俺の今後の為…ですか?」
「うん!着いてからのお楽しみ!」
俺の今後の為…か。なんだろうな。リナさんがニコニコしながら言うし、良い事なのは間違いないとは思うけど、気になるなぁ。
そして路地なのでさすがに大通りよりは人は少ない。
少し歩いていくと、リナさんは一軒のお店に入っていく。
看板には『パンの店 スライズ』と書かれている。
中に入るとふわっと美味しいパンの匂いが立ち込める。
「あらー。リナちゃん。いらっしゃいー。」
「アイナさんこんにちは!」
「あらあらー。今日はカッコいい男の子も一緒なんだねぇ。」
どこかふわふわした、優しい感じのお姉さん。アイナさんという方らしい。
しかし、どこに行ってもカッコいいって言われるなぁ。嬉しいけどなんかまだ慣れないや。
「初めまして。スイト・イーガマックって言います。」
「あらー!初めまして!私はアイナ・ブランドル。えーっと…リナちゃんの…」
「親戚よ!今冒険者ギルドに寄って登録をした帰りなの!」
リナさんがアイナさんの言葉を遮り、俺を簡単に紹介する。
よほど恋人と勘違いされるのが嫌なのか…それはそれで悲しい。
「なるほどねぇー。あ、グラン呼んでくるわね!」
アイナさんはお店の奥に入っていく。
「アイナさんも旦那さんのグランさんも元々は冒険者なの。何度か一緒にパーティを組んだこともあってね。気づいたら顔見知りになってたの。」
冒険者を引退し、今は夫婦で仲良くパン屋を営んでいるらしい。
お店は小さい佇まいだけど、色々なパンが綺麗に陳列されている。
2人が座れるくらいのカウンターと、1卓だけ丸テーブルが置かれており、そこで買ったパンを食べることもできるそう。
…カウンターを見ると1匹の黄色のスライムがプルプル揺れている。
そのスライムに気を取られていると、アイナさんが奥から旦那さんのグランさん…の腕を引っ張って出てきた。
グランさんは俺を見てなぜか驚いている。
「グラン!こちらリナちゃんの…えーっと…」
「親戚のスイトです!」
「お…おぉ。アイナがリナが男連れてきたって言うから急いで来てみたら…親戚の子かい!」
アイナさん…絶対確信犯でしょ。表情は相変わらずニコニコしている。
「俺は、アイナの夫のグランだ。よろしくな。スイト。リナにもやっと恋人が…と思ったんだがなぁ。」
とグランさんは言う。どことなく残念そうだ。
リナさんは「もー。アイナさん!」と、おちょくられて怒っている。
今日はリナさん良くいじられてるなぁ。
「ところで、この時間に来たってことは、昼飯まだだろう?」
「そうなの!で、スイトくんはこの街初めてだし、あたし一押しのパン屋さんに来たってわけ!」
「お。嬉しいねぇ。ちなみに今日は"ドリルボアと野菜のスープ"だが、食べてくか?」
「お店に持ち帰っていこうかと思ったけど…食べていこうかな!スイトくんもいい?」
俺は、大丈夫ですよ。と言い頷く。
ドリルボアのスープかぁ…ボアってことは猪みたいなものかな?
それよりか先ほどのスライムがまだカウンターでプルプルしている。
誰もなにも言わないってことはいつもの光景なのだろう。
「よし。セットにはドリンクも付くんだが、リナは紅茶で…スイトはどうする?」
「あ。じゃあ俺も紅茶でお願いします。」
「わかった。じゃあ2人はパンを選んで座っててくれ。アイナは紅茶とスープの配膳を頼む。」
そう言ってアイナさんとグランさんは奥に入っていく。
そして、俺とリナさんはパンを選ぶ。
スープも付くって言ってたし、2つくらいでいいかな。
リナさんはポンポンとパンをカゴに入れていく。
俺はリナさんが一番のお勧めだという香草入りのパンとスープに合うような真っ白なパン。
リナさんは結局6つほどパンを選んでいた。
「じゃあ、座って2人が戻ってくるのを待ちましょうか。」
俺とリナさんは丸いテーブルに座る。
少しすると先ほどのスライムがテーブルにぴょんっと上ってきた。




