21.知らぬ笑い声
書籍3巻発売まであと3日!
ハロルドは結界を壊したという魔道具を見せてもらいながら「銃ってこの世界にあるんだな」なんて考えていた。構造などにあまり詳しくないため、鑑定眼を発動させながら危なくないように確認する。王城で確認をさせてもらったそれは、妙に心をざわつかせた。
「ハル、それ、ヤ」
「ゾワッとするぅ」
ネモフィラとリリィが魔道具を見ながら心底嫌そうな顔をしている。それもそうだろう、とハロルドは魔道具を置いて、取り付けてある青い球体を取り外した。途端に割れて、青い花のような魔力が散った。
「ちょっと、これ!」
「妖精を文字通りエネルギー源にしているみたいだね。この球体に妖精や精霊を取り込む術式が刻まれているのか……」
神獣を取り込もうとしたのも、あるいは実験だったのだろうか。主なく、弱った神獣であれば取り込める可能性があると考えたのかもしれない。
(なんにせよ、胸糞悪い)
これほどの技術があるならばもっといいことに使えただろうに、これを作った人間は他の存在から力を無理やり奪い取り、兵器として利用することを望んだのだ。
ハロルドの作った自白剤を使ったようだが、詳しい企みは出てこなかったという。であれば、ハロルドの家に入り込もうとした賊は本当にただの切り捨てやすい末端の人間だったのだろう。
ハロルドの家にはもう保護を必要とするほど弱った妖精や精霊はいない。だが、利用される可能性がある以上、対策自体は今後も取る必要がある。
「俺の居住区に二度も手を出したってことは事態が悪化する可能性はわかってると思うんだけど……」
「えー?殺す?やっちゃう?」
ウキウキと嬉しそうなローズにハロルドは静かに首を振った。
別にハロルド自身は動かなくてもいいのだ。というよりも、神の視線が彼らを捉えてしまった以上、何かしようものなら巻き込まれかねない。
(俺の周囲は巻き込まないようにちゃんとお祈りしておくか)
そんなことを考えていると、耳元でクスクスと笑い声がする。
振り向くが誰も居らず、ハロルドは妖精たちと共に首を傾げた。
遠い場所で白色の髪と銀の瞳の女神が、大きな鏡の前に立っていた。
以前から興味はあった。
彼女が統べる場所に咲く花のような金色を持つ男の子。
「フォルテがやけに目をかけているからどうしようかと思っていたけど、他の神々だって加護を与えているのだから少しならちょっかいをかけても大丈夫か」
彼女は良いことを思いついた、とでもいうような顔で鏡に手のひらを翳す。
すると、ハロルドの姿は消えて苛立たしげに部屋を歩き回る中年の男の姿が現れた。
「僕が彼を厄介ごとから助けてあげれば、彼も僕のお願いを聞いてくれるはずだよね!」
神からの願いなど、人にとってただの厄介ごとでしかない。そのことを彼女に教える者は誰もいなかった。




