表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/456

第64話 究極の二択

 香がハンカチを取り出すと、時雨の涙を拭ってくれた。


「さあ、元気を出して!?」


 香から励ましの言葉をもらうと、コンビニ袋を手に取って二人は並んで歩き出した。

 時雨も一旦、自宅に戻って寝巻を用意する。

 幸いにも、今日は大学が休講のようでジャージ姿で家の中をゴロゴロしていた柚子がいた。

 時雨は支度を整えて香の家に泊まる事を柚子に告げると、意味深ににやけて了承する。


「お母さんには伝えておくから、今晩は香ちゃんとごゆっくり」

「もう、只のお泊りだよ」


 柚子は玄関先で時雨を見送ると、付き合いきれないとばかりにさっさと家を出る。

 足早に香の家までやって来ると、香と隣に見覚えのある人物が立っていた。


「あら、時雨ちゃんじゃない。しばらく見ない間に大きくなって……」

「こんにちは。おばさん、どうもお久しぶりです」


 柔和な顔で女性は久々に会った時雨を嘗め回すように見つめる。

 この人は香の母親で、年齢は三十後半なのだが、童顔で実年齢よりも一回り以上若く見える。

 初見なら、香の姉と言われても疑わずに信じてしまうだろう。

 時雨は挨拶もそこそこ交わすと、香の母親は時雨の頭を軽く撫でて、おっとりした声で感心する。


「時雨ちゃんは相変わらず礼儀正しくて良い子ねぇ。不束な娘ですが、宜しくお願いします」

「えっ……」


 まるで自分の娘を突然嫁に出すかのように、時雨は言葉を詰まらせてしまった。


(この人は相変わらずだなぁ)


 以前に会った時は「末永く娘と仲良くしてね」と勘違いされるような言い回しに度肝を抜かれた。

 悪い人ではないのだが、調子を合わせるのが苦手な人だと時雨は思う。

 間に香が入って翻訳すると、娘から上の単語は無視していいよと助言してくれた。


「家の前で立ち話もあれだから、中でお茶を用意するわね」

「お邪魔します」


 香の母親が時雨を家に招き入れると、香の自室で一息入れる。

 時雨はコンビニ袋から購入したお菓子を摘みながら話す。


「香のお母さんは仕事で忙しい人だけど、元気そうで何よりだよ」

「うん、しばらくは仕事も一段落ついて家にいるみたいだからね」


 香の両親は仕事の都合で家を留守に機会が多かったので、世話好きの時雨は香を小さい頃から面倒を見ていた。

 時雨ちゃんと懐いてくれて、まるで本当の妹ができたような嬉しい気持ちだった。

 香の事だから、昨日は親子水入らずで存分に甘えたのが目に浮かぶ。

 香が時雨の傍に寄ると、嫉妬の眼差しでこちらの様子を窺う。


「私は時雨ちゃんが好きだけど、時雨ちゃんの好きな人は凛先輩? それとも紅葉先輩かな?」


 究極の二択を迫られると、時雨はたじろいでしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ