33.東宮と少年
花香の東宮である少年、紫俊熙は頭を抱えていた。
国民のために支援をこぎ着けたいと思っていた彼を嘲笑うかのように、周囲にいた高官たちはやらかしまくり、結果「さっさと帰れ」と言われてしまっている。
彼らが戦闘民族、蛮族だなんて罵っていたフィアンマ帝国の者たちの方がよほど賢く立ち回っている。
「ただでさえ、今はどれだけの犠牲を払っても作物が枯れ、魔道具も徐々に使えなくなっている……。年々魔力を持った子どもは生まれなくなり、動物すら我が国を避けるように分布している。もう他国から奪い取ってどうにかなる問題ではないと、なぜわからない……!」
「それでどうにかなってきたお偉さんしかいないからでしょーね」
彼と同じくらいの年齢の少年はそう言うと、深々と溜息を吐いた。
(母さんも、ずっとここにいりゃあ幽閉なんかされずにすんだろうに)
少年は黄色い目を細めて、花香で座敷牢に囚われていた母を思い出す。
緑色の妖精を差し出せと強要されて、それでも『友達をあんな目には合わせられない』と抱きしめていた。引き渡しさえすれば、もっとよい暮らしができただろうに、それをせず。
今の国にある魔道具を拒絶し、そしてその、燃料とされている存在を友と呼ぶ彼女を父親や異母兄弟は嘲笑ったけれど、少年はそんな母の方が真っ当な人であると思う。
「そういえば……マナ殿はこの国の出身だったか」
「ええ。父に引っ掛からなければ、今もこの国で、不自由なく暮らせたでしょうね」
仲が良かったという、妖精たちと共に。
しかし、それが叶うことはもうないということも知っていた。
母は死に、共にいた妖精も日々力を失って、今は起きている時間も少ない。
「……責任を、取らぬわけにもいかぬだろうな」
「そーですね」
そう言いながら、少年は胸についた花飾りを撫でる。
(そう。アンタはさっさと帰ればいい)
東宮という立場であっても、長年、傀儡でしかなかった皇室に力はないだろう。国を変えようとしている俊熙は現在の権力者にとっては邪魔でしかない。
それでも責任を取らされるのが彼になるのは、立場上仕方のないことではあるが同情はする。
ただ、そういった立場でない自分はこの国に潜伏してもまだなんとかなるだろう。国の血縁者が罰せられようが、帰らなければ関係のない話だ。
(必ず、あの神子に接触する。……待っていろ、ジニア)
彼の家族は、母マナと彼女の友人である緑色の妖精だけなのだから。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
これでこの章一応終わりです。
いつもやってたやつは今回ガチで時間なくてなしです。
『帰れ』どころか多分「もう来るんじゃねぇぞ」って思われてることは胸に秘めてあげる少年くんだった。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
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