9.順調な旅路
砂漠を通るのには、かなり苦労するだろう。
アンリたちはそう考えていたが、杞憂に終わった。
なぜならば。
「……むしろ、守られているように感じるほど、平穏に進むな」
アンリの言葉を受けたハロルドは誤魔化すように、いつも以上に綺麗に笑顔を作った。
自分のジョブスキルのせいだろうと察していた。
『砂の支配者』
文字通り、砂を思うままに操ることのできる能力を得るものである。
それと同時に、砂の妖精たちや周囲の魔力がジョブスキル所持者を守り、導いてくれる効果もあるようだ。オアシスの位置なども把握できる。
(これ、ラムル王国の国民だったらかなり役に立っただろうな……)
役に立つどころではない。
王族に召し抱えられてもおかしくない能力だ。もしかしたら、ハロルドこそが王であると担ぎ上げる存在も現れたかもしれない。
しかし、ハロルドはエーデルシュタイン王国の国民であり、特に国を出るつもりはないので『かなり便利』くらいのものになっている。
「つまらねぇの。砂漠での冒険、楽しみにしてたのによ」
ロナルドはそうボヤくが、彼以外はほっとしている。
ハロルドはあくまで『神の意志による遠征』だ。その神が目的を果たせなければ何をするかわからないし、ハロルドをずっと守っているフォルテは彼が酷い目に遭うと怒るだろう。砂漠での人攫いや盗賊、魔物との遭遇などないに越したことはない。
「平穏が一番だと思うけど」
「おまえ、まだそんなこと言ってんのかよ?そんなだから舐められるんだ。神から力もらってんだから、恐れられるくらいでちょうどいいだろうが。利用されるのではなく、してやる。それくらいの気持ちでいろよ」
ロナルドの言葉に少しばかり眉を顰める。
おそらく、彼にもそう思うようになるきっかけがあったのだろう。
そうは思うものの、ハロルドとロナルドではかなり性格が違うし、能力も違う。だから、そうはできないし、したくもない。
「実際、俺にはない問題が、おまえの方には頻発してやがる。これは単なる偶然じゃねぇだろ。覚悟が足りてないんだよ」
「それに関しては、耳が痛い」
基本的に、ロナルドの言うことなんて受け流していいと考えているハロルドだったが、これに関しては本当にやりきれない感覚がある。
エリザベータや友人たちはこのままでいいと言ってくれることもあるが、ハロルド自身は自分で責任を持って対処できるようにならなければと考えている。
(けど、正直なところ、限定的とはいえ、国を滅ぼす力があるということは示した。それでも喧嘩を売られるなんて思っていなかったんだ)
実際、ラムル王国とフィアンマ帝国はすんなりと諦めた。それが普通の感覚だ。
しかし、追い詰められているという花香はそれでも手を伸ばした。
妖精や精霊、神獣を燃料にすることは、神をより怒らせる原因にしかならない。
素直に詫びていれば、やり直しの機会を願っていれば、違ったのかもしれない。しかし、そうはならなかった。
結果、こうやって巻き込まれる羽目になってしまった。
やられて、すぐにやり返してはいるのだ。手を出してきた相手は揃って騎士たちに突き出している。場合によっては死んでもいるだろう。ハロルドとしては、そんなことになっているのに、喧嘩を売ってくる相手の方が理解し難い。
「異常者の心理なんてわからないんだ。ハルの場合は仕方ねぇだろ……」
「そうか?犯人を騎士に突き出さずに首だけ王族の寝室に投げ込むとか色々できただろ」
「蛮族かよ」
「あ?」
「そうだろ」
ハロルドは睨み合う友人と幼馴染の間に入り、喧嘩を止める。
価値観の違いやロナルドのやらかしてきた出来事の影響もあるだろう。
この二人は、ともかく相性が悪かった。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
あけましておめでとうございます。
本年も頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
【お知らせ】
続刊&コミカライズが決まりました!!
最新4巻は1月25日発売予定となります。
コミカライズに関しましては、情報解禁許可が出次第、またお知らせさせてください。
これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
『巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない 3』2025年7月25日に発売いたしました。
今回もRuki先生にハロルドたちを魅力的に描いていただいております。
書き下ろしもしておりますので、ぜひお楽しみいただけますと幸いです。
現在、1巻・2巻も好評発売中です。こちらもよろしくお願いいたします。
3巻店舗特典はこちら↓
OVERLAP STORE様
書き下ろしSSペーパー『太陽の恵み!』&イラストカード
全国の特約店様
書き下ろしSSペーパー『砂の妖精たちの贈り物』




