26.どっちもどっち
目が覚めたハロルドは疲れが増していた。身体は寝ていても精神的に色々きている。
まず、冥神セルピナの要求にすでに頭痛がする。誰が好き好んで一国を滅ぼすために神の降臨をしたいと思うのか。
(誰もやりたくないだろ……)
ハロルドはそんなことを考えているが、世の中には手段があればやりたいと考える人間もいるものだ。強大な力を与えられながら、それを安易に行使しないという神からのある種の信頼が依頼に繋がっているのだが、ハロルド自身は「そういうの本当に困ってしまいます」という心境だった。彼はやっぱり割と小心者だった。
「おはよ……ハロルドなんでそんなに疲れてるの?襲撃でもあった?犯人殺っとく?」
「おはよう、ペーター。襲撃はなかったし、殺意を露わにしないで」
部屋を出れば、ペーターと遭遇したがその発言があまりにも怖かったのできっちり止めておく。ハロルドは彼に、健やかに真っ当に育って欲しいだけなのになぜかペーターは斜め上に走っていく。心配してくれていること自体はありがたいものの、あまりにも安易に思考がデストロイに突っ走るのが怖い。
「最近物騒だからね。やられる前にぶっとばさないと……」
「物騒なのはアンタよ」
ローズのツッコミに「解せぬ」とでも言いたげな顔をしたペーター。こればかりはローズの主張は間違っていない。そもそも暗殺者なんていう物騒ジョブスキル持ちなのとやりに行きかねない危うさがあるため不安感がすごい。
疲れているのは神様案件だからだが、彼にそれを言えばセルピナの神殿まで文句を言いに行きそうだし、セルピナがそれでどう出るかわからないのがなおのこと怖い。
「ペーター過激」
「もうちょっと落ち着いた方がいいんじゃなぁい?」
「俺、君たちに言われるのだけは納得がいかない」
「ちょっとそれどぉいう意味ぃ!?」
諭すような妖精たちに、ペーターは素直な感想を口にすると、彼女たちはペーターをぶん殴りに行こうとしていた。血の気が多い。
「ハル、捕まえられてたら叩けないじゃないのぉ!」
「ほら、ハロルドもそういうとこだよって思ってるよ」
「ハル?」
妖精たちがハロルドに注目するが、彼は微笑みを浮かべるだけだった。内心、どっちもどっちだと思っている。
「それより、やることやって早くご飯食べちゃわないと。俺が疲れてても学園は休みにならないよ」
朝はただでさえバタバタするものだ。畑も見たいし、温室の世話もある。できればラムル固有の薬草を育てているジャンナガーデンも覗きたかった。ハロルドの朝は主に植物の世話で構築されている。
「……ハロルド、働きすぎじゃない?」
「いや、特に働いていないけど」
ペーターからすれば、畑の世話なんて『仕事』以外の何物でもない。しかし、ハロルドにとってそれはただの趣味であり、数少ない憩いの瞬間だった。
「温室で育ててる果物がいくつか育ってきてるんだよね」
「食べれる!?」
「それはもう少し先かな」
妖精たちの目つきがギラっとする。
ハロルドが丹精込めて育てたものは大抵、他で手に入らないレベルで美味だ。
「そういや、珠さんからもらった梅が実をつけてたな……」
のんびりと「梅干しでもつけてみるか、ジュースを作るか……」なんて現実逃避を始めるハロルドだった。
これから王に再度連絡を入れないといけないことは理解しているが、好きなこと以外何も考えたくないという瞬間は彼にもあるのである。
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