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第69話 寒い(4)

※(3)からそのまま繋がっています。

 いつものように軽くハグしてから涼夏と別れ、中央駅の手前でスマホを見ると、奈都から返事が来ていた。既読スルーではなかったが、「結婚式には呼んでね」という微妙なメッセージだった。

 それには答えずに、もう部活は終わったのかとメッセージを送ると、「はい、そうです」とすぐに返ってきた。部活の後はいつも部員たちと帰るから、あまりスマホは見ていないが、今日はたまたまか、あるいは一人でいるのか。

『イルミネーション良かったよ。奈都が来れるなら待つけど』

 そう書いて送った時にはすでに中央駅を過ぎており、奈都から「行く」と返事があった時にはもう、最寄り駅まで来ていたが、帰ったところで退屈するだけなので、中央駅まで引き返した。

 奈都から、「中央駅? 涼夏は?」と返事が来たので、「破局した」と短く返した。いつも涼夏と恵坂で遊んでいるのは、恵坂が一番の繁華街というのもあるが、中央駅は涼夏の定期券の範囲外というのもある。

 恵坂まで戻っても良かったが、外は寒いので駅で楽しもう。改札を出てスマホをいじりながら人でごった返す地下街を眺めていると、やがて奈都がやって来た。先に一人だったのか聞くと、普通にみんなでいたと答えた。

「その割に返事が早かったね」

「チサだからね。部活のメンバーといる時は、普通にスマホ見たりもしてるよ」

「私だと何? 私なんて、奈都の100人いる友達の中で、半分くらいの存在でしょ? 野阪だし」

「友達をあいうえお順に並べたことはないね」

 奈都が苦笑しながら私の手を取った。体温高め女子なのか、少し熱い。

 デパートの1階に飾られているツリーとクリスマスの装飾がなかなか見事だったので、とりあえず1枚撮ろうとすると、奈都が恥ずかしそうに顔を覆った。

「メイクしてるチサと部活帰りの私なんて、完全に公開処刑だ」

「じゃあ、奈都だけ撮るね」

「いや、一緒に撮るから」

 当然だと言わんばかりに腕を引かれた。意味がわからない。

「奈都、面倒くさい女だってよく言われるでしょ」

 写真を撮ってからそう突っ込むと、奈都が冷静に首を振った。

「チサにしか言われないね」

「なんか、ずっと前にも同じやり取りをした気がする」

「今朝だね。っていうか、頻繁にしてる」

 駅はどこもかしこもクリスマスムードだ。各デパートのクリスマスツリー巡りをしてから、一応外のイルミネーションでも撮影すると、カメラロールに涼夏の写真と奈都の写真が並んだ。

「こうなると絢音とも来なきゃだな。古沼にも多少何かあるかなぁ」

 絢音とは定期券が同じ範囲が、学校の最寄り駅の上ノ水と、その次の古沼の2駅しかない。古沼は多少栄えているが、デパートがあるわけでもないし、若者が集まる街ではない。

「チサは平等だね」

「オシドリだから、次々と相手を変える」

「いつからオシドリになったの?」

 呆れたように奈都が言った。まったくだ。

 お互い夕ご飯は家にあるし、あまり遅くなるといけないので、適当に切り上げて電車に戻った。週に5日、月に何日もある帰宅部のたったの一日だが、今日も特別な日になった。

「次の休みは、みんなでオシドリを探しに行こうか」

 私が声を弾ませると、奈都は実に微妙な顔で「そうだね」と言った。ノリの悪い女だ。

 実際に行くかどうかは、言い出しっぺの熱意次第だろう。涼夏も結構思い付きで喋っているので、そもそも本当にオシドリが見たいのかすら疑わしい。

 最寄り駅で降りると、奈都ともハグしておいた。服が厚いので全然奈都感はなかったが、奈都の方は満足したようにうっとりと微笑んでいた。安い女だ。

 突発的な企画だったが、イルミネーションは実に良かった。欲を言えばもう少しあったかい方が良かったが、夏に見たいとはあまり思わない。

 これからも、貴重な冬限定のイベントとして輝き続けて欲しい。


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