7.意外な人から聞く名前
「厳重注意を受けてしまった……」
少年が頭を抱えているが、見張からすると「そりゃそうだろ」としか言いようがないことである。
少年は花香の名家、黄家の末っ子である。
正妻の子でありながら、純粋な花香人ではないため血統至上主義の家の中ではかなりヒエラルキーは下だ。年齢の近さから東宮に取り立ててもらっているが、そうでなければいつまでも母マナと同じ地下牢から出してもらえなかっただろう。
「神子は妖精を母さんと同じように大切に思っていると聞いたが……近い存在だけか?いや、ジニアのためにも諦めるわけにはいかない」
少年の言葉を聞いている男はその言葉に眉を顰める。
(神子様に、ジニアという名の妖精に対する心当たりなどを尋ねてみるか)
幸いにして、ハロルドは特に気難しいわけではないので尋ねれば答えてくれることを彼は知っていた。
誰を向かわせるべきか、と少し考えてから「ノアに行かせればいいな」と判断する。ノアが知れば「俺も暇なわけじゃないけど!?」と言ったかもしれない。
数名の仲間に合図をしてから、男は報告のためにその場を離れて、その後、弟であるノアに確認作業を投げた。
そして、ハロルドたちは帰宅後にノア・ダンビュライトの訪問を受けることとなる。
「……いきなりごめんね。ちょっと質問があって来たんだけど」
「その前に、どうしたんですか。顔が腫れてますけど」
「ちょっとナン……女の子と話しているところを兄貴に見つかった時に色々あって……」
虚ろな目をしているノアを見ながらハロルドとアーロンは「ナンパかぁ」とちょっと困った顔をしていた。ノアは独身であり、婚約者もいない。後継ではなく、継ぐべき爵位もない。なのでちょっと可愛い女の子と付き合いたいと思って声をかけたとしても特に……という感じではある。
「無理強いでもしたんですか?」
「さいてー」
「女の子の敵」
ミハイルの素直な疑問に現実味を感じた妖精女子組の言葉に「そんなことしないよ!」とノアが言う。
「俺のことなんだと思ってるの!?」
「いえ、仕事のためとかで女性を誑かしたりしてそうだなぁ、と……」
「仕事だったらするけど。仕事だし……」
どう返せばいいかわからない答えである。とはいえ、必要であればやらざるを得ない。特に容姿が良い彼はその手の情報収集に長けてもいた。
ただ、今回に関しては分家の可愛い女の子に声をかけていたら、兄に声をかけられたので「仕事?俺久しぶりの1日休みなんだけど」と口にしたら、ちょっと。
女の子の方に、グーパンされたのである。
「次期様に逆らうのですか?」
そう言った彼女の目は怖かった。
声をかけていた時の様子とはガラリと雰囲気が変わって、ノアは普通に泣きたくなった。別に逆らうとかはなく、兄弟らしい軽口だったのに。
「ま、俺の事情はともかくとして、ジニアっていう名前に心当たりはないかな?」
まさかの人物から出て来た名前にハロルドたちは揃って目を点にする。
「どこからその名前を?」
「君にお手紙をよこした坊ちゃんだよ」
肩を竦めてそう言うノアに、初めから密偵がついていた可能性を悟る。
ハロルドはローズたちと視線を交わし。頷いた。
「実は……」
ハロルドはローズたちに聞いた内容をノアに話す。話を聞いたノアは頭が痛いとでもいう顔をしつつ、「わかったよ」と呟いた。
「こちらの見解としては、あの坊ちゃんは花香とは関係なくこの国に残っているみたいだ。で、彼を見張るように数名の男たちが滞在している。まぁ……エサ、なんだろうねぇ」
何に対しての「エサ」なのかはすぐにわかる。
そう、彼らは初めから、ハロルドと一緒にいる妖精や精霊を手に入れたくてうずうずしていたのだから。
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これも応援していただきました皆様のおかげです。引き続き、本作をよろしくお願いいたします。
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