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第26話 ペットホテル

 凛は段ボールを大事そうに持ち上げると、空き地を離れて歩道を歩き出した。


「この近くに最近できたペットホテルの施設があるの。獣医も常駐しているらしいから、そこでこの子達を一晩預けるわ」


 今日は夜遅くから雨になると天気予報にもあったので、ペットホテルにマルとチビを預けるのは賛成だ。

 心なしか、段ボールの中にいる二匹の鳴き声に元気がないように思えた。


「お腹を空かせて元気がないのならいいですけど、何か病気を抱えていたら厄介ですね」


 時雨は段ボールの中にいる二匹を心配そうにする。

 野良猫なので予防接種を受けている筈もなく、獣医に一度診てもらった方がいいかもしれない。

 来た道を戻って、駅前のビルの一画に真新しい建物とペットホテルの看板があった。

 一見すると、おしゃれなカフェみたいな外観である。

 相変わらず、駅周辺は人混みに溢れて電車の運行は目途が立っていない様子だ。

 時雨は道を切り開いて先導して、凛は段ボールを庇って人混みの中を進んでいくと、やっとの思いでペットホテルの建物に入る事ができた。

 内装のデザインも明るい装飾が施されて、受付の待合室には数名の客がソファーに腰掛けていた。


「受付を済ませてくるわ。この子達を見てもらっていいかしら?」

「分かりました。お願いします」


 凛は受付で手続きに向かうと、時雨は段ボールを抱えて待合室のソファーに腰を下ろした。

 段ボールの中から、爪で引っかくような音がすると、つぶらな瞳でマルが顔を覗かせて時雨に何か訴えかけている。


「どうしたの? お腹でも空いたのかな」


 時雨はマルの頭を撫でると、チビが弱々しくぐったりしている。


「チビ! しっかりして」


 親猫のマルは時雨に助けを求めようと鳴き声を上げると、時雨の声が待合室に響き渡った。

 その様子に、通りかかった白衣を着た獣医の先生が待合室の時雨に駆け付ける。


「これは……二匹共、体力が弱っているな。診察室に連れて行くから、飼い主の君も同行してくれ」


 獣医の先生に従うと、受付で凛と合流して簡潔に状況を説明する。

 二人は診察室がある扉を抜けていくと、獣医の先生は診察台に二匹を乗せて適切な処置を始める。


(どうか無事でありますように!)


 時雨は心の中で必死に無事を祈ると、その隣で凛も天を仰いで泣きそうな顔になっている。

 注射を一本ずつ打っていくと、しばらくして二匹は元気な鳴き声を上げた。

 原因は栄養失調によるもので、病気の心配はないそうだ。

 時雨と凛は二匹の無事が確認できると、緊張の糸が切れて肩の力が抜けてしまった。

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