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「こんにちは、ライスさん」
と、折角なのでいつもの感じで朗らかに返事をしたら、お手入れとかマメですね〜、な言葉を視線に乗せて言う。
「毎回世話になってるし、このくらいはな」
と言いながら。「それでも磨けば益々綺麗なんだ、シャラルルカ」と。まるでそう語っていそうな蕩けそうな視線でもって、布の上の偃月刀へと微笑を向ける。
何だか、濃いぃ人達が多いから、なんとなく忘れがちだが…。つい、一般的とか標準とか感じてしまうライスさんでも、こういう部分があるんだなぁ、と、私は僅かに目を見張る。上品で常識的で中年美形なライスさんだが、実はこの人も結構な得物スキーなんだな、と。
ぼんやりと思っていれば、そういえば、な前置きで彼のお人が腕を止め。
「ベルも花祭りに参加する?」
と、そんな話を振ってきた。
「あ、はいです。泊まった宿でチケットを頂いたので、参加してみようかな〜って思ってますが」
実はどういうお祭りなのか、よく分かってないんですよね。
そう話を続けたら。
彼は「そうなの?」と呟いて、「よければ少し、ここに座るか?」と、近くの場所を指差した。
屋台で買った食べ物をまだ手に持ったままだったので、食べてる間に説明するよ、な申し出はありがたく。お槍様に目礼すると、失礼します、と座り込む。
「村長さんの奥方に聞いた話によるとだな…」
花祭り、はこの村で行われるのはもちろんなのだが、もう一つ重要な場所として、近くの丘を使用する。クラーウァの丘と呼ばれるフィールドに咲く色とりどりの花を摘み、祭りの日は女性から男性へプレゼントする習わしだとか。
まぁ、要するに、前の世界のバレンタインな雰囲気かしら?と思いながら話を聞けば、流石はファンタジーな世界産。その日摘まれた丘の花には、不思議な効果が付くという。
旅の無事を願って渡されたなら、無事に帰ってこれる、とか。早く熱が下がりますように、なら、次の日には治っていたり。私とお付き合いして下さい、も、実現した事があり…いつしか丘の花々は女性から男性への無言の告白材として使われるようになったのだ。
「だから、ベルにはぴったりのお祭りだと思ったんだよ」
そう“しれっ”と締めくくられると、ちょっと恥ずかしい気もするが。
異世界版バレンタイン…しかも、公式参加なら……。
私だって一本くらい、花をプレゼントとかしても…まぁ、許される…かもしれない?
と。
「朝日が昇って、花が色付いたなら、お祭りの開始らしいから」
気軽に参加しておいで、と優しい笑みを向けられて。
ですね!私、やってみますよ!と、心意気が上がらなければ、なんだか悪い気もしてしまい。
「情報をありがとうございます!そしたら私、ちょっと下見に行って来ようと思います!」
と。もしゃもしゃ食べてた麺を搔き込み、そそくさと木陰の中を後にしたのだ。




