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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻1月25日発売・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
2章

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5.動き出す者




 姿絵と情報を見ながら、少女は恍惚としていた。

 神が作ったとしか思えない美しい顔立ちに、成績を見るにそこそこに賢い。穏やかで儚げなイメージを与えるが、その実、魔法の腕がすこぶる良くそれなりに強い。

 そんな少年が()()()()()となるなんて、なんと幸福だろうと思いを馳せる。


 少女は信心深く、それなりに整った見目をしていた。美しい白銀の髪に、神秘的な紫水の瞳。彼女自身もどこか儚げで庇護欲を唆る雰囲気を出していた。

 フォルツァートを熱心に信仰するのは両親と一緒で、()の神のためであればと多くの金銭を奉納し、己すらも差し出した。


 敬虔な神の信徒である彼女は、教会から信じる神の()()()()女神の加護を受ける少年を勧誘し、夫とするように命じられた。

 ただ命じられたままに、流されるままに生きるのが彼女の生き方だった。

 そして、それは彼女が接触しようとしている少年が最も苦手とするものの一つであることには気が付かなかった。




 教会がハロルドの“好きそうな女”を見繕っている中、ハロルド自身は元気に採集と狩りに勤しんでいた。



「木の魔物ってよく燃えるね!」


「さてはヤケクソだな、ハル!?」



 驚いてうっかり迎撃したら轟々と燃え盛っている。火が弱点であるのか、暴れ回ろうとしたのでその周囲を土壁で囲っている。

 顔だけで舐められるハロルドではあるが、(女神&妖精の)加護パワーと本人の努力のおかげでそこそこ強い。弓の腕やら狩り方面の才能はアーロンが秀でているかもしれない。腕っぷしならブライトがダントツだ。



「討伐部位はどこだった?」


「知らねぇ。つーか、これ倒したところで普通の木と差別化できるのか?」


「どこでもいいから持っていったら残存魔力を測定してくれるよ。できれば根っこの方が魔力が残りやすいって聞くけどね」



 魔物とはいえ、木なので栄養を吸い上げる根は魔力が残りやすいらしい。

 早く火を消してしまいたいハロルドではあったけれど、まだ断末魔の悲鳴のような声が聞こえているので水をかけられない。


 数十分待ってようやく静かになったため、土壁を崩す。中からはぷすぷすと音を立てている魔物だった(モノ)だ。

 木の皮が崩れ落ちる。その中から木の実や魔石がボロボロと出てくる。



「溜め込んでたのか?」


「魔物がたまーに落とすドロップアイテムなんじゃないかな。いるでしょ、謎に鎌とか持ってる顔だけ可愛いでっかいリス」


「王都で初めて見た時殺されかけたやつだ」



 角を持つ兎やら、魔法を使ってくる鹿シリーズ、見るからに凶暴そうな熊。異世界の魔物はそれなりにヤバい生き物が多いけれど、ハロルドとアーロンが王都に出てきて一番「ヤバい!!」と思った生き物がそれである。しかもその亜種でモモンガ型もたまにいる。顔だけは小動物だけれど、普通に元の動物よりもだいぶ大きい上に「命寄越さんかい!!」とばかりに大鎌を振り回してくる全く可愛くない生き物である。しかもそれなりに生息している。



「マジで顔だけは可愛いけど、こっちの矢を鎌でぶった斬りながら迫ってくるヤベェ生き物なんだよな」



 なお、討伐推奨ランクはD以上なので、それなりに冒険と討伐に慣れていないと本気で危ない。

 顔だけ可愛いバーサーカーリスことリッパースクワロルが落とす鎌だってそれなりの値段になる。恐ろしいことに、リッパースクワロルには愛好家がいるのだ。年に数度は「殺さないで!」というデモが起こる。生息地に入らなければ被害はないだの、人間が自然を切り開いたからだのと彼らはいうが、リッパースクワロルは非常に好戦的な種族で、静かに暮らしていた人間の村に攻め入ったことだってある。元の世界の熊よりもタチが悪いかもしれない。


 三人はそんなことを言いながら、束の間の平穏を味わっていた。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!

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