第92話 兄弟の再会③
「私も好きだ。でも、私の好きはシャインの……香ちゃんの好きとはやっぱり違う」
時雨は香の両肩に手を添えると、首を振ってみせる。
幼馴染であり、弟でもある複雑な想いはあるけれど、それ以上の関係に一歩踏み出すことはできない。
「……うん、困らせるような事を言ってごめんね」
「苦しい人生を背負わせて謝るのは私の方だ。シャインは……笹山香としてこれからの人生を幸せに過ごしてくれ。私にできる事はお兄ちゃんが協力するし、お兄ちゃんはシャインを愛してるよ」
時雨は顔を近付けて香の額に頭を寄せると、弟の幸せを心の底から願いながら語りかける。
「お兄ちゃんの温かい気持ちが伝わって来るよ。僕、頑張って幸せになるからね」
香も時雨の不器用な気持ちに応えると、涙を浮かべて抱き締めた。
観覧車は頂上まで差し掛かると、二人は肩を寄せ合って外の景色を眺める。
「今日はシェラート姫様と遊びに来てたんだよね? 二人で楽しくしているところを邪魔してごめんなさい」
「そのおかげで、二人の正体が分かったんだからいいよ。変装までして隠れてないで、普通に出てくればよかったのに」
「加奈が提案したんだ。あっ、私達の事を加奈に知られちゃったけど、口封じしないと……」
「加奈は私達の事を理解しているし、誰にも喋らないから大丈夫だよ」
口封じとは穏やかな単語じゃないなと思いながらも、加奈の正体は伏せて説得した。
「うん、分かったよ。学校では普段通りに幼馴染の時雨ちゃんで通すよ。二人っきりの時はお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「ああ、いいよ。私も学校では香ちゃんで通すけど、前世について他の女生徒達に勘付かれないように注意しないと色々面倒だからね」
さすがに学校内でお兄ちゃんやらのやり取りをされたら、時雨の趣味で言わせているのではないかと誤解されかねない。
三股と言う不名誉な称号もあるので、これ以上面倒な勘違いをされては学校の先生にまで噂が耳に入って注意されそうな勢いだ。
「そろそろ観覧車を降りる時間だね。さあ、加奈とお姫様と合流しよう」
香が時雨の手を握ると、観覧車は地上に戻って二人は歩き出した。




