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第70話 クリスマス2 1(1)

 いよいよ今年も残すところ後ひと月。12月と言えばクリスマスだが、その前に期末試験がある。中間試験で一気に成績を伸ばした涼夏が、期末試験も頑張ると宣言した。

「中間より教科が増えるから、全体の成績としては下がるかなって思ったけど、どっちかと言うと得意な教科が増えるから、前回の成績を維持したい」

 受験に関係ない教科はあまりやる気がないと言っていたが、内申で推薦を取る方向で調整している。詳しくは聞いていないが、一応家族会議の結果、家政系の大学を目指すことになったそうだ。

 中間で涼夏が好成績を収めたことで、ずっと低い位置で競い合っていた奈都も危機感を覚えたらしく、今回はちゃんと勉強すると言っていた。切磋琢磨というか相乗効果というか、そうして全体として高め合うのはいいことだ。

 中間では絢音が「テスト問題を作る遊び」を考案して3人で取り組んだが、あれはなかなか効果があった。ただ、時間もかかるし、自分で問題にした部分は脳裏に焼き付くが、それ以外のところが疎かになるデメリットもある。教科も増えるし、今回はどうするか帰宅部会議で議題に上げると、涼夏がやればいいのではないかと言った。

「何か他の勉強方法が提示されたら天秤にかけよう」

 二人で絢音を見ると、前回学年3位の秀才ははにかみながら肩をすくめた。

「あれだけ勉強したら、他の方法でも成績は上がると思うよ?」

 実際、テストを作るために勉強して、さらに他の二人が作ったテストも解いて、かなりの勉強時間だった。

 もっとも、それなりに勉強したという奈都は成績が変わらなかったので、やはり勉強方法は大事だろう。教科が多いので大変だが、少し作る問題数を減らして対応しよう。

 奈都にも声をかけると、さすがに今回はやると答えた。これで乗ってこなかったら友達をやめようと思っていたと伝えると、奈都が悲鳴を上げた。

「試すのやめて!」

「私は常に奈都を見限るチャンスを窺ってる」

「そういう意味のないことしないで」

 この会話をしたのは11月の終わり頃で、テスト前は4人でみっちり勉強し、土日も学校に行って図書室でそれぞれの作った問題を解いた。

「確かにこれ、純粋に勉強時間が多い」

 奈都が絢音の問題を前に頭を抱えると、涼夏も疲れたように息を吐いた。

「こんなに勉強したの、受験以来だ。でも、仲間がいるから頑張れる」

「相互監視社会だね」

 絢音がにこにこしながらそう言った。全然違うと思うが、突っ込む気力もない。

「アヤっていつも生き生きしてるよね。生気が漲ってる」

 奈都が感心するようにそう言うと、絢音が柔らかく微笑んだ。

「家だと死んでる。帰宅部はオアシス」

「いくらオアシスでも、勉強はしんどい。1問解くごとに千紗都にチューしてほしい」

 涼夏が尖らせた唇を私に向ける。別にキスくらいいくらでもするが、図書室ですることではない。ふいっとそっぽを向くと、涼夏ががっかりしたようにため息をついた。

「オアシスは涸れた」

「パワーワードだね」

「クリスマスは、千紗都といっぱいチューするゲームでもするか」

 涼夏が名案だと手を打つと、隣で絢音が大きく頷いた。

「いい響きだね。ダブルスコアで勝つよ」

「私はこのゲームで、10連勝の記録を樹立したことがある」

「私はスコアランキングに名前が載ったよ」

 涼夏と絢音が謎に張り合いながら不敵な笑みを浮かべた。とてもたった今生み出されたばかりのゲームの話とは思えない。

 呆れながら奈都を見ると、奈都はうっとりと目を細めた。

「楽しそうなゲームだね」

「ああそう?」

 微妙に疲れそうなゲームだが、どのように対戦するのだろう。ルールを聞くと、涼夏はまだ何も考えていないと身も蓋もないことを言った。この人は一体何で10連勝したのか。

「コンセプトは大事だね」

 絢音がわかり手の頷きを見せる。

 まったくゲーム性が想像できないが、クリスマスの思い出として黒歴史にならないようなものであることを望みたい。

 何にしろ、まずは期末試験だ。何やら張り合い続けている二人を放置して、再び絢音の問題に取りかかることにした。


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